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大阪産業人クラブ60周年
大阪産業人クラブ(千歳喜弘会長=KRI特別顧問)は、2025年2月、設立60周年を迎える。前身は1965年に発足した関西工場長連盟。「工場責任者が相集い、工場経営の合理化、生産技術の向上などに関する知識の交流と相互の親睦を図る」ことを設立目的に、産業を取り巻く環境が変化する中で常に時代の要請に応えながら、60年に渡って活動を続けてきた。
経営者の対話を重視
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工場見学を合わせ、運営委員会も学びと交流の場に
産業界は今、人工知能(AI)などデジタル技術の進展によって新たな変革の時を迎えている。さらに長引く紛争や、米国トランプ大統領が掲げる自国第一主義の政策に世界経済は混迷の度を深めており、企業経営者が対処しなければならない課題は山積。的確な情報の収集、意見交換の場がこれまで以上に重要になる中、産業人クラブが担う役割も大きくなっている。
大阪産業人クラブは知的財産や人的ネットワーク、会員の英知を結集した、先進的な活動を展開する。時流に合わせた情報を提供する講演会やセミナー、ネットワークを広げるための交流会、現場改革に生きる工場見学会、グローバルに情報を収集できる海外研修などその活動は多岐にわたる。経営者同士の交流を重視しており、異業種間で自由に意見を交わせる環境づくりに力を入れている。
会員のニーズに素早く、的確に応えるため、その活動は「運営委員会」、最新技術のセミナーを企画する「テクノロジー部会」、工場見学や海外視察を企画する「産業フォーラム部会」、「青年部会」などの各専門部会が中核となって運営される。時代の移り変わりに合わせて部会のスタイルも変わってきており、60周年を機に活動をさらに活発化させていく方針だ。
異業種など接触率を上げ刺激得る
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大阪産業人クラブ会長 千歳 喜弘 氏
世界経済は混沌(こんとん)としている。こうした中、60周年の節目を迎える大阪産業人クラブはどのような方針で未来に向かうのか。千歳喜弘会長に聞いた。
―産業を取り巻く環境については。
「世界が民主主義に傾倒し一つになる中、日本の技術者は世界で勝てる製品を生み出すことが世の中のためになると思って取り組んできた。技術者として53年間、私もそうだった。2025年は終戦後80年、昭和100年を数え、こうした時代のターニングポイントに来たと感じている」
「4、5年前から産業人クラブのあいさつに立つと『(変化の)足音がする』と話してきた。今は『自国第一主義』を掲げるトランプ大統領が返り咲き、誰もがそれを認めるところだろう。競争力が今や世界30位まで落ち、足もとも落ち続けている日本は再び力をつけなければならない」
―どのような対応が必要でしょう
「波瀾(はらん)万丈の時代は事業を切り替えるチャンス。今後、人工知能(AI)の活用がさらに進んでいくだろうが、空気を読んで将来を描くのは人間にしかできない。人間の脳を使ってイノベーションを起こすことが大事だ。異文化、異分野、異業種などとの接触率を高めれば、反応してイノベーションは起こる。経営者は徹底的に意見交換し、刺激を得ていく必要がある」
―大阪産業人クラブに何ができますか
「経営者同士が“接触”する舞台を用意するのが産業人クラブの存在意義であり、活動を活性化させていくことが次の時代において意味を持ってくる。この5年、10年の間にどう動くかが今後の50年、100年をつくっていくと考えれば面白い時代だ。大阪には長い歴史を持ちながら、自らの強みに気づいていない企業も多い。これを違う展開に生かせるようにしたい。若者に大いに期待している」
―交流メーンの団体を敬遠する経営者もいます
「中には食わず嫌いの人もいる。交流の舞台、場面をたくさん用意し、刺激を与えて引っ張り込んでいくしかない。代替わりした若手経営者にビジョンを語ってもらうような場を設けるのも良いのではないか。とにかく接触を大事にしたい」
―今後のあり方を聞かせてください
「世界をさまざま見てきたが日本の強みは間違いなくモノづくり。マネのできない歴史があり、この中で高い信頼性が構築されてきた。この信頼性は世界に類がないものだ。産業人クラブの情報発信を担う日刊工業新聞社もモノづくりの強いイメージがある。産業人クラブが人をつくり、日刊工業新聞がその情報を発信する。双方向の仕組みを生かしたい。日刊工業新聞も110年の歴史があるのだから、みんなの悩みに答える情報を発信してほしい。まず動きが大事で、うまくいかなければ、変えていけばいい」