-
業種・地域から探す
続きの記事
ロボットテクノロジージャパン2026(2026年6月)
自動化システムの現在地実感できる企画多彩
今回のロボットテクノロジージャパン(RTJ)は、主催のニュースダイジェスト社の八角秀社長が就任してから初開催となる。同社の産業用ロボット専門ウェブマガジン「ロボットダイジェスト」の編集長も務める八角社長に同展で注目すべき技術に加え、AI(人工知能)時代の到来した産業用ロボットと自動化技術について聞いた。また、主催者企画やセミナーなど、同展の見どころを紹介する。
【主催者インタビュー】地域の財産として定着/AIで進化加速、未来志向でトレンド押さえる
-
ニュースダイジェスト社 社長 八角秀氏
-就任後初めてのRTJです。
「RTJが地域の財産として定着してきた実感がある。中部地域の特性上、製造業向けの自動化提案が現在、位置するレベルが注目される。一方、省人化対応はあらゆる産業の抱える社会課題。会場では課題に対する最新の回答が見られるだろう」
-来場者が注目すべき点は。
「ロボットメーカー各社は“使いやすい”パッケージ型の提案に力を入れている。自社の課題を整理してから来場してほしい。システムインテグレーター(SIer)の出展も多く、その場で話せるのが利点だ。2年前まで実現できなかったことも、可能になってきている。現場の方だけでなく、設計開発や経営者にとっても発想を広げるきっかけになる」
-今回はヒューマノイドロボットも登場します。
「工場は人工的な環境のため、ロボットが働きやすい。実装が工場から始まる可能性は高い。課題も多く、すぐに普及はしない。しかし中国など規模の大きい国が推し進めれば技術進化は加速する。注視が必要な技術だ」
-AIとの連携も期待されます。
「この半年でAIの活用は飛躍的に進んだ。生成AIだけでなく、深層学習(ディープラーニング)などの実装レベルも上がり、大規模・高精度なシミュレーション技術が進化してきた。IT業界もロボットや機械設備に興味を持ち始めている。製造業では、将来的に工作機械とロボットを統合したシステムが登場し、フィジカルAIの重要な担い手になるだろう。一方、現段階で活用が進むのは物流分野。最新のAIトレンドとして注目してほしい」
-AIの発展は業界にどんな変化をもたらしますか。
「シミュレーション技術の向上で、現場合わせのような人手が必要な工程が削減できる。さらに、ユーザー自身がロボットをほかの設備とつなげやすくなり、SIerの仕事はより複雑で高度化すると見ている。AIによりロボット関連技術の進化は加速している。再来年のRTJがどうなるのか、私も予測できない。未来の進化に対応するためにも、会場で今のトレンドを押さえてほしい」
主催者企画で性能体験 ヒューマノイドも登場
-
実演ではヒューマノイドの進化を見られる
RTJでは毎回、来場者が実際に産業用ロボットや最新技術に触れることで、理解を深め、精度や使いやすさなどを感じてもらうための取り組みを実施している。展示ホールFに主催者企画展示「産業用ロボット体験ゾーン」を設け、産業用ロボットを用いたゲームコーナーや、実際に現場で使用されているロボットの操作教育用の装置などを体験できるブースを設置した。さらに今回から出品が可能になったヒューマノイドロボットの最新技術も披露される。
特に注目されるのが、トヨタ自動車が開発したAI駆動のバスケットボール向けヒューマノイド「CUE(キュー)7」によるフリースローの実演ステージだ。人間のようにロボット自らがゴールポストの位置を把握し、シュートの力加減を調節する。従来はエンジニアが動作を作り込む必要があったが、複雑な動きをロボットが試行錯誤し、強化学習で実行する。
4月にプロバスケットボールチーム「アルバルク東京」のホームゲームで初公開し、同展が2回目のお披露目となる。機体は2本足の先端が車輪になった倒立2輪型。全長219センチメートルでアスリート風にデザインした。軸数が減り従来機よりも38%軽くなり、高速走行が実現した。
バスケは動きながらボールを扱うためシミュレーションと実機の解離が大きい。この解離はヒューマノイドがさまざまな物を扱う際の課題になっている。シミュレーションでの学習と実機での学習を統合する技術として、バスケを題材に開発が進めれている。
さらにカワダロボティクス(東京都台東区、白間直人社長)は、人と協働できる汎用性の高いヒト型ロボ「ネクステージ」を持ち込む。製品を把持して、正確に箱へ詰め込む作業を実演する。ヒト型協働ロボットが実用的な自動化工程を担う姿を見せることで、未来の製造現場の在り方を来場者に考えさせる狙いだ。
同ロボは人の目の役割としてカメラを四つ搭載し、組み立てや梱包などさまざまな作業に対応できるのが特徴。現在は双腕型の上半身タイプだが、将来は2足歩行タイプを視野に入れる。
SIerが得意技生かす
-
前回展ではロボによる書道の実演もされた
中部地域SIer連携会、日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)が協力するエリアでは、SIerらがそれぞれ得意技術を生かした六つの体験コーナーを運営する。
三明機工(静岡市清水区、久保田和雄社長)のブースでは自社開発した実習支援システム「デジタルトレーナー」の体験が可能。シミュレーション上でロボットのティーチングができるシステムで、工場自動化(FA)シミュレーターを使って実機と同じ状況をシミュレーション上に再現する。ロボに動きを教え込むための機材「ティーチングペンダント」で操作するため、ロボを購入しなくても実践に近い感覚で操作実習ができる。技術者の育成にも役立つシステムだ。
バイナス(愛知県稲沢市、下間篤社長)は、教育用ロボ実習装置「ロボトレーナー」の操作体験を実施する。ダイレクトティーチングによる直感的な操作を学べるため、これからロボの導入を検討する人や、自動化に取り組み始めたばかりのユーザーにも最適だ。
豊電子工業(愛知県刈谷市、盛田高史社長)は、産業用ロボットとジグソーパズルの組み立て速度を競う体験コーナーを企画する。ロボがパズルピースの形状を認識し、自律的に最適な手順を判断して組み立てる。高い動作精度も注目の技術だ。
-
毎回地元の小学生が体験ゾーンを訪れている
スターテクノ(愛知県大口町、塩谷陽一社長)は来場者がロボを操作してカメラの視点を動かす宝探しゲームを実施する。箱の中には多数の文字が配置されており、一部に数字が割り当てられている。数字が割り当てられた文字をロボを操作して探すと、一つの単語が浮かび上がる仕組みだ。実際に操作性が体感できる。
近藤製作所(愛知県蒲郡市、近藤茂充社長)は、参加者と産業用ロボがスプーンを投げて得点を競う「さじ投げ対決」のブースを設ける。大きさや距離の異なる複数のゴールをめがけてスプーンを投げ入れる。ロボットの正確さに人間が「さじを投げたくなる」のを狙ってゲームを企画したという。
ロボや自動化設備の導入を考える来場者にとっても性能や機能を体感できる機会となりそうだ。全て参加は無料で、事前申し込みも不要。
最終日の13日には、開催地の常滑市の小学生親子を対象とした特別見学ツアーも開かれ、次世代を担う子どもたちが最新技術に触れる機会としても活用される。
トップ企業から講師陣 基調講演やセミナーなど
-
トップ企業の最新の取り組みが披露され、満員となるセミナーも多い
このほか、主催者による多彩なセミナーにも注目が集まる。展示ホールDのメインステージにて、毎日テーマに沿った催しが開かれる。
開催初日の11日は「ロボット化・自動化が当たり前の時代に」をテーマに三つの基調講演を実施する。ロボットが活躍できる範囲が広がり、メーカーやSIerだけでなくユーザーが自らロボット化に取り組む事例も増え始めている。こうした状況を背景に、RTJの基調講演ではロボットメーカー、物流機器メーカー、ロボットユーザーから講師が登壇する。
「人手不足の課題解決に向けた自動化への取り組みとオープンプラットフォームによるフィジカルAIの加速」のテーマでファナックの常務執行役員でロボット研究開発統括本部長兼ロボット機構研究開発本部長兼ロボットアプリケーション技術本部長の安部健一郎氏がロボットメーカーとしての視点から講演する。
近年活用の幅が広がる物流分野からは、ダイフクのビジネスイノベーション本部副本部長浮須賢一氏が「完全自動化ソリューションと課題」のタイトルで登壇し、最新の取り組みについて実例を交えて解説する。
ユーザーの視点からは、中部地域の主要産業でもある航空機分野をリードする航空機メーカーから講師を招いた。ボーイングジャパン、ボーイング・テクノロジー・イノベーション・ジャパンのロボティクス&オートメーテッド・プロダクション・システム・エンジニア松尾大介氏が「技術革新と生産現場での成熟度向上―安全性と成立性の両立」をテーマに製造現場での自動化について紹介する。聴講は全て無料で、定員は各300人。事前に公式ホームページからの申し込みが必要となる。
実例紹介、取り組みのきっかけに
-
自動化を推進する業界団体のステージイベントも見どころ
12日は自動化をこれから始めたいと考えるユーザーに役立つ二つの併催イベントを開催する。愛知県が主催する「ロボット活用スタートガイド~事例で学ぶ導入のコツ~」ではSIerやロボットユーザーなどがそれぞれ登壇し、事例紹介や最新の取り組みについて語る。
はじめに登壇するのは、ロボ導入のコンサルティングを務めるヒューマテックジャパン(愛知県刈谷市)の永井伸幸社長。「人手不足をチャンスに変えるロボット導入で進める“強い現場”のつくり方」のタイトルで講演する。ロボットを導入した企業の実例紹介としては、電子機器を製造するニッシン(兵庫県宝塚市)の竹内新社長、鉄道車両部品製造のKPファクトリー(兵庫県三木市)の吉崎真一社長がそれぞれ登壇し、自社での実例を語る。SIerの視点からは高丸工業(兵庫県西宮市)の高丸正社長が「中小企業へのロボット導入の秘訣~ロボットとは、多品種少量生産のための省力化装置である~」と題した講演を実施する。同社はKPファクトリーの自動化も手がけており、ユーザーとSIer両者目線の自動化の取り組みについて知ることができそうだ。
午後からは日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)が全国の会員企業の実例紹介を行う。登壇するのはインキュビオン(東京都新宿区)、HCI(大阪府泉大津市)、興和オプトロニクス(名古屋市中区)、コスメック(神戸市西区)、三明機工(静岡市清水区)、スターテクノ(愛知県大口町)、大喜産業(大阪市西区)、豊電子工業(愛知県刈谷市)、YOODS(山口市)、高丸工業(兵庫県西宮市)の10社で、各社が15分間取り組みについて語る。SIerらはそれぞれ得意とする自動化分野を持つため、自社の工程や製品に合った企業を選ぶことが重要となる。
国内ヒト型ロボの最先端集う
-
人と協働する人型ロボ「ネクステージ」
最終日の13日は特別セミナーとして「国産ヒューマノイドロボットの可能性」をテーマに、主催者企画ゾーンでもヒューマノイドを出品する2社が講演を行う。
トヨタ自動車の未来創生センターR-フロンティア部ヒューマノイドロボット研究領域リサーチリーダーの野見知弘氏は「トヨタ自動車未来創生センターが取り組むヒューマノイドロボット開発について」のタイトルで講演し、自動車メーカーがヒューマノイド開発に取り組む意義や目的を語る。カワダロボティクス(東京都台東区)からは川田忠裕会長が登壇する。「人と一緒に働くヒト型ロボットの開発と展望~なぜカワダはヒト型ロボットをつくり続けるのか?~」を主題に、人間と働く人型ロボットの開発について解説する。
米国や中国で開発が進むヒューマノイドだが、国内での取り組みも進んでいる。次世代の技術について考える絶好の機会となりそうだ。
中小企業の成果披露
会場では、主催のニュースダイジェスト社の産業用ロボット専門のウェブマガジン「ロボットダイジェスト」の公開取材をRTJとして初めて実施する。12日に「先進ユーザー3社と語る、“失敗しない”ロボット導入のコツ」と題したステージイベントを実施する。ロボット導入により高い成果を上げる中小企業が登壇する。研削加工メーカーの山田製作所(愛知県あま市)からは山田英登社長、アルミ製缶、溶接のカトウ(川崎市中原区)からは加藤欣吾社長、金属プレスや金型を手がけるスザキ工業所(岐阜県各務原市)からは鷲﨑圭一朗取締役経営戦略部長がそれぞれ登壇する。導入の成果やノウハウなど実際の現場に即した取り組みを聞くことができる。
さらに展示ホールEでは出展各社が自慢の製品や技術を紹介する「出展者ワークショップ」も開催される。会期中は毎日6社程度が登壇し、自社の取り組みや自動化の事例、最新のシステムについて解説する。全て聴講は無料で、一部のワークショップは公式サイトから聴講予約が可能だ。
各社の出展製品や技術について、開発者や担当者などから直接解説を受けられる機会となる。
