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東北産業特集
新たなモノづくりへの挑戦 東北の企業・支援機関 ③
片桐製作所(山形県上山市)/新加工法で工程短縮
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試作したギア
片桐製作所(山形県上山市、片桐均社長)は、新たな加工法による工程短縮などの提案に力を入れている。2024年11月には、本社工場内に加圧能力400トンのサーボプレスを導入した。これを用いた独自の工法により切削レスのギアなどを試作した。7月に開かれた展示会などでお披露目した。
訴求するのは素材から切削工程なしでギアを製作する試み。電動台車などに使われる手のひらサイズのギアとなる。サーボプレス活用により新たな領域を切り開いていく方針だ。新工法は社内で打ち出した。上下に油圧シリンダーを装備した内製のダイセットと独自設計の油圧装置を組み合わせたシステムになる。
サーボプレスを用いた新工法でのモノづくりは、圧力をどのように制御していくか。ここが肝だったという。ギアは当面の一つの例として示していくことになる。生産現場における切削加工の削減などコスト減に寄与できる点を呼びかけていく。
ウエノ(山形県鶴岡市)/新型ノイズ除去コイル
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新型のアルミ線ノイズ除去コイル㊨と従来のコイル
ノイズ除去コイルメーカーのウエノ(山形県鶴岡市、上野隆一社長)は、独自の発想を取り入れたコイルを世に打ち出している。新たに問いかけているのが価格を意識した製品化だ。最新のコンセプトで開発したのがアルミニウム線を用いたノイズ除去コイルだ。
一般に同コイルはコア(磁心)に銅線を巻く。銅価格が上昇した中、銅に比べ軽量かつ安価なアルミを採用。既存コイルと同等の特性を持つことを各種評価試験で確認した。新型コイルは、約35%の原価低減を見込み、価格を強く意識した点を顧客に訴求する。
同社は2012年にアルミ線ノイズ除去コイルの開発に着手した。近年における銅価格の上昇に伴い、23年に新型コイルの実用化へ踏み出した。アルミ材を使うことで軽量化も実現した。アルミ線ノイズ除去コイルのコアには、ハイエンドな製品に使う薄帯の磁性体合金をリング状のコアに最適化。アルミ線の表面には銅を被覆した。海外に負けない価格を追求する。
シェルター(山形市)/欧州市場を開拓
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シェルターが開発した「クールウッド」
木造耐火技術を用い、都市部での木造ビル普及に力を入れるシェルター(山形市、木村仁大社長)。その技術力は海外からも熱い視線が注がれている。
同社は木造建築の耐火技術など、都市部での木造ビル建築に向けた構築技術をスイスの木造建築会社ヘリング(エイケン)に供与した。欧州で大規模木造建築の実績を持つヘリングを通じて、公共建築物への採用など欧州市場の開拓を促す狙いだ。6月にシェルターの木村一義会長がスイスを訪れ技術供与の契約を結んだ。
シェルターが持つ木造耐火技術の海外供与は、2023年にスイスのウォルトガルマリーニ(チューリヒ)、24年に米国のマグヌッソン・クレメンシック・アソシエイツ(MKA、ワシントン州)に続き今回が3例目。
具体的には、シェルターが開発した木造耐火部材「COOL WOOD(クールウッド)」と接合金物工法「KES構法」を用いた木造構築技術を供与することで合意した。
東邦アセチレン/水素の生産能力倍増
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新しい水素設備の前に立つ堀内社長
東邦アセチレンは、山形県酒田市の工場を増強し、水素の生産能力を2倍の毎時600立方メートルに引き上げた。半導体産業向けをはじめとした水素需要の高まりに対応する。能力拡大とともに製造方法を大幅に見直し安定供給を図る。都市ガスを購入して水素を取り出す。これまではカセイソーダの生産時に発生した粗水素を外部から調達し水素を製造していた。カセイソーダの需給バランスに依存するため、安定供給が課題だった。
設備投資額は約10億円。8月上旬までに新しい製造設備の商業運転を始めた。東北に集積する半導体やエレクトロニクス、発電所、石油・ガラスなどの業界へ供給していく。
水素の発生方法は多くあり、東邦アセチレンはカセイソーダの生産時に生じる粗水素から水素を製造してきた。粗水素を調達に頼っており、機敏に供給するのに懸念があった。豊富な都市ガスから水素を生成する方法に改め、この課題を解消したことになる。
トラスト・メカ(宮城県加美町)/新規参入の包装機械が好調
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金属部品を自動で袋詰めする専用機を開発した
トラスト・メカ(宮城県加美町、越後浩社長)は新規参入した包装機事業が好調だ。電子部品などの組立装置の開発・製造の技術を応用。手作業だった食品や医療品などの袋詰めを自動化する装置で、受注を重ねている。
宮城県北部の真新しい本社工場に包装機の実機が並ぶ。菓子や魚の切り身の袋詰めなどだ。納入直前という金属部品向けの機械は上位機。ビニール袋を吸着で拾い上げて広げ、リング状の薄い金属部品を袋に入れる。複数のセンサーで一連の工程の正確性を高めた。
「第2創業を見据え、自社製品による新規事業に挑戦したい」(越後社長)と、24年に初号機を発売。小型、価格競争力などが評価され、幅広い業種から受注している。中でも売上高の9割超が食品向けだ。
中小食品加工会社や直販を手がける生産者は人手不足と高齢化の課題を抱え、自動化が必須。こうしたニーズに合致している。今後は包装機を軸に計量器など前後の付帯機を含めた提案により力を入れる。
インセムズテクノロジーズ(山形県鶴岡市)/質量分析装置に搭載可能
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開発した質量分析装置に搭載可能なキャピラリー電気泳動システム
インセムズテクノロジーズ(山形県鶴岡市、平山明由社長)は、質量分析装置(MS)に搭載可能なキャピラリー電気泳動システム(CE)を開発した。ライフサイエンス領域における計測現場の効率化につなげるのが狙いだ。ユーザー評価の必要な段階までの試作機を仕上げており、今後は医薬品、食品分野などの顧客を開拓し、実用化を目指す。
たんぱく質などの高感度な測定には、CEとMSを組み合わせた測定がある。すでに同社は、各メーカーのMSに搭載できるインターフェースなどを開発しており、こうした技術を応用した。同社によると、今後は、ライフサイエンス関連の研究機関を対象に提案営業を行い、「試作機の評価に取り組みたい」(平山社長)としている。
経済産業省の「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go—Tech事業)」の採択を受けて、2022年度から3カ年で取り組んだ成果の一環。インセムズテクノロジーをはじめ慶応義塾大学などがタッグを組んだ。
