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非破壊検査・計測・診断技術
半自動超音波探傷による効率的な内在亀裂検出技術
【執筆】 首都高速道路技術センター 構造技術部 技術主幹 平山 繁幸
鋼床版橋梁のデッキプレートとUリブの溶接部に発生する疲労亀裂が問題となっている。ここでは、デッキプレートに内在する亀裂を効率的に検出する半自動超音波探傷装置(鋼床版SAUT)について紹介する。
鋼床版は車両荷重を直接受けるデッキプレートと、その剛性を高めるための縦リブおよび横リブから構成される。縦リブには、Uリブと呼ばれる閉断面リブと、バルブリブと呼ばれる開断面リブの2種類が存在する。
薄い鋼板を溶接により組み立てる鋼床版は、車両の走行によって溶接部に高い応力が発生する。そのため、特に大型車の交通量の多い路線では、疲労亀裂の発生が深刻な問題となっている。中でもUリブ形式の鋼床版では、デッキプレートとUリブの溶接部を起点とし、デッキプレート内部へと進展する亀裂が懸念される。
この種の亀裂は、Uリブの内側から発生・進展するため、定期点検における近接目視での発見は不可能だ。
このような表面に現れない潜在的な亀裂を効率的に検出するために開発されたのが、鋼床版SAUTだ。この装置は、超音波探傷器、探触子、エンコーダーで構成されており、横リブ間を連続的に探傷するために、探触子は作業員が手動でスライド操作する。また、エンコーダーからの位置情報と探触子からの反射エコー情報は自動的に記録される。
探触子には、屈折角70度の収束型斜角探触子が用いられ、これにより深さ6ミリメートル以上の内在亀裂を検出することが可能だ。従来の手動探傷では、デッキプレート内部の亀裂を検出するために探触子の前後操作が不可欠なため、作業能率が悪い(1日当たり30—40メートル)。加えて、上向きの作業となるため作業員の負担も大きいという課題がある。
一方、鋼床版SAUTは探触子を水平方向に移動させるだけであるため、作業員の負担を軽減し、作業効率を大幅に向上させることが可能だ(1日当たり100—130メートル)。
鋼床版SAUTは2007年度に実運用が開始され、24年末時点で500径間を超える鋼床版橋梁において調査を実施し、デッキプレートの貫通前に多数の内在亀裂を検出している。