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神奈川県央地域特集
小型 高精度ニーズ・成長市場に照準
神奈川県央エリアでは、自社の強みを生かし、次代へ向けて取り組む動きが活発化している。中小企業として自らの持ち味を生かした新規分野進出や新サービスなど、たゆまぬ信念と技術力で、神奈川県央エリアから国内経済を支え、成長を続ける企業の活動を紹介する。
クボテック /需要増見据え工場拡張 生産体制強化 伊勢原第3工場稼働 効率的生産方式を確立
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製造工程を管理することで生産品を動かさない「交互生産」を可能にした -
第1工場で組み立てが行われている間に第3工場で検査工程に入る
クボテック(神奈川県秦野市、窪嶋竜一社長)は、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)関連市場の拡大などによる半導体需要増加の動きを捉え、生産体制を強化している。半導体製造装置用の配電盤や分電盤の受注が増加する中、同社の主力である伊勢原工場に隣接した敷地面積3385平方メートルの土地を取得。今年6月から第3工場として稼働させたほか、海外の安全規格の認証や、効率的な生産方式の確立、人材確保に向けた新会社設立など、成長する市場に対応する体制を整え、需要を取り込んでいく。
クボテックの事業分野は、「半導体製造装置」「社会インフラ用装置」「一般産業用装置」。「手づくり」による一貫生産で、受注から設計・調達・板金加工・組み立て・検査・アフターフォローまですべての工程を自社で手がける。電源装置や制御装置などの製品は、「メード・イン・ジャパン」の安全性と信頼性で、顧客からの評価が高い。
2018年に立ち上げた主力の伊勢原工場は受注が好調な半導体製造装置用製品に加え、安定受注が見込める社会インフラ用装置を製造する。20年には、米国の制御盤に関する安全規格「UL508A」を取得。米国家認定試験機関(NRTL)が評価・認定する北米工場に設置する制御盤に必要な認定規格で、クボテックが認証を取得したことで、納入先メーカーによる北米輸出時の検査の手間やコストが省けることになり、強みにつなげた。
需要増大に伴い拡張を重ね、21年に第2工場、今年6月に第3工場が稼働している。第3工場の稼働に合わせて「交互生産方式」による製品製造を段階的に開始。従来は1週間ごとに生産品を製造エリアから検査エリアに移動させて生産していたが、配電盤など生産品は大型で重量もあり、移動には手間も時間もかかる。そこで、生産工程をデジタルツールも活用しながら綿密に計算し、隣接する第1工場と第3工場で生産品ではなく、スタッフを移動させることにした。生産品の位置は動かさず、事前準備、組み立て、検査のスタッフが入れ替わり作業を行い、そこから出荷する。両工場をスタッフが行き来し、「交互に生産」することで、生産品移動のムダや、仕掛品がなくなり生産スペースが有効活用できるようになった。第3工場新設と「交互生産方式」導入で生産能力は約1.5倍に向上し、今後も自動化やデジタル変革(DX)化と組み合わせて効率化を進める。同時に温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」に向けたロードマップを策定し、環境負荷軽減にも対応していく方針だ。
同社では現在、東北地方での生産拠点新設も検討中で、全社合わせた土地面積を現状の2倍以上にする計画。社員は約200人から250人に増員させ、売上ベースで27年に1.5倍、30年には2倍を目指す。人材確保や育成については、7月に人材派遣業を手がける完全子会社「クボテックキャリア」(同厚木市)を設立。自社における人員を確保するとともに、法人向けサービスも提供している。登録した人材に対しては、同社が製造業として培ったノウハウを活用した学習機会を提供し、産業カウンセラーによる個別相談も行っている。これらの取り組みで、クボテックは今後の市場成長を見据えた投資を着実に進め、顧客からの期待と信頼に応えていく。
マイクロテック・ラボラトリー /世界最小クラスのエンコーダー技術生かす DDモーター 胴径70mmシリーズ月内販売
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ターンテーブル型、世界最小クラスのサイズDDモーター「MRS―70シリーズ」 -
小型化・軽量化を実現し、内部にケーブルや光を通すことができる中空モーター製品群
マイクロテック・ラボラトリー(MTL、相模原市南区、野村優介社長)は回転数や回転位置を計測するロータリーエンコーダーやダイレクトドライブ(DD)モーターの開発から製造、販売、サポートまで一貫して日本国内で対応し、1台からカスタム受注する。同社のロータリーエンコーダーは世界最小クラスを実現し、その技術を生かして開発した小型で高トルクのDDモーターは半導体製造装置やロボット、医療など幅広い分野で活用が進んでいる。
1981年設立のマイクロテック・ラボラトリーは、90年代初頭に世界最小クラスのローターリーエンコーダーを開発した。エンコーダーは小型化、高分解能化することで、組み込んで使う装置を小型化、高速化できる。以後、さらにコンパクト化を進め、直径5.5ミリメートルの世界最小クラスの光学式エンコーダーを開発するなど、その特長から「マイクロエンコーダー」と称される製品群を開発。ロボットや医療用機器など技術革新が進む分野でも活用され、現在、3000種類以上の製品についてカスタム対応している。
2015年に「マイクロエンコーダー」開発における小型化のノウハウで開発したDDモーの販売を開始。手作業で製品を高密度に組み込み、高精度な製品を生み出す。同社のDDモーターは、高性能磁石と高密度巻き線技術により小型化・軽量化を可能にし、高いトルク密度を実現しているのが特長だ。ギアレス構造で高い静音性や高精度な位置決めができ、威圧感がなく、なめらかに動作する。外力の検知にセンサーが不要で、安全・簡単にロボットなどに搭載が可能。中空軸構造で、内部にケーブルや光を通すことができ、装置の省スペース化や高精度化につながる。
エンコーダーとDDモーターを一体化させ省スペースと最適化が容易にできることも同社の強み。ロボットハンドなどの位置情報から力をセンシングする力触覚技術を支える製品としても期待され、高い追従性とバックドライブ性で「マスター・スレーブ式ロボット」など医療機器での利用も研究されている。
今月販売開始予定のターンテーブル型、世界最小クラスのサイズDDモーター「MRS―70シリーズ」は、胴径70ミリメートルで、胴長は44ミリメートルと56ミリメートルの2タイプで、中空径は25ミリメートル。クロスローラーベアリング(軸受)の精度を高め、軸振れを5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下に抑えることにより、回転非同期振動(NRRO)を低減したモデル。プラグ取り付け口を備え、エアを送って不純物除去とエアパージ(空気追い出し)ができる。トルク密度は一般的な同サイズのモーターと比べて約2倍の3ニュートンメートル。半導体製造工程でのウエハー検査装置や小型光通信衛星端末など、小型・軽量化と高精度が求められる分野で活用できるモデルで、慣性モーメント(イナーシャ)が高い状況下でも本体設置のみで高精度な回転駆動を実現している。
同社では、今後も小型、高精度の回転伝達を追求するメーカーとして、市場にない製品を世に送り出し、ユーザーの要望に応える。半導体製造装置やロボット、医療など幅広い分野に貢献する構えだ。