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埼玉県川口市
川口市のモノづくり企業 あくなき挑戦へ
新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されて1年あまりが経過した。経済活動が正常化に向かう一方、円安やエネルギー・原材料の高騰、さらには人手不足など中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい。そうした環境下で企業が成長を維持するには、新規顧客獲得に向けた設備投資、人工知能(AI)・ロボットなど先端技術の活用、デジタル変革(DX)への対応などが必要だ。〝鋳物のまち〟として知られる川口市で高い技術力を生かし、あくなき挑戦を続ける3社の変革に向けた取り組みを取材した。
フジムラ製作所/自動見積もり算出サービス提供
フジムラ製作所(埼玉県川口市、藤村智広社長)は精密板金加工を手がける。情報通信技術(ICT)を活用した『デジタル板金工場』を掲げ、業務内容を可視化して多品種少量生産の効率化を図っている。
さらなるデジタル活用によって顧客のニーズに応えようと、6月に新たなサービスを開始した。専用ウェブサイト上に2次元(2D)CADで設計した図面をアップロードすると、5分程度で見積もりを算出する中小企業向けサービス「2DCADデータ自動見積もりサービス」だ。
顧客は見積もりを確認した後に注文すれば、最短で3営業日内に発送される。見積もりまでのサービスは無料。小ロットに対応し1個から利用できるため、中小企業が利用しやすい。2025年に同サービスで月100万円の売上高を目指す。金属を使った加工品が対象。溶接や、複数パーツを組み合わせた設計図には対応しない。
新サービスは社員が行っていた見積もりや納期の工程管理、データ作成などの作業を自動化する。浮いた人件費を製品価格引き下げの原資に充て、平均すると5-6割割安に顧客へ製品を提供できる体制を整えた。
藤村社長は「高い技術力を有するが生産設備がない製造業のお客さまに、同サービスを通じてパーツを加工してもらうなど自社工場として活用してほしい」と展望する。
フジテック/NCベンディングロール 大型鋼板向け導入
フジテック(埼玉県川口市、藤田昭一社長)は、鋼板や形鋼のR曲げ加工を手がける。曲げ寸法交差プラスマイナス1ミリメートルの高い技術力を強みとしている。売上高の6割を鋼材やステンレス販売店、残り4割を建築・土木向けなどが占める。足元では大手電力会社向けの電信柱の補強材の需要が高まっている。
さらなる成長に向けて、同社は6月に厚板・大型鋼板向けの数値制御(NC)ベンディングロールを加須工場(同加須市)に導入した。鋼板に曲げ加工を施し、建築土木など向けに納入する。栗本鉄工所製の中古のNCベンディングロールで、投資額が約1000万。板厚16ミリー25ミリメートル、幅最大3000ミリメートルの鋼板に対応できるようにした。ベンディングロールの台数は川口工場と加須工場で合計14台となり、このうち加須工場で6台が稼働する。新台の投入により、同社全体で鋼材の加工量を従来比1・5倍の月250トンに高める計画だ。
加須工場ではこれまで幅2500뗝뗠までの曲げ加工に対応しており、それ以上の大型鋼板の曲げ加工は川口工場で行っていた。新型機導入で大型鋼板への対応力を高め、納期の短縮と受注の拡大を見込む。
顧客の需要を取り逃がさず対応することで「曲げ加工の総合メーカーになりたい」と藤田社長は力を込める。
相沢鉄工所/シャーリング製品自動検査システム 2年後めどに開発
相沢鉄工所(埼玉県川口市、相沢邦充社長)が開発を進める「環境型・次世代シャーリングシステムユニットの研究開発」が、経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)に採択された。コイルセンターなど川下企業の競争力強化とカーボンニュートラルを支援する。
開発するユニットは「画像センシング・人工知能(AI)技術などを活用した高精度自動検査」「ロボット・制御技術を活用した高精度自動集積」「二酸化炭素(CO2)排出量リアルタイム可視化」「AI最適制御」などを搭載する。既存マシンへの搭載(レトロフィット)も可能になる。
統括研究代表者は相沢社長で副総括研究責任者は岩手大学の明石卓也准教授(現岡山大学教授)で事業管理期間はいわて産業振興センター。従来はシャーリング加工後にコンベヤーで移動している材料をマシンオペレーターが外観検査していた。このため個人差や疲労度などにより検査のばらつきが発生して全数検査も困難だった。開発するシステムは1分間に60メートルの速度で不良検出率95%以上を目指す。相沢社長は「業界初のシャーリング製品自動検査システムで、2026年度には製品化を目指したい」と意気込む。