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建設産業
最新デジタル技術駆使 建設作業の効率化進む 大手各社
技能労働者の高齢化や若年層の入職の減少といった課題に長らく直面する建設業界にとって、生産性向上は常に重要テーマだ。従来の3K(きつい、汚い、危険)のイメージを払拭し、新4K(給与がよい、休暇が取れる、希望がもてる、かっこいい)への転換を進める上でも大きな意味を持つ。大手各社は装置の機能向上や最先端のデジタル技術の活用を通じて、業務効率化に向けた取り組みを一段と加速しており、さまざまな成果を生み出している。
鹿島/現場でコンクリ流動化 混和剤投入や管理自動に
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養老トンネル南工事での覆工用高流動コンクリート打設状況(鹿島)
鹿島は山岳トンネル工事向けに、現場で流動化させる覆工用高流動コンクリートを開発した。工場で製造する覆工用高流動コンクリートに比べ、コストの大幅な低減が可能。「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」と組み合わせて、中日本高速道路が発注した「東海環状自動車道 養老トンネル南工事」(三重県いなべ市)に初導入した。
製造コストが安価なベースコンクリートを工場から現場に運搬し、新開発の現場添加型の混和剤を使って流動化させた。
コンクリートの良好な流動性を一定時間以上保持しつつ、早期に強度が発現する分散成分と、材料分離を抑制する増粘成分を調合している。工場で製造する覆工用高流動コンクリートと同等の品質が確保できることを確認した。
既存の覆工コンクリート用繊維投入機に混和剤の自動添加装置を組み合わせ、混和剤と繊維をベースコンクリートに同時投入する仕組みとした。添加率を基に自動計量した混和剤の投入量を自動で記録するため、人手で行っていた混和剤の計量・投入や管理の自動化と省力化を実現している。
大林組/ホイールローダー自動運転 採石場や発電施設で活用
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大林神栖バイオマス発電所で行った夜間自動運転実証実験(大林組)
大林組はホイールローダー用の後付け自動運転装置を開発した。すくい込み位置と積み込みや投入位置が固定された環境であれば昼夜に関係なく運用でき、採石業や発電施設での活用が見込める。大林神栖バイオマス発電所(茨城県神栖市)における燃料運搬の実証実験で、通常の有人操業時と同水準の作業を実現した。
同装置は自動運転システム、3次元(3D)高性能センサー「LiDAR」や傾斜計などの各種センサー、自動運転制御盤、レバー制御装置で構成する。すくい込みや運搬など自動運転に必要な作業設定を、遠隔で安全な場所から行える。
ホイールローダーは各作業場所の位置を認識。各種センサーで機体の挙動・位置を把握しながら運搬物の形状から効率よくすくい込みができる位置を自動的に判断し、作業位置まで走行する。その後、事前に設定した経路で運搬し、積み込みや投入作業を行う。
ホイールローダーのメーカーや機種の制約を受けずに後付けが可能。作業員の熟練度に関係なく簡単に動作設定できる。帳票機能も備え、投入数量などの管理も行える。
大成建設/コンクリ打継面評価にAI
大成建設はダムなどのコンクリート構造物の施工向けに、AI(人工知能)画像認識技術を活用し、コンクリート打継面をタブレット端末のカメラで撮影した画像から定量的かつリアルタイムに把握できるコンクリート打継面評価技術を開発した。構造物の施工品質を左右するコンクリート打継面の処理程度を、大型の特殊計測機材を使用せずにタブレット端末で即時に確認でき、工事の一層の生産性向上に役立つ。
タブレット端末のカメラで撮影したコンクリート打継面の画像を任意の大きさの格子に分割。AI画像認識によって格子ごとに打継面の処理程度を「良(浅め・中間・深め)」「不良」と色分けして判定する。分割したすべての格子での判定結果を1秒程度で撮影画像上に重畳表示する。
タブレット端末にインストールしたアプリケーションを使ってAIが撮影画像を自動解析し、打継面の処理程度を即時に評価・判定することで、処理程度の定量的な評価が建設現場でリアルタイムに行える。判定結果や位置情報などを端末内に保存でき、トレーサビリティー(履歴管理)の確保にもつながる。
清水建設/盛土施工経路、自ら判断 無人ブルドーザー
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自律施工型ブルドーザー「Smart Dozer」(清水建設)
清水建設は自律施工型ブルドーザー「Smart Dozer」を使った盛土工事の実証施工に乗り出した。動的に変化する周囲の環境に応じて最適な施工経路を自ら判断する自律施工機能を備えたブルドーザーで、生産性向上や省人化のほか、作業員の業務負荷の軽減、労働環境の改善にもつながる。実証フィールドで動作を検証した上で、今年中に実現場への適用を目指す。
土木工事の無人化施工の実現に向け、ボッシュエンジニアリング(横浜市都築区)、山崎建設(東京都中央区)と共同で取り組んでいる技術開発の一環。熟練作業員の減少に対応し、施工の省人化と生産性向上を図る目的で開発した。
人や障害物を高精度に識別し、地形の高さをリアルタイムに検知できる環境認識システムと、自律制御システムをブルドーザーに実装。実証フィールドでの動作検証では、待機場所から敷均(しきなら)しエリアまでの移動経路やエリア内での施工経路を自律的に導出する経路自動生成ソフトを環境認識システムに組み込み、建設機械が自ら最適動作を判断する自律運転の実現を目指す。
竹中工務店/モバイルハウス、事務所に 自立電源・通信
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大阪・関西万博の工事現場におけるモバイルハウスの活用状況(竹中工務店)
竹中工務店はトレーラー開発・製造を手がけるクロコアートファクトリー(相模原市緑区)と共同で新会社を設立し、モバイルハウス活用事業に乗り出した。移動可能で電気や通信のインフラがない場所で活用できるモバイルハウスの特性を生かし、社会課題の解決への貢献を目指す。
竹中工務店は2023年から、工事事務所としての機能を発揮する「牽引(けんいん)式オフグリッド型モバイルハウス」の開発・試験導入を推進。24年には実証実験として、同型のモバイルハウスを活用した移動式コンビニエンスストアを大阪・関西万博の工事現場内に開店した。
新会社のオフグリッドフィールド(神奈川県小田原市)では、自立電源(ソーラーパネル+蓄電池)や自立通信(衛星インターネット)を装備したけん引式モバイルハウスや、トレーラーハウスを基盤としたオフグリッド型モビリティーに関する四つの事業を展開する。建設現場での導入により、勤務する担当者の移動時間削減などの効果を確認できたことから、今後はさまざまな分野で活用を推進する考えだ。
