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神奈川県央地域特集
自社の持ち味生かし次世代へ挑戦
神奈川県央エリアでは、自社の強みを生かし、次代へ向けて取り組む動きが活発化している。中小企業として自らの持ち味を生かした新規分野進出や新サービスなど、たゆまぬ信念と技術力で、神奈川県央エリアから国内経済を支え、成長を続ける企業の活動を紹介する。
富士テクノソリューションズ /解析サービスで課題解決に貢献
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溶液の化学反応をシミュレーションし、pHや塩分濃度の分布を視覚化
富士テクノソリューションズ(神奈川県厚木市)は、モノづくりをさまざまな角度からトータルでサポートするソリューションを提供している。ユーザーの設計から生産にいたるモノづくりプロセスに向けてエンジニア派遣・チーム請負・受託開発など、高度な専門技術で柔軟に対応する。
同社のCAE解析受託サービスは、熱や、化学反応など製品やシステムの複雑な挙動を再現し、岩盤や土砂の掘削、水溶液中の中和・溶解等の化学反応など、あらゆる状況のシミュレーションを提供する。
機械の設計変更による性能変化を事前に把握したり、製造プロセスの最適化を実現するサービスで、流体解析・構造解析・化学反応解析により、気体・固体・液体などが混在した状況での素材それぞれの状態変化や影響しあう様子を数値化し、見えないプロセスを見える化する。
適用分野は機械や土木、製菓など多岐にわたり、これまでは経験や勘に頼っていた部分を数値化できるようになる。技術の継承、AI活用を見据えた展開など、モノづくり企業の将来に向けたメリットを生み出している。
日本電子工業 /新技術開発で競争力を強化
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高いシェアを誇るプラズマ(イオン)窒化装置
日本電子工業(相模原市中央区、竹内博次社長)は自動車や建設機械向け金属部品の高周波焼き入れ、窒化処理などの表面処理やその装置製造を得意とする。表面処理を施す受託加工業務、表面処理装置の製造・販売の両主力事業で、2020年9月に相模田名工場(相模原市中央区)を立ち上げ、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)やセラミックスコーティング設備など多様なニーズに応える設備を導入。田名工場を含め神奈川県では相模原市内で相模田名工場を含め2工場を持つ。
電気自動車(EV)化などにより、変化していく表面処理に対するニーズに向けて、新技術開発や人材の再配置、新規分野への進出など、競争力を強化する。3D積層造形技術による高周波誘導加熱装置向けのコイル内製化など、熟練工不足に対応した取り組みも進める。
鉄以外の材料に対しても摩耗性を向上させるなどの表面改質で付加価値を付与し、プラズマ窒化処理や高周波焼き入れなどに加え、部品の軽量化に向けた金型の表面処理やコーティングに関する技術開発を進め、持続可能な事業基盤を構築する。
武藤工業 /熱処理業界の技術力向上に貢献
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本社工場へは海外からも視察が訪れる
武藤工業(神奈川県大和市、佐藤卓弥社長)は、金属熱処理を主業務とする。10月25日-27日に、北上工業クラブが北上総合体育館(岩手県北上市)で開催する「きたかみ・かねがさきテクノメッセ2024」に初出展し、一般層に向けて熱による金属の変化をわかりやすく紹介する。
同社では、大学との共同研究による熱処理の技術開発や、精度の高い顧客要求に応えるための熱処理技術の改善に積極的に取り組んでいる。社内で得た品質評価を「熱処理研究室」と題したホームページ上で技術資料として提供するなど「品質の見える化」や金属熱処理技能士の資格取得補助やスキルアップ制度の活用、労働時間の適切な管理による「働きやすい職場環境の実現」にも力を注ぐ。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みとして、10月には岩手銀行が提供する「いわぎんSDGs評価・宣言サポートサービス」の評価結果を踏まえた「SDGs宣言」を策定。地域の学生や企業へ向けた熱処理事業の講習会や工場見学を積極的に実施することで地域のモノづくり企業と熱処理業界の活性化にも積極的に取り組んでいる。
マーク電子 /訪問看護事業者の声 製品開発に生かす
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スマート型点滴管理ツール「DR-MARK(ドクターマーク)」
マーク電子(相模原市緑区、大津恭男社長)が開発した「DR-MARK(ドクターマーク)」は、クリップ式の本体で点滴筒を挟むだけで流量をモニタリングできるスマート型点滴管理ツール。マイクロ波ドップラーレーダーを応用により、点滴筒内部で落ちる点滴の水滴を1滴ずつ検知して流量を計測し、点滴の終了や異常を検知すると端末などにアラートを送信する。
モバイル通信やWi-Fiを活用するクラウド版と、病院内のサーバーやネットワークでの使用を想定したオンプレミス(自社保有)版の「DMどこでも見守りシステム」も提供しており、病院内の他のフロアといった患者から離れた場所や、在宅看護でのスマートフォンによる見守りも可能だ。
同社では、看護事業者おとなとこどもの訪問看護(神奈川県伊勢原市、遠山貴史代表)に、「ドクターマーク」をトライアル提供している。訪問看護先で実際に使用してもらい、使用感などのフィードバックを得ている。届いた声は「ドクターマーク」の改良や今後の新製品開発に活用し、現場のニーズを反映していく。
尾崎ギヤー工業 /蓄積したノウハウで価値を創造
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神奈川県から表彰を受ける尾崎社長(右)
尾崎ギヤー工業(相模原市中央区、尾崎一朗社長)は各種高精度歯車製作や大型部品加工を手がける。プレス機や工作機械、重電、エネルギー、造船、建設、医療、半導体などさまざまな分野の機械に歯車を提供する。多品種少量生産の高精度な歯車で、1個からの生産に対応する。
相模原市内の本社工場と橋本工場をオンラインでネットワーク化し、独自の品質マニュアルを基本とした生産管理システムを運用し、受注・手配・生産・進捗管理・納品までを一貫して管理できる体制を確立。品質の向上を実現し、顧客に対してきめ細かなサービスを提供している。
昨年には、経営成績や作業環境、生産技術が評価され、神奈川県から優良工場として表彰を受けた。尾崎社長は「客先で設計された歯車部品が実際に組み込まれた時にどういう現象が起きるかを想像し、 作り込みの段階で対処できることを提案する。永年蓄積した歯車製造技術のノウハウを生かし、10年後の価値を顧客と共有する。良い製品を提供できる企業風土を維持継承していく」と産業界に貢献していく構えだ。