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神奈川県央地域特集
生産性向上・地球温暖化防止に貢献
神奈川県央エリアでは、自社の強みを生かし、次代へ向けて取り組む動きが活発化している。中小企業として自らの持ち味を生かした新規分野進出や新サービスなど、たゆまぬ信念と技術力で、神奈川県央エリアから国内経済を支え、成長を続ける企業の活動を紹介する。
コバヤシ精密工業 /電力使用量見える化で好評 ポータブル電流計「エニマス」進化続ける
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ポータブル電流計「エニマス」(右)と測定範囲が50アンペアから400アンペアまで対応するモデル「エニマス-400」(左)
コバヤシ精密工業(相模原市南区、小林昌純社長)は各種精密加工部品、半導体製造装置、産業用ロボットなどの部品の製造や加工、装置の受託開発を手がける。
同社が開発したポータブル電流計「エニマス」は、生産設備や空調などのエネルギー使用量・二酸化炭素(CO₂)排出量を、設備ごとにリアルタイムで見える化できるデバイス。製造業や飲食店で採用されているほか、相模原市など、全国の自治体での活用も進んでいる。簡単にエネルギー使用量などの実態が把握できるのが好評で、かわさき起業家オーディションのかわさき起業家賞を含む6賞を受賞したほか、神奈川工業技術開発大賞の未来創出賞、省エネ大賞の省エネルギーセンター会長賞、関東経済産業局によるエネルギー管理優良事業者への選定、かながわビジネスオーディションの神奈川県信用保証協会賞、神奈川県中小企業診断協会賞、日本技術士会神奈川県支部賞を受賞するなど各方面から高い評価を得ている。
「エニマス」は複数の拠点の消費電力を一括で可視化したり、測定できる範囲を拡大したモデルをそろえるなど、進化を続ける。ユーザビリティ重視の製品開発で、地球温暖化防止に貢献していく。
ノーブル電子工業 /多様な人材が快適に働ける環境づくり 物と情報の流れを合致 製造工程の無駄排除
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地域のイベントにも積極的に参加し、市民が工場見学に訪れる
ノーブル電子工業(神奈川県綾瀬市、土橋恒一社長)は建物の空調や製造設備で使う自動制御盤のメーカー。自動制御盤の設計から製造、組み立て、メンテナンスまでを一貫で扱う。一貫受注のため、設計変更やトラブル時に迅速に図面の修正履歴などのデータを取り出して検証できるなどのメリットを生かし、現場での仕様変更やメンテナンスの高い品質につなげている。2021年からは保守管理の人材派遣も開始している。
同社では、従業員約140人のうち、半数近くが女性で、海外出身者も多数活躍している。製造工程は、独自のジャストインタイム生産方式で、設計部門がどの部品をどのサブパネルに取り付けるかなどを記載した「現品票」を作成し、部品を選定したキットとサブパネルを1台の台車に搭載。まとめ工程までモノの流れを一元管理し合理化している。工場内の掲示板で各製品がどの工程にあるのか、進捗状況を一目で確認でき、物の流れと情報の流れを合致させる「情物一致」を具現化。最終的な部品余りによる不良品の発生防止や在庫の最小化など、製造工程の無駄をなくし、作業者はそれぞれの作業に集中できるようにしている。多様な人材が快適に働く環境を整えることで生産性を向上させ成長を続ける。
向洋技研 /ユーザーの品質維持と利益確保に貢献 電流制御技術で付加価値を提供
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水平ガン、垂直ガンに加え、治具電極でさらに作業性が高まるテーブルスポット溶接機「MS-V23」 -
「段取り不要で、足踏み式の使いやすさ」を追求した小型テーブルスポット溶接機 「MS-V71」
向洋技研(相模原市緑区、甲斐美利社長)は、高速溶接技術を搭載したテーブルスポット溶接機など、「人を選ばない機械」「環境に配慮し、誰もが安心して長く使える機械」「短時間で利益を生み出せる機械」で生産現場を支える。容易な操作で、材料の表面に発生する焼け焦げやひずみを極限まで抑え、後工程が軽減される同社の「焼けないスポット溶接」は、省人化の加速、原材料の高騰により、品質維持と利益確保が課題となる中、ユーザーの生産性向上や人材不足への対応に貢献している。
向洋技研は、独自の電流制御技術を応用し、画期的な製品を開発してきた。2012年に高速溶接技術搭載のテーブルスポット溶接機を発売して以来、ワークの焼き付きが少なく、後工程が軽減される「焼けないスポット溶接」を提唱している。
「MS-V23」は、水平ガン、垂直ガンに加え、治具電極でさらに作業性が高まるテーブルスポット溶接機。焼けや歪みが出ない「高速溶接」により、後処理が不要になるだけでなく、両ガンの活用で箱の深い部分の溶接も可能。接合工程の高効率化、高品質化、低コスト化に貢献するだけなく、使いやすさを追求した軽量ガンで、作業者の確保や育成が難しくなる中、経験や年齢、体格などに左右されず、「誰もが活躍できる接合工程」を実感できる。
「MS-V71」は、「段取り不要で、足踏み式の使いやすさ」を追求した小型テーブルスポット溶接機。使いやすさと高品質なスポット溶接を両立させている。同社では、引張試験機による強度管理のデータ化で、不良発生対応のスピード化、数値管理による教育的効果、メリットも提案している。
「PT-Ⅳ30」は、従来は職人の勘や経験に頼っていた強度管理を数値化できる溶接強度の引張試験機。最適な溶接条件を設定して作業を進めることができ、作業者を選ばない。専用アプリケーションをインストールしたパソコンと接続することで試験データの保存や、印刷ができ、自動記録により転記ミスも防ぐ。試験ごとにコメントを追記することもでき、過去の試験結果との比較検討も容易だ。簡易的な圧縮機構も備え、JIS規格に準じたナットの押し込み剥離試験も可能。
向洋技研では、本社内への訪問に同社社員がマンツーマンで対応するプライベート展示会を定期的に開いている。実機を使った実証加工やスポット溶接の基礎を解説する簡易セミナーなども行い、コスト削減、生産性向上、工場内のレイアウトなど、顧客の課題に対して解決策を提案する。今後は、協働ロボットを組み合わせた自動化なども提案し、スポット溶接や抵抗溶接を軸として板金加工全般にわたる悩みを解決する駆け込み寺であることを目指す。
11月5日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕する第32回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2024」では、「高速溶接の環境効果」を紹介するほか、後処理や仕上げ工程が減ることによる作業環境の改善等を提案する。
向洋技研が持つ電流制御技術はスポット溶接以外の用途でも注目を集めており、同社では新分野への応用も視野に入れている。製造業の課題に対して解決策を提示するだけではなく、新しい付加価値を提供していく。