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発明の日
知財創出―戦略的に活用
4月18日は「発明の日」。1885年の同日に現行特許法の前身である「専売特許条例」が公布されことに由来して制定された。特許をはじめとする産業財産権制度の内容は時代とともに変化してきた。日本の産業競争力を高めるためにも、知的財産(知財)の創出や保護、活用のあり方についてあらためて考えたい。
中小・スタートアップ向け伴走支援
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「知財経営支援ネットワークの更なる強化に向けたアクションプラン」署名式 -
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生成AI(人工知能)の台頭などで技術革新が加速する中、特許をはじめとする知的財産権を活用した経営戦略の必要性が増している。知財経営を促すには技術革新の担い手となるスタートアップ企業などへの支援や、知財を適切に保護しながら活用を促すための環境整備が求められる。
4者が連携
特許庁と工業所有権情報・研修館(INPIT)、日本弁理士会、日本商工会議所は23年、4者が連携しスタートアップや中小企業の知財経営を支援する「知財経営支援ネットワーク」を構築した。2024年には中小企業庁も連携枠組みに参画。知財取引の実態把握を進めるとともに、中小企業が抱える経営相談などに対して知財の観点からも効率的に支援することを目指す。
2月にはネットワークのさらなる強化に向けた「アクションプラン」を公表。地域における各支援窓口のつなぎ役だけでなく、より踏み込んだ経営支援や施策を展開する方針を打ち出した。知財に関する課題の解決から販路開拓まで包括的に対応し、企業の稼ぐ力の向上を後押しする。
人材育成
また、特許庁は24年度から「知的財産活用モデル創出支援事業」を展開する。知財を活用した地域活性化や企業成長に意欲的な自治体を重点地域に選定し、事業プロデューサーを派遣した上で支援チームを形成。地域の中小企業と経営支援者や自治体、支援機関が連携し事業戦略から販路開拓まで一気通貫で支援すると同時に、知財の活用・管理などを担う人材育成にもつなげる。
同年度に重点地域に選定された神戸市では特許情報を活用することで、スタートアップなどが提携先候補となる企業を探索できる仕組みを構築。共同プロジェクトや資金調達につながった事例も出てきている。
中小企業は日本企業の99%超を占める一方、24年の特許出願件数に占める中小企業の割合は16・0%にとどまる。成長投資や賃上げの原資として稼ぐ力の向上が求められる中、知財をはじめとする無形資産を創出し、戦略的に活用することがこれまで以上に重要になる。権利を取得するだけでなく、その知財をどうビジネスにつなげ、企業の戦略に生かしていくか。知財経営の定着に向けた伴走支援のニーズは、今後さらに高まるはずだ。
成長性高める
一方、知財は中小の収益力や成長性を高める重要な経営資源であり、不適切な取引慣行は是正する必要がある。公正取引委員会と中小企業庁、特許庁が行った中小企業の知的財産をめぐる大手企業の問題行為に関する調査では、知財権やノウハウ、データを保有する事業者の15・8%がNDA(秘密保持契約)の締結や重要データの開示要請などで納得できない取引条件を受け入れた経験を持つと回答した。
問題行為は独占禁止法の「優越的地位の乱用」などに当たる可能性があるとしている。政府は今回の調査を踏まえ、知財権などの取引適正化に向けた指針を6月下旬にも公表する予定だ。
同調査では25年9月に、91業種4万社を対象にアンケートを実施した。回答率は17・4%で、製造業と情報通信業が大半を占めた。うち54・8%の事業者が知財権やノウハウを保有するとしたが、その約半数が知財などの取り扱いを確認する担当者や外部専門家が不在と答えた。
調査では中小企業がNDAの締結を要請したものの拒否されたり、契約内容に盛り込まれていない設計図面の無償提供を求められたなどの実態が報告された。新たな指針では権利化されていないノウハウやデータなども含め考え方などを示すとしている。
【インタビュー】特許庁 長官 河西 康之 氏/「稼ぐ力」強化へ環境整備
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特許庁 長官 河西 康之 氏
―特許など産業財産権制度の役割をどう考えますか。
「2025年には600兆円を超える名目GDPとともに、賃上げの力強い動きが見られており、我が国は成長経済に移行できるか否かの分岐点にある。知的財産(知財)の適切な保護・活用促進を図ることで収益を上げ、それを投資し、イノベーションを引き起こす。そこから、さらに知財を起点に収益を上げるという好循環を作り、日本経済の『稼ぐ力』を強化できる環境を整備したい」
―中小企業の知財経営支援の枠組みを広げています。
「特許庁と中小企業庁、工業所有権情報・研修館(INPIT)、日本弁理士会、日本商工会議所の5者で『知財経営支援ネットワーク』を構築し、知財に関する課題解決からプロモーションまで包括的に支援することを目指す。2月には取り組み強化に向けたアクションプランを策定した。成長意欲の高い企業への重点支援や、組織の枠組みを超えた情報連携などを進め各機関の連携を強化する」
―今後の取り組みは。
「経営者が抱える課題に丁寧に対応できる体制整備が必要だ。具体的には工業所有権情報・研修館(INPIT)と中小企業庁の支援拠点の連携を強化し、知財と経営に関する課題に対応できる環境を整備する。中小の知財侵害に関する実態把握や、補助金など支援策の周知徹底にも取り組んでいく」
―AI(人工知能)の発展と知財制度の課題をどう考えますか。
「課題は大きく三つある。一つはAI関連技術の審査の予見性を高めることだ。特許庁ではAI関連技術に関する仮想の審査事例の発信に加え、全審査部門にAIの知見を持つ担当官を配置するなどで対応している。二つ目は、AIが発明に関わる場合の扱いだ。AIは発明者になれないとの国際的な共通理解をふまえつつ、AIが発明の創作的な部分の多くを担う際の発明者の特定や、AI生成情報の先行技術としての取り扱いなど対応すべき課題は多い」
「三つ目が特許審査を含む業務へのAI活用だ。米国、欧州との三極特許庁長官会合でAI利活用に関するビジョンの共同作成を提案し賛同を得た。特許庁としてもAIをどう活用していくか方向性を検討し、業務におけるAIの利活用の理念を示す『AIビジョン』を策定する。日米欧の三極特許庁で、AI活用について世界をリードしていきたい」
