-
業種・地域から探す
続きの記事
MC・NC工作機械
製造業では、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)への対応を背景に、生産設備の省エネルギー化要求が高まっている。工作機械分野においても、「ISO14955」に対応した工作機械の環境評価における規格「JIS B 0955」が制定され、工作機械の環境負荷や省エネ性能を評価する取り組みが進められている。
運動特性を利用した工具経路最適化
前章で述べたように、工作機械の消費電力は送り速度だけでなく、各軸の運動方向や機械構造によって変化する。すなわち、同じ製品形状を加工する場合でも、工具経路の違いによって消費エネルギーが異なる可能性がある。従来のCAMシステムでは、加工精度や加工時間を重視した工具経路生成が主であり、消費エネルギーを考慮した経路設計はほとんど行われていなかった。
そこで筆者らは、工作機械各軸の運動特性を利用した省エネ工具経路最適化手法を提案している。本手法では、各軸方向の運動に対して、消費電力測定結果を基にした「コスト」を設定し、その値を用いて工具経路探索を行う。図4に提案手法の概念図を示す。各軸方向の移動コストを設定することで、消費エネルギーの小さい方向を優先した工具経路を自動生成することができる。
例えば、図2で示した工作機械では、Y軸方向の送り運動がⅩ軸方向より大きな電力を消費することが確認されている。そこで、Ⅹ軸方向のコストを小さく、Y軸方向のコストを大きく設定することで、システムは自動的にⅩ軸方向主体の工具経路を生成する。
一方で、Y軸方向のコストを低く設定した場合には、Y軸方向主体の走査線加工経路が生成される。このように、各軸の消費電力特性を工具経路生成へ反映することで、消費エネルギーの小さい加工経路を選択できる。
また、本研究では平面上に凸部を有する形状を対象に工具経路生成を行い、提案手法の有効性を検証した。図5に、各軸方向のコスト設定によって生成された工具経路の違いを示す。Ⅹ軸方向のコストを低く設定した場合にはⅩ方向主体の加工経路が生成され、Y軸方向のコストを低く設定した場合にはY方向主体の加工経路が生成されている。その結果、各軸方向のコスト設定に応じて、加工方向が変化することを確認した。これは、工作機械の運動特性が工具経路に直接反映されていることを示している。
さらに、生成した工具経路については、送り駆動系の消費電力推定モデルを用いて消費エネルギーを評価した。その結果、送り運動に要するエネルギーを削減できることを確認した。今回の検証では実験用の比較的小型な送りテーブルを対象としているが、大型工作機械や5軸加工機では、各軸間の消費電力差がさらに大きくなるため、省エネ効果もより顕著になると考えられる。
従来、省エネ化には設備更新や周辺機器の改良が必要となる場合が多かった。一方、本手法は既存設備を利用したまま、CAM上で工具経路を変更することで消費エネルギー削減を実現できる点に特徴がある。
