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兵庫・神戸産業界
変化の鼓動“次代の扉”開く 大型投資や都心再整備に期待感
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阪神・淡路大震災30年事業として20日から神戸市立博物館で始まった「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」、テープカットに臨む久元喜造神戸市長(左から2番目)ら
阪神・淡路大震災から30年という節目の年も残り3カ月ほど。震災復興プロジェクトとして始まった「神戸医療産業都市構想」の一角を担う理化学研究所計算科学研究センター(R—CCS、神戸市中央区)では、量子コンピューターを設置するなどこのところ大型投資が相次いでいる。兵庫県の決算や神戸市内の地価など、神戸を取り巻く環境の良好な変化が客観的な数値でも見られるようになってきた。
スパコンと量子コンピューター連携/計算時間を圧倒的に短縮
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理研と日本IBMがR—CCSに設置した量子コンピューター「IBMクアンタム・システム・ツー」
理化学研究所と日本IBMは6月、R—CCSに量子コンピューター「IBMクアンタム・システム・ツー」を設置した。量子コンピューターと、同センターに既設のスーパーコンピューター「富岳」などのスパコンを高速ネットワーク化。26年始めにも連携プラットフォームの本格運用を始める。連携により計算領域の拡大を実証し、有効性を示していく狙いだ。
米国以外でIBMクアンタム・システム・ツーが稼働するのは、同センターが初めて。スパコンと量子コンピューターの連携は計算時間の圧倒的な短縮が見込めることから世界各国で検討されているが、クラウドを利用した形などが中心。R—CCSでは両実機が同じ敷地内にあるため、より低遅延な通信が可能になると期待されている。五神真理研理事長は、「世界最先端のマシン同士の結合が実現した。産学官一体のプラットフォームを提供していきたい」と意欲を示した。
レンタルラボに地元の期待も
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神戸のウオーターフロントにも再整備の兆し -
1万人規模を収容できる「ジーライオンアリーナ」
R—CCSの近隣では、三菱商事都市開発(東京都千代田区)がレンタルラボ施設を建設する。26年に着工し、27年11月に営業を始める計画。建設地を所有している神戸市が施設の整備・運営を公募し、三菱商事都市開発の提案を採択した。施設建設にあたり、両者で土地の売買契約を結んだ。売買価格は約10億円。施設の名称は「アイパーク神戸(仮称)」。三菱商事都市開発のほか、三菱商事とアイパークインスティチュート(神奈川県藤沢市)の計3者で整備と運営を行う。施設は鉄骨造8階建てで敷地面積約3035平方メートル、延べ床面積約1万2000平方メートル。同施設を神戸新交通ポートライナー計算科学センター駅と連絡デッキで直結する。神戸経済の活性につながる、スタートアップの創出や育成は喫緊の課題。企業が根付き、活動を行っていく受け皿となるレンタルラボ施設の立地には地元の期待も大きい。
企業や研究機関の大型投資などが神戸市内で活発に行われている。このような企業活動の影響は、兵庫県の財政にも表れている。兵庫県が8月に発表した2024年度一般会計の決算は、県税などによる歳入が前年度比5・7%増の9735億円で、県政始まって以来最高となった。株価上昇による譲渡所得の増加による個人県民税と、円安やインバウンド(訪日外国人)需要増加に伴う企業業績の好調による法人事業税の増加が要因となった。
歳入総額は同1・1%減の2兆3821億円、歳出総額は同0・6%減の2兆3683億円だった。好調な企業業績を背景にした法人関係税の増加により基準財政収入額が増えたことで、地方交付税などは同0・3%減の3882億円だった。地方財政法で決算余剰の2分の1を積むルールがある財政調整基金の24年度末残高は、前年度末から約18億円増の145億円になった。
そして9月発表の「令和7年兵庫県地価調査」でも、神戸市中心部の地価が上昇基調にあることがうかがえる。神戸市中央区三宮町1丁目7番5が前年比9・3%増の1平方メートルあたり765万円になるなど三宮駅周辺が2年連続で上昇した。4月の神戸空港の国際チャーター便就航や、駅前を含む広域的なエリアで都心再整備が進行中。その期待感から、稀少性の高い高度商業地を中心に地価の上昇傾向が強まっているとみられる。
三宮駅前の再開発事業に触発されてか、神戸市内では再開発の機運が各所で高まっている。2030年度前半を完成時期にする兵庫県庁(神戸市中央区)の建て替え計画が進む。今後の県政を担う若手が働きやすい職場作りを目指す。老朽化が進んでいる神戸市内最大規模の複合型商業施設「さんセンタープラザ」(同)が建て替えを検討する協議に入った。兵庫県庁のお膝元の元町地区でもJR元町駅や、同駅周辺の改修が検討されている。
誘客の視点で、神戸市はウオーターフロントや市内の大型施設の改修に乗り出した。4月に1万人を収容できる大型施設「ジーライオンアリーナ」が開業したのは、その一歩。さらに、神戸港の開港160年にあたる27年をめどに海軍操練所の遺構を展示する施設や休憩所を設置する計画を打ち出している。
ウオーターフロントから少し離れるが、三菱重工業神戸造船所(神戸市兵庫区)の近隣に位置するノエビアスタジアム(同)でも空調設備の改修と新たな空調設備の導入などが計画されている。スポーツのほか、コンサートなどで大規模な集客をしたい考えだ。
