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発明の日
知財教育と人材育成
日本が「知的財産立国」を目指す上で必要となるのが、知財に通じた人材の育成だ。各産業界では技術開発だけでなく、事業戦略の策定など経営面においても、知財の活用が広まっている。特許出願をはじめとする実務に限らず、多面的かつグローバルな視点で、的確な知財マネジメントができる人材が求められている。知財の教育機関や関連団体では今、人材育成のための多様な教育プログラムを展開し、社会のニーズに応えようとしている。
国士舘大学/実務的授業を数多く用意
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杉浦准教授による授業の様子(国士舘大学提供)
国士舘大学大学院総合知的財産法学研究科の開設は2006年。以来20年にわたり、弁理士をはじめとする170人を超える知財人材を輩出してきた。留学生も多く学び、中には母国の中国で知財専門の弁護士として活躍する修了生もいる。
一方で教授陣の顔ぶれも多彩だ。特許庁や企業の知財部出身者、現役の弁理士など、知財の実務現場を熟知する教員がきめ細かに指導。産業財産4法はもちろん、営業秘密がテーマであれば不正競争防止法、コンテンツビジネスに興味があれば著作権法と、一人ひとりの興味関心に応じた幅広い専門分野を学べる環境がある。
また海外出身の実務家教員も教壇に立ち、アジア圏の知財を巡る最新動向などをいち早く紹介している。「現場に出てすぐに即戦力となれるよう、実務的な授業を数多く用意しているのが特徴の一つ」。自身も弁理士である杉浦拓真准教授はそう胸を張る。
とりわけ夏期に1―2週間の実地業務を行う「エクスターンシップ」は、特色ある制度だ。学生は、教員が所属する特許事務所などで出願書類の作成や出願手続き、先行調査といった実務を経験する。さらに研修後は、その成果を大学院生と法学部生が集う9月の「知財アカデミー合宿」で報告する。研修に参加した学生にとっては、自身の経験を言語化してアウトプットする機会になると同時に、これから大学院を目指す学部生にとっても知的な刺激を受ける場となっている。
同研究科では近年、輩出してきた人材のネットワークが「交流会」として一つの形になりつつある。ここで学生たちは、特許事務所や企業の知財部などで働く修了生のリアルな声にふれる中で、将来のビジョンやロールモデルを描いていく。杉浦准教授は「育ててきた人材は、やはり本学にとっての大きな財産」と目を細めた。
今後は知財を取り巻く社会の変化にも柔軟に対応しながら、さらなる学びの拡充に向けて研究科改革を進めていくという。
大阪工業大学/全学で取り組む知財教育
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長谷川ゼミで開発したジェラートを大学祭で販売(大阪工業大学提供)
大阪工業大学知的財産学部と専門職大学院知的財産研究科は、学部や大学の垣根を越えた知財教育の普及を図る。取り組みの一つとして、2026年度から技術者を志す工学部生を対象とした講義を開講。技術職に最低限必要な知財スキルの習得を目指す。情報科学部とロボティクス&デザイン工学部の学生も聴講できるなど学びの門戸を開く。将来的には学部を問わず一定の知財スキルを身につけられるような仕組みを構築していく。
さらに学外での知財周知活動として、同大学院はセミナーを不定期に開催している。誰でも参加可能。知財に興味を持ってもらうため、知財関連の注目トピックを題材にしている。講師は学外から専門家を招いているが、今後は同大学院の教員も登壇予定。教員による研究内容を発信する。セミナーの参加をきっかけに知財に興味を持った人は、同大学院が実施している公開授業や科目履修などでさらに学びを深めることができる。
同大学知的財産学部・大学院では社会で知財スキルを生かせる人材育成のため、実践的な学びを重視している。この学びの場としてゼミ活動がある。
𠮷田悦子准教授のゼミによる「医看工芸連携プロジェクト」は医療現場の気づきを製品化。昨年設立した「非営利活動法人 医看工芸」から、待望の第1号製品を販売する。また長谷川光一准教授のゼミでは製品開発マネジメントやブランディング戦略など、経営を実践的に学ぶ活動の一環として、大阪府産のみかんと「大阪工大監修はちみつ」を使用したジェラートを開発。大阪・関西万博のイタリア館前で販売した。このはちみつには血管のしなやかさを維持する作用が確認されており、特許出願済みである。ゼミ活動は実践的な経験を積むだけでなく、学生や学外の関係者にも知財の仕組みを知ってもらう機会となっている。
知財の世界を広げるため、これからも知財教育、周知活動に力を入れていく。
工業所有権協力センター/特許調査の専門職活躍
知財の専門職と聞くとまず弁理士が浮かぶ。では特許情報検索の専門職・パテントリサーチャーをご存じだろうか。「ググる」という言葉が浸透した昨今、検索に安易なイメージを抱く向きもある。だが特許調査の世界では、高度な検索式を駆使して研究開発やビジネスの新領域へ導くパテントリサーチャーが、縁の下の力持ちとして活躍する。
例えば製品のリリース前の特許調査は、権利侵害を回避するために慎重を期す案件の一つ。近年の世界全体の特許出願総数は年間300万―350万件と、毎年膨大な数の特許文献が増えている。そんな特許情報の洪水をかき分けてパテントリサーチャーは検索技術を発揮し、あまたの文献や論文などをくまなく調べ尽くす。
「特許調査がAI(人工知能)の活用で簡単に解決すると考えるのは少し時期尚早かもしれない」。そう指摘するのは、特許審査に必要な先行技術の調査などを手がける工業所有権協力センター(IPCC)企画室の向山麻衣参事補。いまだ権利が発生していない特定の技術分野、いわば「特許の空き地」を現状のAIにすべてを委ねて導き出すのは難しいという。だからこそ、パテントリサーチャーによる特許調査の職人技が今も必要とされている。
弁理士とは異なり国家資格ではないパテントリサーチャーは、挑戦しやすい点も魅力だ。また特許情報検索スキルが必要となるのは企業の知財担当者だけとは限らない。エンジニアが習得すれば研究開発テーマの見極めや絞り込みにも生きるほか、キャリアアップにもつながるだろう。
そこでIPCCでは特許調査の実務能力を競う「特許検索競技大会」を毎年開催する。現在、大会は初心者向けと上級者向けの2種。上級者向けコースでは大会後の12月にスキルアップセミナーがあり、電気、機械、化学・医薬の分野ごとに解説する。今年の大会は9月5日に開催し、申し込みは6月を予定。セミナーのみの参加もできる。詳細はIPCC公式ホームページから。
特集「発明の日」読者プレゼント/読者5人
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価格・2200円(税込み)、出版社・技術評論社
工業所有権協力センター(IPCC)の書籍『技術の最前線を読み解く特許調査という仕事』が今月刊行された。特許調査の基礎からパテントリサーチャーのキャリアパス、実務現場、AIの活用まで幅広く紹介する特許調査の入門書。抽選で読者5人に同書をプレゼント。30日締め切り。応募は専用フォームから。
