-
業種・地域から探す
続きの記事
次世代メンテナンス技術
埋設物損傷事故ゼロに向けて進化した革新的電磁波レーダー技術
【執筆】 KEYTEC 社長 岩田 和彦
従来の電磁波レーダー技術では検知しきれなかった鉄筋直下や密集配筋奥の埋設物や浮き、コンクリート厚、背面空洞などを検知可能な新たな技術を紹介する。この革新的技術を活用することにより、特に従来は防げなかった埋設管の損傷事故を防止する効果が期待される。
埋設管の損傷事故防ぐ
-
-
小型アンテナと端末の連携で行う高精度探査
マイクロ波を応用したコンクリート内部探査用電磁波レーダーが約40年前に誕生して以降、技術開発による性能の向上に伴い、耐震改修や設備更新工事における埋設物の損傷事故は減少傾向にある。しかし、原子力関連や防衛施設、道路、橋梁、鉄道、通信施設などの重要なインフラ管理を担う現場から要求される「事故ゼロ」が達成されていないのが現状だ。
事故発生事例の内容を追求すると、損傷した埋設物は鉄筋直下や密集配筋の奥にあるケースがほとんどだと判明した。従来の電磁波レーダーは、主に鉄筋の位置と深さを正確に探査することを目的として開発されており、アンテナから輻射(ふくしゃ)される電波の偏波面は手前の鉄筋に反射しやすくなるように設計している。
その結果、鉄筋の奥に電波が入り込む余地が必然的に少なくなり、埋設物の反応を捉えきれず事故が発生していた。そこで、新たな技術として従来設計の偏波面を90度回転させ、手前の鉄筋の電波の反射影響を低減させる「クロススキャン」を開発し採用した(図)。
単純に偏波面を回転させるだけでなく、アンテナのフィルター特性やSN比(信号雑音比)の改善をさらに飛躍させ、多重反射やノイズを極小化することで、鉄筋直下や密集配筋奥の埋設物の検知能力が圧倒的に向上した(写真)。
また、従前の製品開発で培った共通プラットフォームを応用し進化させることで、開発期間の短縮と同時に開発費用の低減にも成功した。
「クロススキャン」の技術を搭載する最新の装置として、小型無線アンテナ「NX25」「NX15」を任意のスマートフォンやタブレット端末で操作可能な「シンプルNX25」「シンプルNX15」が開発された。価格は一般的に市場に普及している電磁波レーダーの約半分であり、コスト面にも優れる。
既に「Flex NX」と小型無線アンテナをセットで導入したユーザーには無償でバージョンアップが可能となっており、マルチなユーザーインターフェース(UI)に進化する。同技術が広く活用されることで多くの現場で「事故ゼロ」が達成されることを期待したい。
