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埼玉県川口市
川口のモノづくり/次代担うリーダーに聞く
鋳物や機械、木型などモノづくりの街として発展してきた川口市。しかし担い手不足や企業数の減少など、地域産業を取り巻く環境は大きく変化している。こうした中、業界団体の若手経営者らが研究会などの活動を通じて横のつながりを広げ、学び合いながら地域の技術と自社事業を次世代へつなごうとしている。企業同士の交流は新たな仕事や連携を生み出し、人材確保や産業理解の促進にもつながる可能性がある。各団体の若手リーダーに、活動の狙いやモノづくりの現状、将来への思いを聞いた。
川口鋳物工業協同組合・川口鋳物工業企業研究会 特別幹事 伊藤 暢宏 氏(伊藤鉄工社長)/異業種含めた人脈が財産
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川口鋳物工業協同組合・川口鋳物工業企業研究会 特別幹事 伊藤 暢宏 氏(伊藤鉄工社長)
川口鋳物工業企業研究会の特別幹事を務めています。この研究会には鋳造メーカーだけでなく、原材料や資材を扱う賛助会員も含め約40社が所属しています。異業種を含めた人脈はかけがえのない財産です。
会員同士でも相手の会社のことをよく知らない場合があります。そこで相互理解を深めるため、プレゼンテーションで自社を紹介しあう場を設けました。他社を知ることで新たなつながりが生まれ、仕事を融通したり、困っている企業を紹介して新しい案件につなげたりすることも可能です。これまで断らざるを得なかった案件も、仲間を通じて対応できるようになりました。
会員数が減少する中、できるだけ多くの団体と連携することも重要です。木型や機械など異分野の会社でも根底にあるのは「モノづくり」です。モノづくりの共同団体として研究会が活動すれば、地域の枠を超え多様な業種と知り合えるようになるでしょう。
一方、私は主に建築施設向けの排水継手やマンホール等を製造する伊藤鉄工(川口市)の社長も務めています。小ロット・短納期・高品質を徹底し、自社ブランド持つメーカーとして事業を進めています。研究会を通じて得た人脈や他メーカーからOEM(相手先ブランド生産)の相談を受ける機会も増え、現在では売り上げの一割弱を占めるまでになりました。こうして生まれたつながりが、会員の事業や地域経済を支える力になればよいと思っています。
川口新郷工業団地協同組合・ものづくり企業研究会 会長 石川 豪一 氏(石川金属機工営業部次長)/多彩な研修で知見高める
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川口新郷工業団地協同組合・ものづくり企業研究会 会長 石川 豪一 氏(石川金属機工営業部次長)
2024年6月から、ものづくり企業研究会の会長を務めています。川口新郷工業団地内の企業の有志で組織しており、現在の会員は14人です。1988年に青年研究会として発足し、18年に現在の名称に変更しました。私が第13代の会長となります。会員相互の親睦を深めるとともに、さまざまな事業などを通じて資質の向上や啓発を図り、組合や組合員の発展に寄与することを活動の目的にしています。
通常総会と年4回の幹事会のほか、視察旅行や研修会を毎年開催しています。25年9月には大阪への視察研修を実施。大阪・関西万博の見学などを通じて、新技術や活気あふれる大阪の経済活動を体験してきました。また研修会は毎年2月ごろに開き、マナー研修やDX関連など多彩なテーマで外部から講師を招いて会員の知見を高めています。
川口市の若手企業家の青年団体との交流も活発に行っています。講演会やボウリング大会など、川口青年経済人連絡協議会が主催する事業への参加を通じて、川口鋳物工業協同組合や川口機械工業協同組合、川口木型工業協同組合の若手とも連携を深めています。
研究会は組合員の企業の従業員であれば加入できます。加入希望者を積極的に募って会員をさらに増やしたいと考えています。今後も若手の発想力と行動力を生かして、川口市や川口新郷工業団地の発展に尽力していきます。
川口機械工業協同組合・川口機械工業企業研究会 代表幹事 阿部 嵩 氏(アベ社長)/互いに切磋琢磨できる場に
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川口機械工業協同組合・川口機械工業企業研究会 代表幹事 阿部 嵩 氏(アベ社長)
2025年12月から川口機械工業企業研究会の代表幹事を務めています。同研究会には、金属加工業や関連企業を担う若手経営者を中心に31社が加盟しています。金属加工業は日本経済を下支えする重要な産業ですが、金属や重量物を扱う現場では日々の業務に追われ視野が内向きになりがちな面があるのも事実。そうした中で、経営上の悩みや課題を共有し、仲間や先輩経営者の経験から学びながら互いに切磋琢磨できる場を作ることが、研究会の目的です。
定期的に勉強会を開催しています。テーマはデジタル活用から、直接業務には関係しない麻雀まで幅広く、肩肘を張らずに集まり語り合える雰囲気を大切にしていますね。また、川口市の「たたら祭り」にも参加し、蕎麦を粉から練って茹で販売する恒例行事を続けています。一般の来場者に活動を知ってもらい、川口の製造業や企業への理解を深めてもらうとともに、人手不足が続く中で業界に関心を持ってもらう機会になってほしいですね。
私自身は、機械工具の販売や設置、試運転、修理を手がけるアベ(川口市)の社長も務めています。顧客から部品の調達や加工方法について相談を受けることも少なくありません。自社だけでは対応が難しい場合でも、研究会の仲間に相談することで仕事につながることがあります。こうした横のつながりは心強く、日々の仕事の質や対応力の向上にも直結していると感じますね。
川口木型工業協同組合・青年経営研究会 会長 加藤 志門 氏(加藤木型工業所専務)/地域の木型・鋳物産業守る
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川口木型工業協同組合・青年経営研究会 会長 加藤 志門 氏(加藤木型工業所専務)
川口木型工業協同組合の青年経営研究会で会長を務めています。研究会の正会員は今、私一人です。かつては20人ほど仲間がいましたが、同世代で後を継ぐ人がいなくなってしまいました。周囲の木型屋さんも跡継ぎ不在で、80歳を超えた方々が細々と続けているのが現状です。
私は高校卒業後、この世界に入って17年目。父が社長を務める加藤木型工業所(川口市)で勤務しています。周囲は「大変で儲からない」と後継を渋ることも多いですが、父は「これから良くなっていく」と言っていました。その言葉通り、熟練の職人が減る中、全国から「木型を作れるところがない」と仕事が集まっています。
木型の仕事は、紙一枚の図面から完成形を組み立てる難しさがあります。砂から型を引き抜く「抜け勾配」を計算し、鋳物屋さんが作業しやすいよう考えます。木は湿気で動く生き物なので梅雨時期の膨張にも気を配ります。苦労して作った型を納め、鋳物屋さんに「やりやすい」と言ってもらえる瞬間が何よりの喜びです。
8年前に3次元(3D)CADとマシニングセンター(MC)を導入しました。外注に頼っていた加工を内製化でき、売上は5期連続で増収しています。川口から鋳物の火を消したくないと強く思います。型がなければ鋳物は作れません。当社が事業を広げることが、地域の木型産業と鋳物産業の希望になればと考えています。
