-
業種・地域から探す
続きの記事
連携特集2025 “京創力”
スタートアップで賑わう 京都で若年層の機運醸成
京都はグローバル企業や中小企業、スタートアップ、大学など多彩なプレーヤーが共創し、社会課題を解決するイノベーションを生み、産業競争力を高めてきた。さらなる発展には次世代を担う産業の創造や、人材の育成が欠かせない。産学官金の連携で京都産業を創り上げてきた“京創力”をますます高め、次代を切り開く。
-
IVSユースのピッチコンテスト
国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」が2023年、24年に引き続き今夏も京都で開かれた。島川敏明IVS代表(ヘッドラインジャパン代表取締役)が「京都は1万人規模が集まるアクセスとキャパシティーを持つ都市」と説明するように、国内外のスタートアップや投資家、次世代を担う学生が京都に集い、にぎわいを見せた。
IVSの特別イベント「IVSユース」のピッチコンテストでは、学生による国際報道メディアやインフルエンサーへの学びの機会提供、“推し”のVチューバー(バーチャルユーチューバー)先生と楽しく勉強できるアプリなど、中高生13人がそれぞれ事業への情熱を思い思いに語った。島川代表は「起業を小中高校生の将来の選択肢の一つに」と開催の狙いを話しており、スタートアップの裾野を若年層に広げ、ユニコーン企業の誕生を加速する。
IVS参加者が自由に企画・開催するサイドイベントも盛り上がった。松井孝治京都市長が特徴的と紹介するのが、京都市と日本IBMが取り組んだスタートアップ支援プログラムの成果発表だ。観光や伝統産業、環境など、市が抱える地域課題に対するスタートアップならではの解決策が示された。
成果報告した5社のうちアナクロ(東京都港区)は放置林を再生して文化財改修に使えるよう、森林資源を「金融資産」として再定義する仕組みを披露した。松井市長は「成果を吸収して京都の将来に役立てたい」と述べ、スタートアップの力を京都の成長につなげると誓った。
産学連携で企業の課題解決
-
RINC MIXでは軽食を楽しみながら、自由に交流する
立命館大学は2024年10月、企業が抱える課題を学生との共創で解決する会員制組織「RINC」を始動した。企業と大学の関わりは共同研究や採用活動が一般的だが、RINCを運営する社会共創推進本部の三宅雅人本部長は「他大学にはないコンセプトの取り組み」と強調する。
商品の共同開発、持続可能な開発目標(SDGs)達成へのアイデア出し、ブロック玩具のレゴで再現した製品を展示会に出展—。
RINCの取り組み内容は多岐にわたるが、社会共創推進本部が全学組織であることが大きい。同大学の16学部やサークルなどから企業の課題に合わせて参画メンバーを募れる上、授業内や課外活動など、プロジェクト形態も柔軟に設定可能だ。RINCの評判はじわじわ広がり、すでに参画企業・自治体数は25に及ぶ。
RINCはネットワーキングイベント「RINC MIX」を毎月開催し、RINC会員は活動に興味を持つ非会員企業を、同イベントに招待できる。同イベントは多くの参加者で毎月にぎわっており、RINCのさらなる広がりを予見させる。
KRPフェス2025
京都リサーチパーク(KRP)はイノベーションの祭典「KRPフェス2025」を4日までの5日間、開催した。基調講演にノーベル化学賞受賞者の吉野彰旭化成名誉フェローが登壇。夏休み期間ということで、子どもの科学への関心を育むイベントも開かれた。
立命館大学副学長兼社会共創推進本部長 三宅 雅人 氏/企業・学生、本気で社会共創
-
立命館大学副学長兼社会共創推進本部長 三宅 雅人 氏
—RINCの取り組みの特徴は。
「企業からは、共同研究やリクルーティングでは接点がなかった部署の方々にも参加してもらっている。社会共創推進本部が窓口となり、企業の課題内容に応じ、必要なところにコンタクトしてつないでいく。それを可能とするため、当本部にはさまざまな部門の職員に兼務してもらい、協力を仰ぎやすい状態を作っている」
—24年12月、RINCに興味がある学生の団体『SEEDS MEMBER』の活動が始まりました。
「企業と直接ディスカッションができるなど、学生のメリットは大きい。企業は本気でプロジェクトに取り組み、学生にも本気度を求めており、それを理解した人だけがメンバーになれる。このほか、参加プロジェクトや学年、学部、キャンパスが違っても志が同じ学生同士でつながる場を提供するという狙いもある」
—学生に身につけて欲しい能力は。
「社会に出ると常識や価値観、バックグラウンドが異なる人たちと仕事する。仕事の進め方を学び、自身の能力や得意・不得意などを知ってもらいたい。大学の授業には一定の『解』があるが、企業は『解』がないからこそ困っている。RINCには企業が今解決しなければならない新鮮過ぎる“ネタ”を持ってきてもらえる。解決策は自身の専門分野や常識とは異なる発想で生み出さないといけないかもしれないが、そのやり方を実際に学んでほしい」
