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神奈川県央地域特集
挑戦を続ける産業拠点 各市の取り組み
神奈川県の県央地区は、圏央道やリニア中央新幹線をはじめとする社会インフラ整備が進み、産業拠点としての存在感が増している。行政が少子化による労働力不足、脱炭素社会実現に向けた対応など、企業が直面する課題に対して、豊富な支援を展開している。金融機関との連携や、新たなビジネスモデルへの挑戦、デジタル化・省人化の後押しなど、力強く産業を支援する行政の動きを紹介する。
仕事と家庭両立 推進企業表彰 相模原市、意識啓発続ける
相模原市では、重点テーマとして掲げる「雇用促進対策」と「少子化対策」に力を注ぐ。2023年度から「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣が認定する「くるみん認定」の取得を目指す市内企業に向けて、職場環境の整備や両立支援の取り組み等に要する費用を補助するほか、一般事業主行動計画の策定を希望する企業へは社会保険労務士をアドバイザーとして派遣している。07年度に開始した「仕事と家庭両立支援推進企業表彰」では、働きながら安心して育児や介護ができる地域社会を目指し、両立支援を積極的に行う企業の取り組みについて表彰している。23年度末現在、累計48社を表彰し、広く企業・市民に周知。意識啓発を図っている。
雇用奨励金引き上げ/若者の就労支援 厚木市、雇用を力強く支援
障害者雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた2024年度、厚木市は市内在住の障害者を雇用する中小企業を対象とした奨励金額を一人当たり6万円から10万円に引き上げた(市外在住は5万円)。23年度には市内在住の高年齢者雇用に対する奨励金額も一人当たり3万円から5万円に引き上げ(市外在住は1万円)。中小企業による市民の雇用を後押ししている。
若者の就労支援では、市内で働きながら奨学金を返済する市民に対し、年12万円までを7年間にわたって助成する制度を21年度に創設。毎年、約50人の申請増が続いており、24年度予算は前年度当初から約1,200万円を上乗せした。このほか、中小企業の就職フェアへの出展補助金や賃上げ応援補助金を新設するなど、市内企業による雇用を力強く支援している。
生産性向上・脱炭素化コンサルなど 大和市、支援制度を充実
大和市は、都心から40キロメートル圏内にあり、市内には私鉄3路線のほか、国道16号、246号、467号が走り、東名高速道路横浜町田インターチェンジ(IC)や綾瀬スマートICが近接するなど、交通の利便性が高い。産業施策として、2018年から奨励金制度を設け、市内進出を希望する企業や、事業拡大等に取り組む企業を支援し、新規立地奨励金では7件の実績があるほか、事業拡大や設備投資への奨励金を多くの企業が活用している。また、金融機関と連携した融資制度や、融資の利子補給や信用保証料に対する補助、生産性の向上やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けた専門家派遣によるコンサルティングなど、制度面を充実させ、市内企業の取り組みを支援している。
企業投資奨励金の基準緩和 座間市、生産性向上補助金を実施
座間市は、主に製造業を対象に、新たな企業投資に対する支援措置の一つである企業投資奨励金の基準を2021年に緩和した。20億円(中小企業は5000万円)以上の投資をする企業に対し、投資額の10%で、上限1億円(同5000万円)の奨励金を交付する。従来は50億円(中小企業は5億円以上)とハードルが高かったが、緩和による投資意欲の向上を見込む。市外からの進出だけではなく、市内企業の再投資についても奨励金を支援することが座間市の支援策の強みとなっている。
さらに、生産性向上に資する機械等の設備導入に係る取得費用を補助率3分の2(上限300万円)で補助する「座間市中小企業産業振興支援事業補助金」を24年度も実施していく。
市外優良企業の誘致/市内企業 再投資促進 海老名市、産業の持続的発展 後押し
海老名市は、市内を走る鉄道の小田急線・JR相模線をはじめ相鉄線とJR線・東急線の相互直通運転が開始されたほか、道路網でも新東名高速道路ジャンクション(JCT)の開通など、アクセス性が向上し、人口も14万人に到達。
産業施策では、市外優良企業の誘致および市内企業の再投資を促す「企業立地促進条例」に基づき、各奨励金や税優遇を実施し最大で5000万円交付。制度活用5年経過した企業にも、再度、これらの制度が活用できることから、優良企業の流出を防ぎ、市内企業の再投資を支援する。
「中小企業振興支援事業」では、生産性向上等の設備導入事業など九つの補助メニューがあり、展示会等への出展には、20万円を上限に補助する。企業の経費を補助することで、市内産業の持続的な発展を後押しする。
「環境経営支援事業」を追加 綾瀬市、多角的視点で支援
綾瀬市は、新たなビジネスモデルへの挑戦やデジタル化・省人化などを目指す事業者に対して、「中小企業強靭化推進補助金」として、最大1,000万円を助成している。また、脱炭素化に積極的に取り組み、再生可能エネルギー電力に切り替えた事業者に対しては、「中小企業脱炭素化促進奨励金」として、最大100万円を助成。本年度からは「中小企業活性化事業補助金」に「環境経営支援事業」を追加し、環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証・登録を新規に取得する事業者に対して、最大10万円を助成している。
設備投資による生産性向上と、社会的価値の向上を支援し、サプライヤーの創出に向けて、多角的な視点で企業支援を展開する。