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MC・NC工作機械
製造業では、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)への対応を背景に、生産設備の省エネルギー化要求が高まっている。工作機械分野においても、「ISO14955」に対応した工作機械の環境評価における規格「JIS B 0955」が制定され、工作機械の環境負荷や省エネ性能を評価する取り組みが進められている。
モデルベースによる省エネ加工設計
近年、工作機械分野ではIoT(モノのインターネット)やデジタルツイン技術の進展により、加工状態や設備稼働状況をデジタル空間上で可視化・分析する取り組みが進んでいる。特に、工作機械の消費電力や切削負荷をリアルタイムに監視するシステム、さらには切削条件を自動調整する加工支援システムなども登場している。しかし、多くは機械全体の電力監視や加工状態のモニタリングが中心であり、消費エネルギーを基準とした工具経路や加工条件の最適化まで行うものはまだ少ない。
一方、工作機械の消費電力は、送り軸や主軸だけでなく、クーラント装置や周辺機器、さらには加工対象物(ワーク)やチャックの質量変化などによっても影響を受ける。そのため、多軸工作機械において各軸や周辺機器の消費電力を詳細に把握するには、多数の測定機器やセンサーが必要となり、導入コストや解析工数が増大する。特に5軸加工機では、直線軸と回転軸が複雑に連動して動作するため、実測のみで消費エネルギーを詳細に評価することは容易ではない。
そこで筆者らは、工作機械の送り駆動系や主軸系をブロック線図としてモデル化し、NCプログラムや加工条件を入力することで消費電力を推定するシミュレーションモデルを構築している。図6に、モデルベースによる省エネ加工設計の概念図を示す。本システムでは、NCプログラムや工具経路情報から各軸の位置・送り速度を算出し、サーボモーターや送り機構のモデルを介して各軸の消費電力を推定する。さらに、クーラント装置や待機電力なども加味することで、加工全体の消費エネルギーを事前に評価することが可能となる。
また現在は、送り駆動系だけでなく、材料除去率や切削条件に基づく切削エネルギー推定についても検討を進めている。これにより、加工時間短縮による待機電力削減効果と、切削負荷増加によるエネルギー増大との関係を総合的に評価できるようになり、加工全体として最適な加工条件の探索が可能となる。
このようなシミュレーションを駆使した「モデルベース開発(MBD)」を活用することで、加工前の段階で工具経路や加工条件による消費エネルギー変化を予測できるだけでなく、加工中の異常検知や機械状態監視への応用も可能となる。例えば、実測値とシミュレーション結果との差異を監視することで、摩擦増大や機械劣化といった異常状態の早期発見にも利用できる。
さらに、将来的には工作機械設計そのものへの応用も期待される。例えば、軸配置や駆動方式、機械構造の違いによる消費エネルギー変化を設計段階で比較評価することで、より省エネルギー性に優れた工作機械設計が可能となる。今後は、CAM、加工シミュレーション、デジタルツイン、さらにはAI(人工知能)による最適化技術とも連携し、加工精度、加工時間、工具寿命、消費エネルギーを同時に考慮した次世代加工システムの構築が可能となる。
