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埼玉県川口市
「さらなる働きやすいまちへ」-施策拡充
地場産業育成 市内経済を活性化
川口市が新たな発展を遂げている。内閣府のSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に選定され、持続可能な都市づくりの取り組みも評価された。また「さらなる働きやすいまちへ」としてさまざまな補助制度や女性の創業に向けた取り組みも進めている。一方、川口商工会議所は長年の懸案だった鳩ケ谷商工会との統合を実現。さらなる市内経済の活性化が期待されている。奥ノ木信夫市長は「これからも地場産業の育成に力を入れていく」と強調。川口商工会議所の細野博隆会頭は「身近な相談役としての役割を果たしていきたい」と話す。
若者向けに家賃補助・奨学金返還支援/川口市長 奥ノ木 信夫 氏
ー内閣府のSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に選定されました。
「川口市は本年度の『SDGs未来都市』に選定され、加えて、特に優れた先導的な取り組みを行う『自治体SDGsモデル事業』にも県内自治体で初めて選定された。このことは、本市が取り組んできた子育て支援や地域経済の活性化、多文化共生など、さまざまな街づくり施策を積み重ねた結果であると認識している。また、緑化事業など環境問題に対する市民の関心も高く、イイナパーク川口(赤山歴史自然公園)の植樹寄付を募ったところ、計画を大幅に上回る寄付が集まるなど、市民の意識の高さも実感している」
ー2024年度当初予算で「さらなる働きやすいまちへ」として「家賃補助や奨学金返還支援補助金」などを盛り込みました。
「家賃補助や奨学金返還支援補助金は、市内在住かつ在勤の若者を対象に、川口での働きやすさを少しでも感じてもらおうと23年度に制度を創設した。24年度からは上限額を両制度とも月額5000円から月額1万円に増額した。この制度を通じて川口市内の中小企業に就労する若者が増えることを期待している」
ー女性の創業やネットワークづくり支援については。
「女性の活躍・創業支援プロジェクト『AFEKT(アフェクト)』を21年度から開始している。市内で起業をしたい女性と市内の女性起業家をつなげるもので、創業支援のための講座やイベント、個別相談の開催やSNSなどを通じてネットワークづくりをさらに進めていく」
ー市産品フェアは今年10回目になります。
「どうすれば川口市内の中小企業が潤うかを常に考えている。市産品をできるだけ公共工事や民間の建設などに取り入れてもらうにはどうしたらよいか。やはり設計業者の人にこのフェアを見てもらい、市内でどのような製品が作られているかを知ってもらうことが大切だ。これからもリーダーシップを発揮して地場産業の育成に力を入れていきたい」
ー産業拠点「SKIPシティ」の整備はどう進めますか。
「現在、B街区ではNHKがスタジオを建設中であり、C街区ではヤオコーが10月のオープンを目指して工事を進めている。市がC街区に整備するビジネスサポートセンターと産業資料館については23年度に実施設計が終わっている」
ー上野東京ラインの川口駅停車については。
「1月にJR東日本から示された調査結果報告を受けて、市とJR東日本が基本協定締結に向けた協議を進めており、できれば12月、遅くとも25年3月までには協定を結びたい。また、将来はバスネットワークの充実を図るとともに、バスターミナルなども整備して、川口駅周辺だけでなく川口市民全体が上野東京ラインの川口駅停車のメリットを得られるような駅周辺の街づくりを進めていきたい」
中小企業の身近な相談役 役割果たす/川口商工会議所会頭 細野 博隆 氏
ー川口市内の現在の景況について、どう見ていますか。
「市内景況調査では全産業合計の業況は前期比9・2ポイント減のマイナス10・3。先行きの見通しも同7・5ポイント減のマイナス17・8。全業種で景況感は良くない。理由は円安や人件費の高騰や人手不足で、先行きの不透明感による買い控えの影響も大きい。4月には市内の銀行や信用金庫などの金融機関と意見交換会を開いた。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済は順調な企業と課題を抱える企業に2極化している」
ー価格転嫁の状況はどうですか。
「企業が『発注者』の立場で自社の取引方針を宣言する『パートナーシップ構築宣言』を登録したのは245件。埼玉県内の構築宣言の約1割は川口市内企業だ。一方で実際の価格転嫁がどこまで進んでいるかは、業種・業態によってもさまざま。価格転嫁をはじめ、会議所には日々多くの相談が寄せられている。身近な相談先としての商工会議所の役割をこれからも果たしていきたい」
ー鳩ケ谷商工会と4月に統合しました。
「旧鳩ケ谷商工会の850会員が川口商工会議所に加入して現在は9172会員となった。会議所職員が850社を訪問して会員証を手渡した。会員数は現在、全国515会議所の中で14番目。中核市としては一番多い。4月には『南鳩ケ谷スプリングフェス』を開催したが、今後は『御成道トワイライトキャンドルズ』や『商工まつり』など旧商工会のイベントを会議所で引き継いで盛り上げていきたい」
ー統合記念事業も実施しますね。
「創業支援パッケージとして、27年3月までに会議所の創業支援を受けて起業し、会議所に加入した場合は、創業支援奨励金として3万円を交付する。また創業5年未満の企業が会議所に加入した場合は1万5000円を交付する。統合のシンボルとなるロゴも制作した。川口の『川』と鳩ケ谷の『鳩』の融合で組織が一つになるイメージだ」
ー三井不動産が川口駅前の旧そごうの所有権を取得。また川口市は上野東京ラインの川口駅停車を要望するなど駅周辺の再開発が計画されています。
「そごうは川口のメインとなる場所にあり、閉店した時は惜しむ声が多かった。ぜひ、川口の顔となるようにリニューアルして市民が気軽に入れる店舗となることを期待したい。上野東京ラインのホーム増設についても駅に接続するバス路線を増やすなど、近隣住民だけでなく川口市民全体が使いやすい駅になればいいと思う。60万人都市の中心となる駅でホームが一つしかないと、運行にトラブルがあった時に駅の外の歩行者用デッキまで人があふれてしまう。ホーム増設で川口駅に降りる機会が増えれば、途中で乗り換えて川口に来ていた人も来やすくなる。市内で働く人にも便利になる」