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MC・NC工作機械特集
複数の加工を融合して自動工程設計
本研究グループでは、単純にミーリング加工のみで有機的形状を行うだけでなく、旋削加工と融合した工程設計を行うことで、加工効率向上の取り組みを行っている。有機的形状の加工においてミーリング加工のみで荒加工および仕上げ加工を行う場合、荒加工に時間を要する場合が多い。
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図5 STL形式のCADモデルから旋削加工用モデルの抽出
例えば、最大直径サイズが約20ミリメートル程度の歯科補てつ物を加工する場合、それをミーリング加工で加工する装置は、主軸と回転テーブルとの干渉を考慮すると、小型である場合が多い。小型の工作機械は主軸のトルクが小さいために小径の工具を使うことが求められる。そのため荒加工において、単位時間あたりの除去体積には限界があり、時間を要する。そこで、比較的小型な装置でも単位時間あたりの除去体積が大きい旋削加工によって荒加工を行うことを考える。ここで、有機的形状の製品のCADモデルから旋削加工の領域を定義する必要があるが、対象のCADモデルは三角メッシュの集合で表現されているため、図5に示すように製品のCADモデルのXY平面においてZ軸に沿って微小間隔でモデルを切断したときに得られる外形線の情報から、その外形線を包含する円を分割平面ごとに求めることで、荒加工のための旋削加工の形状を抽出することができる。ただし、旋削加工によって除去した領域に、後工程であるミーリング加工での工具が進入する場合は空転(エアカット)となるため、そのまま加工すると加工時間に無駄が生じる。
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図6 3次元空間での格子点による材料有無の判定およびエアカットをスキップする工具経路
そこで、図6に示すように被削材形状を初期の状態として、そこから除去した領域を離散的に把握するような切削シミュレーションを構築している。
3次元座標空間に指示した解析分解能での格子点に二値化した情報(材料の有無)を保持する。初期の被削材形状に包含されている格子点をセットして、算出した工具位置と工具形状から、工具に包含される格子点を求め、その情報を変化させる。
旋削加工によって除去された領域を保持してミーリング加工の解析を行い、各工具位置に対して工具の内部に存在する格子点がすべて除去済みとなっている場合には、エアカットとしてその位置をスキップした工具経路に修正することで、旋削加工とミーリング加工を融合した高効率な加工を実現する。ここでの処理においても、膨大な繰り返し処理を行う必要があるが、GPUを用いた並列演算処理により数分で解析を行うことができる。