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建設産業
建設業界の市場・政策動向
政府分野と民間非住宅、増加
【執筆】 建設経済研究所 研究理事 落合 裕史
建設経済研究所はわが国の建設投資に関して調査研究を行い、内閣府が公表する国民経済計算などを踏まえて「建設経済モデルによる建設投資の見通し」を四半期ごとに発表している。7月11日に発表した見通しでは、2025年度の建設投資は前年度比で微増(名目値)、26年度の建設投資は前年度比で増加(同)という予測をしており、ここではその概要を紹介する(以下、数値は全て25年7月11日時点)。
■これまでの建設投資の推移
わが国の建設投資は1992年度の約84兆円をピークとして減少基調に入り、2010年度にはリーマン・ショックなどの影響もあって約42兆円まで半減した。その後は東日本大震災の復旧・復興事業や東京五輪・パラリンピック開催を見込んだ投資需要などによって徐々に回復し、国土強靱化投資もあって現在も上昇基調が続いている。
国土交通省が24年8月に発表した「令和6年度建設投資見通し」によると、23年度は名目値約71兆1000億円に達する見込みとなった。その主な内訳は民間住宅が23・5%、民間非住宅建築が14・4%、民間建築補修(改装・改修)が16・9%、民間土木が9・7%、政府土木が25・2%となっている。一方、実質値(15年度基準、以下同じ)でみると、23年度は約57兆6000億円の見込みで、近年は58兆円前後の水準でほぼ横ばいに推移している。建設資材や労務費の上昇により名目値は伸びているが、実質的な建設投資は伸びていないのが現状だ。
■建設投資の見通し
25年度の建設投資は民間住宅分野が伸び悩むものの、政府分野・民間非住宅分野は堅調に推移し、名目値75兆4500億円(前年度比2・5%増)、実質値57兆8000億円(同0・7%増)と予測している。26年度は民間住宅分野が持ち直し、政府分野・民間非住宅分野は引き続き増加の推移を維持し、名目値79兆2100億円(同5・0%増)、実質値59兆6729億円(同3・2%増)と予測する(図1)。
■政府分野投資
政府分野投資は政府の住宅・非住宅建築投資および土木投資に係る投資額を表したものとなっている。25年度は国の当初予算で前年度並み約6兆円の公共事業関係費が確保されていることや24年度の補正予算が前年度と同程度確保されていること、また地方単独事業の25年度予算も前年度並みに確保されていること、さらに25年度の足元の出来高についても堅調に推移していることを踏まえ、名目値24兆5600億円(同4・5%増)、実質値18兆8336億円(同2・8%増)と予測する。
26年度については「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」により近年における投資額は堅調に推移している上、その後継計画にあたる「第1次国土強靱化実施中期計画」が今年6月に閣議決定されたことも踏まえ、名目値26兆8100億円(同9・2%増)、実質値20兆2450億円(同7・5%増)と予測する。
■民間建設投資
住宅投資は省エネ基準適合義務化などに伴う前年度の駆け込み需要の反動により、25年度の着工戸数は前年度比4・4%減の78万戸と予測し(図2)、投資額は物価上昇の影響もあって名目値は16兆8500億円(同0・1%減)、実質値13兆380億円(同1・4%減)と予測する。26年度の着工戸数は前年度の反動減からの回復により、前年度比1・4%増の79万1000戸、投資額は高付加価値化や大型化の傾向が継続すると予想されるため、名目値17兆2900億円(同2・6%増)、実質値13兆2097億円(同1・3%増)と予測する。
非住宅建設投資(民間非住宅建築投資および民間土木投資)では、25年度の投資額が名目値18兆6000億円(同5・5%増)、実質値14兆2212億円(同3・8%増)、着工床面積は前年度比3・9%増の3607万2000平方メートルと予測する(図3)。
日銀短観(6月調査)によると、25年度の設備投資額(計画)は全産業で前年度から増加しており、堅調な企業の設備投資意欲を反映し、投資額・着工床面積いずれも増加すると予測した。26年度は海外経済や建設コストの動向などリスク要因はあるが、引き続き企業の設備投資に持ち直しの動きがみられると想定して、投資額は名目値19兆2700億円(同3・6%増)、実質値14兆4907億円(同1・9%増)と予測する。
■建築補修(改装・改修)投資
25年度の政府建築補修(改装・改修)は、23年度からの大幅な上昇の反動を受けて前年度比で減少はするものの、省エネルギー対策などによる堅調な投資が継続すると想定して引き続き高水準と予測する。民間建築補修(改装・改修)では住宅分野・非住宅分野ともに堅調な投資が見込まれることから、政府民間合わせた投資額は名目値15兆4400億円(同1・3%減)と予測する。26年度も同様に高水準と想定し、名目値15兆8400億円(同2・6%増)と予測する。
■おわりに
今回の予測は6月9日時点の国民経済計算(四半期別GDP速報)の25年1—3月期・2次速報を踏まえて推計した結果である。ここでの執筆時には米国の関税をめぐる状況などが変化しており、今後の影響について引き続き注視していく必要だ。なお、今回の建設投資見通しの詳細については当研究所のホームページ(www.rice.or.jp/regular_report/forecast-html/)を参照していただきたい。
