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非破壊検査・計測・診断技術
インフラ管理も“天気予報”のように —非破壊検査とデジタルツインの可能性—
【執筆】 橋梁調査会 専務理事 木村 嘉富
「最近の天気予報はよく当たる」と感じる人は多いだろう。では、インフラの劣化や変化も予測できたらどうだろうか。現在、非破壊検査やデジタル技術を活用し、橋梁などの状態を予測する新しい仕組みが動き出している。
天気予報の進化は目覚ましい。特に台風の進路や週間予報は高精度で、地域ごとの詳細な情報も得られる。これを支えているのは、計算機の高性能化と観測技術の進歩だ。さらに、複数の要因を考慮したアンサンブル予報により、我々は正確な情報を基に、生活や産業活動を安全・効率的に行えるようになった。
では、社会資本の管理はどうだろうか。今年1月の埼玉県八潮市での道路陥没は、インフラの老朽化への関心を改めて高めた。道路橋では近接目視に加え、非破壊検査により鋼材の微少な亀裂やコンクリート内部の異常などを把握できるようになっている。
2012年の笹子トンネル事故を契機に始まった定期点検は、現在3巡目に入り、今後の変化を推定して性能を評価する段階へと進化している。重量車両の通行や災害を想定し、必要な措置を判断することが求められている。補修・補強も過去の知見から最適な工法を選んでいるが、その効果が明らかになるのは数年後だ。もし劣化の進行を予測できれば、より合理的な判断が可能になる。
そこで、筆者も参加している内閣府の第3期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題の一つ「スマートインフラマネジメントシステムの構築」では、「先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」として、デジタルツインの活用が進められている。橋梁の2次元(2D)図面から効率的に3次元(3D)モデルを作成し、非破壊検査で得た情報を反映して現況を再現する。これにより、将来の劣化や複数の工法の効果を解析的に予測することが可能だ。
現実空間では結果が出るまで数年を要するが、デジタル空間では瞬時に把握でき、最適な方法の選定が可能となる。この一連の手法は「ハイサイクルシミュレーション」と呼ばれている。