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中部の工作機械産業
2026年の工作機械市場は底堅い需要に支えられ回復傾向が続きそうだ。日本工作機械工業会(日工会)の調べによると25年の工作機械の受注総額(速報値)は1兆6039億1600万円となり、3年ぶりにプラスに転じた。26年は、それを上回る1兆7000億円と見通す。そうした中、中部の大手工作機械メーカーは製造現場で深刻化する人手不足に対するソリューションを提供し、需要をつかもうとしている。
中部の主要工作機械メーカートップが語る26年の戦略② ジェイテクト/中村留精密工業
ジェイテクト 経営役員 工作機械・システム事業本部長 宮藤 賢士 氏/JIMTOFで大型研削盤披露 アフターサービス充実へ
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ジェイテクト 経営役員 工作機械・システム事業本部長 宮藤 賢士 氏
—工作機械の市場見通しは。
「半導体関連については、自動車業界で電気自動車(EV)投資が様子見状態となっており、そこの需要は控えめになっている。その一方で、日本や中国などでデータセンター用の半導体は増えているので、しっかり取り込んでいきたい。またハイブリッド車(HV)の生産増加に伴い、特に日本でエンジン系の投資も出てくる見通しだ」
—2026年に投入する新製品は。
「10月に開催される『第33回日本国際工作機械見本市』(JIMTOF2026)で、大型円筒研削盤の新型機『G5シリーズ』を披露し、受注を始める。大型機のモデルチェンジは8年ぶり。22年発売の小型機『G1シリーズ』、中型機『G3シリーズ』と合わせ、ワーク(加工対象物)サイズによりシリーズを揃えた」
—どんなニーズに応えますか。
「G5シリーズは最長2000ミリメートルのワークに対応する。鉄鋼、建設機械、産業機械のほか、大型化する車載電池の源泉工程で使われるローラーなどのニーズに応じる。大型機はワークの歪みや熱変位が課題となり、人が付いて作業をしないと精度が出にくい。G5シリーズは、そこを支援する新機能を搭載し、お客さまの自動化に貢献する」
—製品だけでなくアフターサービスも強化します。
「26年度は二つの新サービスを始める予定だ。一つはリモートケア。お客さまの機械と当社をつなぎ、オペレーターが遠隔で、お客さまの困りごとなどに対応する。もう一つはAI(人工知能)チャットボット。これまで対応しきれない部分があった、土日や海外からの問い合わせについても24時間応じられるようになる」
—エンジニアリングチェーンを3次元(3D)図面でつなぐ「デジタルものづくり」の進捗は。
「先行する電池設備では目標とするリードタイム30%短縮のめどがつき、研削盤での取り組みも始めている。26年度は工作機械までめどをつけたい。併せてジェイテクトマシンシステム(大阪府八尾市)などグループ会社への展開も進める。リードタイム50%短縮という次の目標もある。まだ自信を持ってできるとは言えないが、無駄というのは探せばある。どうやれば達成できるか立案中だ」
—グループ会社との連携を推進しています。
「当社グループにはコアコンピタンスが57以上あり、工作機械・システム事業で、そのうち半分ぐらいを占めている。お客さまの困りごとに対し、コアコンピタンス同士を臨機応変に素早く融合し、製品として具現化できることは強みだ。その融合を、もっと積極化するための仕掛けとして、工作機械・システム事業のグループ各社のトップ同士が交流する機会を増やしている。まずはトップが理解し、ベクトルを合わせることが大事だからだ。グループを、より一体化し、強靭化することで世の中の役に立つ製品を早く提案する」
中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏/顧客のメリット作り出す 業界こだわらず自動化に対応
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中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏
—2025年は米トランプ政権の高関税政策など変化の大きな1年でした。どのように対応しましたか。
「中村留としての価値を作り出すことに力を入れた1年だった。価値とはお客さまが『納期が短縮できた』『段取りが減った』といったことだ。米国は関税率が決まるまでお客さまが不安要因として捉えていた。決まってからは比較的好調を維持している。複雑な加工対象物(ワーク)に対応できる複合加工機の上位機種の販売が伸びている。国内も自動車業界でギア加工など複合加工機の技術を取り込もうという動きが出てきている。市場環境は厳しいものの、追い風の地域や分野があって結果として成長した1年だった」
—加工現場のニーズが多様化する中、どんな製品を市場に投入してきましたか。
「複合精密コンピューター数値制御(CNC)旋盤『NT-Flex』と『同+』はコンパクトながら加工能力が高く、段取り性も良い。1分間当たり最大1万回転でミーリング加工が可能。奥行きは1・38メートル。長尺ワークにも対応できる。対話型数値制御(NC)プログラミングソフトウエア『Protona』はGコード、Mコードを覚える必要がなく、複合加工の工程設計が簡単にできる。ロボットシステム『RoboSync TypeD』は多品種の自動化に対応するシステム。コンパクトで使い勝手もよい。チャック爪の交換などにも対応できる」
—26年の工作機械業界の展望と自社の対応は。
「自動化、複合化に対する需要が伸びていくのは間違いない。ここは確実に成長市場になってくる。中国、インドなどの工作機械メーカーは相当のスピードでレベルアップしてきている。そうした競合の機会が増えてくると思っているので、加工における難しい課題をお客さまと一緒になって解決していきたい。同時にスピードと品質を両立するために、会社全体がチームとなって取り組んでいけるようにしていきたい」
—技術・製品開発の方向性をどのように考えていますか。
「現場の負担を軽減するという考え方は外さない。工作機械、ソフトウエア、自動化を軸に難易度が高いことをやっていく。その中で当社でしか提供できないような価値にこだわっていきたい。どうやったら新しいものが作れてお客さまの現場に役立つのかという前提で取り組んでいく」
—近年は現場向けソリューション事業にも力を入れています。
「製造ソリューション事業の『Bridg3事業部』では自動化とIoT(モノのインターネット)を融合して提案している。工作機械や工具の破損・予兆検知ソリューション『Dr.Tool』や『RoboSync』は他社製工作機械にも装着できる。旋盤だけでなくマシニングセンターなどにも取り付けられる。最近では食品や物流などの業界から自動化の問い合わせが増えている。業界にこだわらず、現場の課題を見つけて一緒に解決していこうという姿勢でやっていきたい」
