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MC・NC工作機械
製造業では、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)への対応を背景に、生産設備の省エネルギー化要求が高まっている。工作機械分野においても、「ISO14955」に対応した工作機械の環境評価における規格「JIS B 0955」が制定され、工作機械の環境負荷や省エネ性能を評価する取り組みが進められている。
VRを活用し、デジタルツインを直感で操作
近年では、IoTや AIの普及を背景として、工作機械や生産設備をデジタル空間上で再現する「デジタルツイン」が注目されている。工作機械分野においても、加工シミュレーションや設備監視システムが普及しており、加工状態の見える化や遠隔監視が進みつつある。一方、仮想現実(VR)技術も近年急速に発展しており、専用デバイスの低価格化や高性能化により、産業用途への適用が現実的となってきた。VRはコンピューター画面上の監視システムと比較して、3次元的な状況把握や直感的な操作に優れる特徴を有している。
そこで筆者らは、工作機械のデジタルツインをVR空間上に構築し、加工状態や消費電力を直感的に可視化するシステムの開発を進めている。図7にVR工作機械シミュレーターの概観を示す。本システムでは、卓上型CNCフライス盤と VR空間をインターネットの標準的な通信規格「TCP/IP」 通信で接続し、実機と仮想空間をリアルタイムに同期させる。VR空間内では工作機械の動作だけでなく、主軸負荷や切削状態なども表示可能であり、加工状況を遠隔地から把握することができる。
また、本研究では単なる監視だけでなく、VR空間内で切削シミュレーションを行う機能についても検討している。従来のVR加工シミュレーションでは、視覚的な切削表現が中心であり、除去体積や切削負荷を定量的に扱うことは難しかった。そこで筆者らは、ボクセル法およびメッシュ変形法を用いた切削再現手法を導入し、切削体積の算出と切削動力予測を可能とした。特にメッシュ変形法では、頂点座標の変位のみで形状変化を表現することで、VR環境においてもリアルタイム性を維持しながら切削再現を行えることを確認している(図8)。
さらに、VR空間上で加工状態や消費電力を可視化することで、加工条件や工具経路によるエネルギー変化を直感的に理解できる。例えば、工具経路変更による主軸負荷や消費エネルギーの変化を VR内でリアルタイムに比較表示することで、オペレーターや工程設計者が省エネ効果を視覚的に把握可能となる。
このようなVRデジタルツイン技術は、加工現場での遠隔監視や異常検知だけでなく、加工教育や技能伝承にも利用できる。また、CAMや消費電力シミュレーションと連携することで、加工精度、加工時間、消費エネルギーを同時に考慮した加工支援が可能となる。さらに、仮想空間上で加工条件や工具経路を事前検証することで、実加工前の工程設計や省エネ評価を効率的に行うことができる。
