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中部の工作機械産業
2026年の工作機械市場は底堅い需要に支えられ回復傾向が続きそうだ。日本工作機械工業会(日工会)の調べによると25年の工作機械の受注総額(速報値)は1兆6039億1600万円となり、3年ぶりにプラスに転じた。26年は、それを上回る1兆7000億円と見通す。そうした中、中部の大手工作機械メーカーは製造現場で深刻化する人手不足に対するソリューションを提供し、需要をつかもうとしている。
現場課題の解決に向け、新製品開発進む
中部の大手工作機械メーカーが、自動化・省人化機能などと組み合わせた工作機械を投入する一方、中堅・中小メーカーではより取り入れやすいシステムで販路を広げる。蓄積した技術を活用し、工程ごとの作業短縮や人手不足解消に貢献する。
把握力35%増、生産性に貢献
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コストを約3割下げた「H3KTA」
豊和工業は現場の課題解決につながる旋盤用チャックの開発に力を入れる。新製品の「H3BP」は加工対象物(ワーク)の把握力を同社従来品より35%高めた3爪中空パワーチャック。ラインアップは外径10インチのみで把握力は150キロニュートン。同12インチの同社従来品を超える把握力で、重切削性が高まり生産性向上につながる。このほかくさび形3爪中空チャック「H3KTA」や爪交換容易な「H018MA」などもラインアップする。同社はこれまで人手だよりだった作業を自動化することでコストを大幅に削減。チャックの価格低減を実現している。
このほか、近年ニーズの高い変種変量生産に対応する自動化システムの提案も強化する。主軸30番の横型マシニングセンター(MC)「HMP-350HC1」はモジュールの追加で多様なワークや仕様に対応できる。自動パレット交換装置(APC)を組み合わせれば、少量多品種生産でも自動化を実現できる。
フィルター交換などメンテナンス費削減
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1マイクロメートルの微細なスラッジを濾過して回収できる「高精度フィルター装置搭載クーラントユニット」
白山機工(石川県白山市)は金属加工で生じる切りくずを搬送するチップコンベヤーにおいて40年以上の実績を持つ。オーダーメードで製作し細かな要望に対応するため、顧客の信頼も厚い。近年は丸みを帯びた近未来デザインのコンセプトモデル「スマートチップコンベヤ」を開発。遠隔でのプログラム変更や状況監視が可能とのことで注目を集めている。
クーラントユニットにも注力する。最新モデルの「高精度フィルター装置搭載クーラントユニット」は研削加工などで排出される1マイクロメートル相当の微細なスラッジを濾過して回収できるほか、フィルター交換などにかかるメンテナンスコストの削減にも寄与する。
装置内に送られたクーラント液は内部で水位を上下させながらフィルターメッシュで濾過される。フィルターに付着したスラッジは水流などで剥がされて装置の下部に沈殿。たまったスラッジは定期的に自動で排出されるため、タンク清掃の手間を省ける。
加工データ一元管理
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直感的に操作できるUIを採用
ゴードーソリューション(浜松市中央区)は、CAD図面や加工プログラムなど現場に必要なデジタルデータを一元管理できるソフトウエア「NAZCA5 GEMBACO(ナスカ5ゲンバコ)」を発売した。既存のデータ管理用ソフトを刷新し、米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の標準機能「エクスプローラー」に近い操作感に変更。パソコンやシステムに不慣れでも直感的に操作できるユーザーインターフェース(UI)を採用した。価格は10ユーザー分のライセンスが付く基本パッケージが59万8000円(消費税抜き)、以降は10万円(同)で10ユーザーずつ追加可能。初年度の加入が必須の保守・サポートが5万9800円(同)。新たに通信ソフトと連携し、登録済みの数値制御(NC)プログラムを工作機械と送受信できる機能を追加した。ドラッグ&ドロップの操作によるデータ登録や階層ツリーと属性タブを使った検索、最新版のデータを表示する版管理機能を備える。
環境対応支えるエアフィルター
前田シェルサービス(愛知県岡崎市)は工業用フィルターが主力。工作機械向けにさまざまな製品をラインアップする。主軸冷却用エアのフィルター「3in1・エコ×ドライフィルター」は、最大流量は毎分1500リットル。従来機に比べて圧力損失を59%低減し、電力損失も抑えた。「マグキャッチフィルター」はクーラント液など機械加工で使用した液体に含まれる微鉄粉を簡単に強力に除去できる。
このほか、ショックレスハンマーや、エア漏れや水漏れを起こした配管の補修材「リークブロック」など多彩な製品でモノづくり現場を支えている。
工具寿命2倍のシリーズ展開
シー・ケィ・ケー(愛知県半田市)の超硬切削工具シリーズ「LDera(エルディラ)」は超硬合金に微量の他元素を加えるレーザードーピング(LD)を施すことで、材料の強度や耐摩耗性を向上する。
第1弾の「ロールタップ下穴用ドリル」は、工具先端に切りくずの詰まりを防ぐ独自設計を採用し、表面処理には耐熱性に優れた専用のコーティングを施した。LDと同社のノウハウを組み合わせることで、大幅な長寿命化を実現した。
同社によると一般的な超硬ドリルと比較し、切削距離は約2倍だという。工具の交換頻度が減少することで、機械の稼働時間を増やし生産性の向上にも貢献する。機械部品関連に加え、自動車産業での導入も目指す。
工具へのLDは同社が名古屋工業大学と共同開発した技術。協働ロボットを用いて自動でLDを施す生産ラインを構築し、量産化を実現した。
長尺NC加工機拡充
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熱変位の影響を補正する機能を備える
サワイリエンジニアリング(静岡県菊川市)は長尺ワーク向けNC加工機「SWS」シリーズの「同11000-30ATC」を1台納入し、別の引き合いもある。主な想定用途は長尺のアルミニウム押し出し材の穴開け。ワークの最大寸法は長さが10・5メートル、幅と高さが40センチメートル。特徴はX・Y・Z各軸が実際に移動した位置を測り、制御装置にフィードバックし熱変位の影響を補正する「スケールフィードバック」機能の搭載。これだけの長尺対応機で同機能を搭載している機種は珍しいという。
ワークのクランプ機構は20台。主軸回転数は最大毎分1万5000回転、工具を30本収納する自動工具交換装置(ATC)を搭載する。同シリーズとして初採用の内蔵チップコンベヤーやワークが90度回転する装置で、一部作業を自動化できる。加工精度を高める複数の機能も用意。主軸は中心を突き抜け、工具の先から最大7メガパスカル(メガは100万)の圧力で切削液を噴射するセンタースルー仕様で、冷却と切りくずの排出を効率化できる。
段階的なDXに対応
キタムラ機械(富山県高岡市)は「Machining Challenges―simplified」をスローガンに掲げ、導入後でも最新バージョンへのアップグレードが可能な独自のコンピューター数値制御(CNC)装置「Arumatik-Mi」を搭載したMCで製造現場のDX推進に貢献する。これに加え、欧州を中心に重要性が高まっているサーキュラーエコノミー(循環経済)に基づいた戦略を進める。
ダウンサイジングや耐久性の向上、「Arumatik-Mi」のアップグレード、標準機導入後の用途に応じた多面パレットやATCなどの機能追加で、リデュース、リユース、リサイクル、リプレース、リペア、リパーパスを実現。現有する機械を流用し生産財として長く使い続けることで環境負荷の低減に貢献できる。
これは同時に顧客の投資負担を軽減し、工作機械の長期使用を可能にすることから、付加価値を最大化できる。また、標準機を導入して機械に使い慣れてもらい、必要になった際に多様な機能を追加でき、同社がコンセプトとして掲げる「失敗しない自動化投資」も実現する。
軽量・コンパクトな保護カバー
ナベル(三重県伊賀市)は、工作機械向け保護カバー「ダイアモンド・フレックス」の販売に力を入れている。
テレスコカバーよりコンパクトで軽量、高速動作に耐えられるなどの優位性を持つ。工作機械の動きと連動して伸縮し、切り粉や粉じん、切削油などの液体から機械を保護する。細長いステンレスの薄板を伸縮する特殊設計の樹脂部品で連結した鎧のような構造。
取り付けスペースが小さく、工作機械の小型化に貢献する。軽いため伸縮に必要な動力を抑えられ、モーターを小型化、省電力化できる。600万回以上の動作テストを実施し、防水性能の国際規格「IPX6」の試験より厳しい環境下でも不具合は出ていない。
ダイアモンド・フレックスは独メラーヴェルケ(ビーレフェルト市)が欧州で展開。国内ではナベルが独占的に製造・販売する。
