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次世代メンテナンス技術
データに基づく効果的・効率的メンテナンスの実現に向けて
【執筆】 早稲田大学 名誉教授 髙田 祥三
データに基づく効果的・効率的メンテナンス実現の第一歩は、継続的改善を可能にするメンテナンスマネジメントの各段階で、必要となるデータを特定することである。
メンテの枠組み明確化カギ
メンテナンスの役割は設備の稼働率向上や長寿命化などで、設備ライフサイクルを通じた創出価値を最大化することだ。既存のインフラ施設や生産設備が高年齢化する一方、労働力不足対策として自動化設備の導入が加速し、メンテナンスの負荷は増大している。そうした状況下では、設備の安全性や効率性を担保していくために、効果的・効率的メンテナンスの実現が喫緊の課題となっている。
こうした中、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)などのデジタル技術の発展に伴い、経験依存のメンテナンスからデータに基づいた合理的メンテナンスへの移行が期待されている。データに基づくメンテナンスは、その目的によって4段階に整理できる。第1段階は記述的(descriptive)メンテナンス。過去の劣化・故障などの記録から何が起こったのかを明らかにする。第2段階は診断的(diagnostic)メンテナンス。なぜそれが起きたのかを特定する。第3段階は予測的(predictive)メンテナンス。過去のデータを基に将来を予測する。そして、第4段階の処方的(prescriptive)メンテナンスで、予測結果に基づき最適な行動を提案する。
技術的にはAIの活用により第4段階の処方的メンテナンスの実現も可能になってきている。しかし、実践面では第1段階や第2段階でさえ実現できているところは必ずしも多くない。その理由の一つは、データ活用の目的を明確にしないままデータ収集を始めることにある。そうした状況に陥らないためには、図に示すようなライフサイクルを通じたメンテナンスマネジメントのフレームワークを明確にすることが必要だ。設備に発生すると予測される劣化・故障ごとにメンテナンス方式を決定し実施。ただし、実際には予測通りにいかないことがあるので、実データを基に予測を修正し、メンテナンスの精度を向上するというライフサイクルを通じた改善のループが必要になる。
ライフサイクルメンテナンスにおける個々の活動で必要になるデータや知識を整理した上で、それらを集積し、はじめてデータに基づく合理的なメンテナンスが可能になる。
