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兵庫・神戸産業界
兵庫・神戸地域の企業や機関などで、デジタル変革(DX)への取り組みに意欲が高まっている。兵庫・神戸のDXの旗手は、2021年に共用開始した理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS、神戸市中央区)のスーパーコンピューター「富岳」と言えるだろう。23年には日本マイクロソフトが人工知能(AI)の開発拠点を神戸市中央区に設置と、大きな話題が続いている。地元企業も、DXで独自の展開を見せている。
進む!ドローン社会実装
飛行ロボット(ドローン)の活躍の場が広がっている。空撮に始まり、インフラや設備の点検、農薬散布などの幅広い業界で導入が進む。資材・物資の輸送や災害発生時の対応といった場面での活用も模索され始め、全国各地で社会実装に向けて動き出している。各業界の人手不足や人にかかる負担が大きい作業の代替として、ドローンへの注目は高まっている。そんな中、新産業創造研究機構(NIRO)は、今年の5月末に「ドローン利活用プラットフォーム」を立ち上げ、ドローン産業の発展に向けた支援を加速させている。
産業発展に向け支援加速
兵庫県は次世代産業の一つにドローンを位置づけ、利用促進の支援に力を入れてきた。2019年には兵庫県とNIROが「ドローン先行的利活用事業」を開始すると、22年度からは「ドローン社会実装推進実証事業」として、民間企業のドローンに関する取り組みをサポート。実証実験のための資金支援やフィールド提供などを中心に執り行ってきた。同事業では5年間で累計51件の実証実験を支援した。
ドローンの社会実装に向けた課題も見えてきた。同事業を通じて農業や鉄道分野など多方面にドローンの活用が進み、データやノウハウは蓄積された。一方で、実際に実証から社会実装へとつながった案件数は51件のうち、7件に止まった。
ドローンのビジネス利用の浸透には、「メーカーなどの事業者とドローンを使いたい企業・団体がマッチングできる場所が必要になる」(箙一之NIRO研究開発部門)と指摘する。ここ数年でドローン業界は急速に成長し、各メーカーの機体性能も向上したことで幅広い用途展開が見込めるようになった。ただ技術やノウハウを持つ事業者は小規模が多く、ドローン活用のニーズを取り込みきれないケースがあるという。そこで、NIROでは5月末に「ドローン利活用プラットフォーム」を立ち上げた。参加対象となるのは、サプライヤーやドローン事業を行う企業はもちろん、ドローンの活用を模索する企業や自治体、商工会議所といったユーザーだ。既に参加者数は93社(9月現在)に及び、その規模や地域はさまざまだ。
同プラットフォームは、ドローンに関する技術支援や実証フィールド確保、国や自治体の補助金獲得のサポートなどを中心に行う。ドローン業界の最新情報の発信や展示会の出展、自治体・商工会議所などと企業をつなぐハブとしても活動していく。
プラットフォームを通じた新たなビジネスの創出にもつなげる。参加者間の横のつながりを生み出し、企業や地域が抱える課題解決に向けた連携した動きを促していく。11月には参加者同士の交流を深めるピッチイベントを開催予定とする。
既にプラットフォームを立ち上げた効果が見え始めている。プラットフォーム内で共有された課題に対して、ドローンのノウハウを持つ企業からアイデアが提示され、解決に向けて動き出した事例が生まれている。
国内では業界の人手不足が深刻化する中、その対策の担い手となるドローンの需要拡大が今後も見込まれる。プラットフォームを通じて、ドローンビジネスを手がける複数企業が連携すれば、物資の大量輸送といった大がかりな案件に対応できるなど、ドローンビジネスの可能性も広がる。NIROは、〝ドローンについて何でも気軽に話せる場所〟として同プラットフォームを成長させ、ドローン産業の育成を推し進めていく。
海洋産業振興セミナー開催
神戸市とテクノオーシャン・ネットワーク(TON)は、神戸市内で「海洋産業振興セミナー」を開催した(写真)。会場参加とオンライン視聴を合わせて、300人以上が聴講した。
セミナーでは「海運におけるカーボンニュートラル」をテーマに、業界動向や企業の取り組みが紹介された。国際海運では、2023年に国際海事機関(IMO)が「50年頃までの温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロ」を掲げたことを契機として、次世代船舶やそれに伴う技術開発が本格化している。国際海運におけるGHG排出ゼロの達成に向けて、「船舶燃料の転換をいかに実行するかが世界の潮流となっている」(国土交通省海事局海洋・環境政策課の金子隆佐氏)と解説した。
ジャパンエンジンコーポレーションは、水素・アンモニアを燃料とするそれぞれの船用大型エンジンの開発について紹介した。今後、航路や用途によって採用される燃料が多極化することが予想され、「さまざまな燃料に対応する技術開発を進めていく必要がある」(江戸浩二執行役員)と話した。
神戸市は港町として発展してきた背景を踏まえ、地方創生の柱として海洋産業の振興に注力している。
25年には、TON主催の海洋に関する技術分野の国際展示会「テクノオーシャン2025」が神戸市で開催される。