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不動産
2026年の不動産市場は旺盛な需要を背景に引き続き堅調に推移すると見込まれている。働き方や暮らしの多様化に伴いオフィスやマンションの市場は拡大傾向が続き、電子商取引(EC)向けを中心に物流施設の建設も相次ぐ。良好な事業環境が続く中で、各社は最先端技術の活用や新たなニーズの掘り起こしに力を注いでおり、持続的な成長に向けて脱炭素化や新規事業の創出といった取り組みを一段と強化している。
マンション関連法改正が不動産取引実務に及ぼす影響
【執筆】 ときそう 代表取締役 吉野 荘平
今年4月1日からマンション関連法の大規模改正が全面施行される。全国の分譲マンションストック総数は約713万戸に達し、居住者は推計約1600万人、国民の1割超がマンションに暮らす計算になる。建物と居住者の「二つの老い」が進行し、築40年超のマンションは今後10年で約2倍の293万戸に急増する見込みだ。管理・再生の両面で制度整備が急務となっている。ここでは不動産取引実務に直結する改正ポイントと事業者に求められる対応を解説する。
3段階の施行スケジュール
今回の改正は「区分所有法」「マンションの再生等の円滑化に関する法律(旧・建替え等円滑化法から改題)」「被災区分所有法」「マンション管理適正化法」の4法にまたがる包括的なものである。施行は3段階に分かれる(表1)。
第1段階として、2025年11月28日に「管理適正化法」の一部(危険マンションへの勧告等の権限強化)が施行済みである。
第2段階の26年4月1日には、「区分所有法」「被災区分所有法」「再生等円滑化法」が全面施行され、「管理適正化法」の残部(管理業者管理者方式に係る規定等)も施行される。
第3段階として、公布日から2年以内(27年5月30日まで)に管理計画認定制度の拡充が予定されている。不動産取引実務に最も影響が大きいのは、目前に迫った第2段階である。以下、取引実務の観点から優先度の高い事項を取り上げる。
重要事項説明書の改訂 3つのポイント
宅地建物取引業者にとって最優先の対応は、重要事項説明書(以下「重説」)の改訂だ。改正に伴う主要な変更点は3点ある(表2)。
第1に、「管理業者管理者方式」の説明項目が新設される。宅建業法施行規則第16条の2に第9号が追加され、マンションの管理者が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合には、その旨を説明しなければならない。管理会社が管理者を兼ねる方式は近年増加傾向にあり、利益相反の懸念から制度的な手当てが図られたものである。
第2に、法律名が変更された。「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が「マンションの再生等の円滑化に関する法律」に改題され、宅建業法施行令第3条第1項第28号の法令上の制限欄における記載を修正する必要がある。一棟リノベーション、建物敷地売却、取り壊しなど建て替え以外の再生手法が制度化されたことに伴う変更である。
第3に、容積率特例に関する条文番号が旧第105条第1項から新第163条の59第1項に変更された。高さ制限の緩和も追加されており、「要除却等認定マンション」の再生における制度的選択肢が広がった。いずれも書式在庫の確認・差し替えが必要であり、4月1日以降に旧書式を使用してはならない。
管理業者管理者方式の調査実務
新設された管理業者管理者方式の説明義務について、実務上の調査方法を整理する。マンション管理業協会が25年12月に改訂した「重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」では、「管理形態」の欄に「管理者名」が新設された。管理者名欄に管理会社名が記載されていれば管理業者管理者方式に該当すると判断できる。
ただし、管理者が管理業者の関連会社(親会社・子会社など)の場合は、見かけ上異なる会社と誤認する恐れがあり注意が必要だ。宅建業法施行規則第16条の2第9号は文言上、管理者と管理業者が同一法人である場合を想定した書き方となっている。
一方で、管理適正化法第77条の2及び施行規則第89条の2は、利益相反取引の事前説明義務の対象として「密接な関係を有する者」を定め、親会社・子会社・関連会社・兄弟会社まで5カテゴリーを明示列挙している。同一の改正法パッケージ内でこの射程の差が生じていることは、実務上の判断を難しくしている。
不動産事業者としては、外形的徴表(商号、本店所在地、ウェブサイトなど)の確認に加え、管理会社への書面照会によって関連性の有無を確認し、回答を保管しておくことが重要だ。該当が疑われる場合には重説備考欄にその旨と確認経緯を記載しておくことが、宅建業法第47条第1号ニ(重要事項の不告知)に対するリスク回避の観点からも望ましい対応となっている。
区分所有法改正が取引に及ぼす影響
区分所有法の改正も不動産取引に大きな影響を与える。最も重要なのは集会決議の要件変更だ。改正法では、建て替え決議など区分所有権の処分を伴う決議を除き、出席者の多数決による決議が原則となった。これにより、管理に無関心な区分所有者が多いマンションでも円滑な意思決定が可能となる一方、少数の出席者で重要事項が決議される可能性もあるため、買い主にはこの仕組みの変化を丁寧に説明する必要がある。
買い主への説明上とりわけ重要なのは、管理規約の効力に関する経過措置だ。改正法附則第2条第3項により、施行日以降、改正区分所有法に抵触する規約の規定は効力を失う。現行の標準管理規約に準拠した規約では、決議要件や招集通知の発送期間の規定などが改正法に抵触する可能性があり、規約改正が必要となるケースが多い。
この点を物件調査において確認し、規約改正の進捗状況とあわせて買い主に適切に説明することが求められる。
不動産事業者に求められる対応
施行まで1カ月を切った今、不動産事業者がまず行うべきは、重説書式の改訂と在庫の差し替えである。次に、管理業者管理者方式の確認を物件調査フローに組み込むこと、そして社内研修を通じた担当者の知識アップデートが不可欠だ。
改正は広範にわたるが、取引実務に直結する事項を優先し、段階的に対応を進めることが肝要だ。今後も政省令の細則や運用指針の公表が予定されており、最新情報への継続的な注視が求められる。
