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東北産業特集
新たなモノづくりへの挑戦 東北の企業・支援機関 ②
ジャスト(山形県上山市)/西日本エリアでの新規開拓進む
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相乗効果が生まれている…と強調する岡崎社長
ダイヤモンド電着や銀メッキ、各種複合メッキを手がけるジャスト(山形県上山市、岡崎淳一社長)。2024年に完全子会社化した平和化研(大阪府八尾市)のネットワークを通じて西日本エリアでの新規開拓が進んでいる。
八尾市内に三価と六価の専用亜鉛メッキ工場を持つ平和化研を傘下とし、ネジ関連を強みとする同社との連携を深化させている。岡崎氏が平和化研の社長を兼務する中、経営強化も進んだ。「シナジー効果が生まれている」(岡崎社長)とし、今後の両社の役割など中長期的な視点で新たな展開を見つめる。
ジャスト単体では、医療関連器具などへのダイヤモンド電着が伸びつつある。耳鼻咽喉科関連、外科関連のほか、最近では「整形外科関連での動きが目立つ」(同)という。医療関連は、新規分野開拓の一環として大学などへのアプローチを進めてきた。本格的な浸透はこれからともいえる分野。岡崎社長は「今後も医療関連での存在感を高めていきたい」としている。
日本地下水開発(山形市)/ZEBに地下水 帯水層蓄熱活用
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プロジェクト実証サイトに井戸を掘削した
日本地下水開発(山形市、桂木聖彦社長)は、建物のエネルギー消費を実質ゼロにする「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」に地中熱を利用した総合的な熱供給システムの開発に力を入れている。新たな展開として、地下水の帯水層蓄熱を中心に活用した「面的」な熱利用システムの実用化に向けた新たな研究開発プロジェクトに乗り出す。
本社近くの敷地に「ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)」の社員寮(ZEH—M)新設と既存事務所をZEBに改修し、同一敷地内での効果を検証する。面的な、熱利用システムの構築を目指すものだ。プロジェクトでは、2026年末にも各種データ取得を進める。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業としてヒートポンプ会社とも連携して取り組む。最終目標は28年度を予定している。
同社は24年度に本社近くの敷地内(実証サイト)に冷熱利用井戸と温熱利用井戸の2本を掘削した。桂木社長は「新たな挑戦を進める」としている。
美和電気工業(東京都新宿区)/震災復興支援
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仙台市泉区の紫山地区にある東北支社
キーワードは「もっと、のそばに」—。エンジニアリング・技術商社の美和電気工業(東京都新宿区、高橋淳社長)は、さまざまな生産現場や施設の電気設備・システム構築などを手がける。1947年の創業以来、「北海道・東北の故郷の発展のために」を企業理念に掲げる。
22年に仙台市泉区の紫山地区に開所した東北支社。同市内から移転・拡張し3年目を迎えた。自動車、官公庁、電力・ガス、医薬品、食品など各分野でのソリューションに取り組む中、景況感は「多種多様な現場があり、全社的には悪くはない」(齋藤良典取締役東北支社長)という。省人化などの課題に対応が進む。
今年4月には、福島県浪江町に「相双オフィス」を開設した。東日本大震災から14年が経過。同地域の復興支援はこれから本格化する。同町では今後、研究開発拠点の整備が進む。渡部健取締役営業統括本部長は「挑戦をしていく場になる」と先を見つめる。
ティ・ディ・シー(宮城県利府町)/精密研磨で高精度加工
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試作した球体
独自の精密研磨技術により、高精度な加工を提供するティ・ディ・シー(宮城県利府町、赤羽優子社長)。赤羽亮哉会長は、「新たな量産技術にめどをつけた」と意気込む。
新たな市場開拓に向けて、同社は真球度が高い等級「G3」クラス球体の量産化技術を確立した。現在、外径10ミリメートルサイズの鋼球(USJ2)とアルミナセラミックス球で量産への基本的な加工条件などを固めた。同社が持つ平面部材などの精密研磨技術を応用して、独自の球体研磨加工につなげた。
日本産業規格(JIS)等級でG3クラスの真球度は、80ナノメートル(ナノは10億分の1)。既存の工作機械を用いて、専用の治具などを使った工夫を施して、真球度が高い球体を量産化することに成功した。現状では、1ロット18個を製作できる。
外径10ミリメートルサイズの鋼球とアルミナセラミックス球でそれぞれG3クラスの量産化にめどをつけた。今後は、同クラスの球体を必要とする顧客を開拓し、用途開発を目指す。
プロフェクト(岩手県花巻市)/中小向け総合生産管理システムに高評価
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モノづくり現場を支える「TED」
プロフェクト(岩手県花巻市、阿部志郞社長)は、自社開発の中小製造業向け総合生産管理システム「TED(トータル・エンジニアリング・デザイン)」の浸透を図っている。7月には、日本DX大賞実行委員会が主催する「日本DX大賞2025」支援部門の優秀賞に選ばれた。
同社は全国のモノづくり中小企業8社が出資し、05年に設立。それぞれの生産管理についての課題を持ち寄り、開発したのがTEDだ。横展開が可能なシステムで、中小製造業にマッチする。TEDは、受注から生産、入金管理までの全工程を一貫管理し、会社全体の業務効率化に寄与する。阿部社長は「中小モノづくり現場の課題解決に対応するシステムとして進化させている」と話す。
「日本のモノづくり復権」を掲げるプロフェクト。TEDは各種展示会などを通じて、その存在を高めつつある。外部機関からの表彰も増えており、DX支援企業として、今後もモノづくり企業の成長を縁の下で支える。
通研電気工業(仙台市)/3Dモデリング始動
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自社工場の3Dモデル化の一例
東北電力企業グループの通研電気工業(仙台市泉区、菅野秀幸社長)は、通信技術や監視制御などによる製品・各種サービスを手がける総合エレクトロニクス会社。新規事業の一環として、3Dモデリング事業をスタートした。
一般に3Dモデリングは、現実の空間や物体を3次元のデジタルデータとして再現する技術になる。具体的には、3Dレーザースキャナーで現場を計測。そこで得た高精度な点群データから、現場を再現した3Dモデルを生成する。同社が保有する技術は、「現場の3Dモデル化」「3Dモデル上での現場調査」「3Dモデル上でのシミュレーション」の三つ。
現在提供するサービスは、自社工場や発電設備などの計測で蓄積したノウハウを活用した現地計測による3Dモデル化。25年下期には、簡易的に閲覧も可能なクラウド環境による「保管・閲覧」などを計画する。シミュレーション活用では、効率的なレイアウト設計、安全対策の立案などが想定される。
