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MC・NC工作機械特集
加工要件に応じた自動工程設計で柔軟な加工法選定
部品加工においては、所望の3D形状に指示された素材から加工する方法はミーリング加工以外にも旋削加工、積層造形加工(AM)、金型を準備することによる鋳造加工、射出成形加工など解は一つではない。現状では、一般的には加工現場においてそれぞれ得意としている加工方法があり、加工を依頼する業者を選定した時点で加工方法が決まっていることが多い。しかしながら、加工現場の経験と勘に頼った加工工程が本当に妥当かどうかの判断がなされずに加工方法の決定が行われていることが、製造業の生産性を低下させていないとは言い難い。
今までは工程設計を行うための時間とコストが大きかったため、実際に採用しない加工方法での工程設計までを行うことは現実的ではなかった。しかし、本研究グループが取り組んでいる自動工程設計では、対象の3DCADモデルのみを入力すれば、それぞれの加工方法での工程設計を自動で行うことができるため、得られた結果から定量的な判断基準によって適した加工方法を提案して、生産性を向上することができる。加工する形状、素材および必要とする量とそれらを生産するための加工方法の関係を理論的に明らかにできるかという学術的“問い”に取り組んでいる。
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図7 形状の複雑度、材料の加工難易度および加工する数量と加工方法の関係の解明
さらに、最適な加工方法を提示し、その加工の段取りを完全に自動化できるかという課題にも取り組んでいる。図7に示すように対象とする加工方法をミーリング加工、旋削加工、鋳造加工・射出成形加工を含む金型による加工、AM加工に大別し、形状の複雑度、材料の加工難易度および加工する数量の関係を明らかにする。ワークの形状の複雑度と加工する数量からは、図7(a)のようにどの加工が適しているかがおおよそ判断できる。しかし、材料の加工難易度を変数に加えた場合、どの加工方法を選定すべきかといった客観的な判断基準が、図7(b)のようにないのが現状である。
そこで、所望の3D形状を各加工方法で加工するための加工プログラムを自動で生成するための自動工程設計システムを構築し、生成される加工プログラムから算出可能な加工時間を求め、使用する機械のマシンチャージ、工具などの情報から製品一つあたりの加工コストを算出する。このように同じ形状のものであっても、すべての加工方法に対する客観的な指標である加工コストを自動で算出することで、どの加工方法が最も生産性が高いかを判断することができる。
生産形態の変化に対応
従来のような大量生産が主流であった生産形態では、工程設計に要する時間や労力が全体に占める割合は小さく、無視されていたものであった。しかしながら、多品種少量生産やさらにはカスタマイズ生産を大量生産と同等のコストと効率で行うことを目指している「マスカスタマイゼーション」へと生産形態が移行していく中においては、工程設計に要する時間や労力の割合は非常に大きくなり、これまでのような人に依存したやり方では持続可能な産業化の実現は困難である。
デジタル技術を駆使した新しい自動工程設計の実現への取り組みはまだ始まったばかりであり、今後の進展が期待される。