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住宅産業
住宅産業の動向について
【執筆】 住宅生産団体連合会
住宅市場においては建築資材・エネルギー価格などの上昇による建築費の高騰や金利の上昇傾向など依然厳しい状況が続いている。住宅価格の上昇は、若者をはじめとした住宅取得の懸念材料となっており、さらに少子高齢化、単身化による孤独・孤立の課題なども注目されている。このように、これまでの潮流から大きく転換し、克服すべき時期に住宅産業がある中、最新の住宅産業の動向や住宅政策、住宅支援策について紹介する。
脱炭素社会への取り組み
今年4月に改正建築物省エネ法が施行され、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ、CN)実現に向け、省エネルギー目標達成への道筋がこれまで以上に明確にされた。省エネ基準の義務化が図られたものの、既存ストックにおける省エネ基準を満たす住宅は約2割と言われており、より高い省エネ性能実現に向けた建て替えやリフォームを、引き続き車の両輪として進めていく必要がある。
また、建築物の使用時だけではなく、建築物の計画から解体までのライフサイクル全体において排出される二酸化炭素(CO2)を含む環境負荷の算定と評価(建築物LCA)に関する制度検討が進められている。これにより、住宅分野においてもより幅広く省CO2に向けた取り組みが求められている。脱炭素社会への取り組みの推進に向けた政策が着実に実施され、わが国の住環境の向上につながっていくことが大いに期待されている。
省エネキャンペーン2025について
住宅市場は建築資材・エネルギー価格の上昇などによる建築費の高騰や金利の上昇傾向などにより厳しい状況が続いている。8月度の新設着工戸数は全体で6万275戸(前年同月比マイナス9・8%)、持ち家も1万7532戸(前年同月比マイナス10・6%)と、ともに5カ月連続の減少となった。また、季節調整済みの年率換算は71万1000戸と厳しい状況が続いている(図1・2)。
昨年の総合経済対策並びに24年度補正予算において、「子育てグリーン住宅支援事業」が措置され、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)水準を超える「GX志向型住宅」への補助の創設や、ZEH水準対応の裾野を拡大するために、賃貸住宅が新たに対象とされた。
さらに長期優良住宅、ZEH住宅に対する子育て世帯などへの支援や既存住宅の省エネリフォームへの支援も措置され、国土交通省、経済産業省、環境省の3省連携による「省エネキャンペーン2025」として継続が図られた。これらの施策は大きな力であり、住宅産業界としては、子育て世代などを中心に良質な住宅ストックの実現を後押しする政策として、積極的な周知・活用に努めている。
安全・安心への取り組み
近年、自然災害の激甚化・頻発化に加え、地震と豪雨が重なる複合災害の懸念も高まっており、安全・安心な住宅の供給は喫緊の課題となっている。災害対策として、耐震改修や浸水対策の技術開発と支援が求められている。特に高齢者が多い地域では、住民に耐震工事の必要性を丁寧に説明し、補助制度の活用を促すことも重要である。また、災害後の避難者向け応急仮設住宅の迅速な提供も不可欠であり、引き続き地方公共団体との連携を深め、日頃からの対策をしっかりと進めて行かなければならない。
住生活基本計画の見直し
住生活基本計画の見直しに向け、24年10月から本格的に議論が開始された。CN社会の実現、人口・世帯数の減少、単身世帯の増加などを踏まえ、50年にあるべき住生活の姿を見据えた議論が進められている。「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の三つの視点から、国・地方自治体・関連事業者が今後10年間に取り組む政策の方向性が検討されている。当連合会も今年5月の住宅宅地分科会で「新たな住生活基本計画に向けた政策提案」を発表し、「2050年のあるべき姿とその実現に向けた課題」として14の政策提案を行った。
26年3月には新しい計画が閣議決定される予定であり、住宅産業界も「住まいを支えるプレイヤー」として、これからもその議論に真摯(しんし)に取り組み、新しい住生活基本計画が目指す社会の実現に向け取り組みを進めて行きたいと考えている。
【ごあいさつ】 住宅生産団体連合会 会長 仲井 嘉浩/良質な住宅ストック 実現
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住宅生産団体連合会 会長 仲井 嘉浩
平素より住宅生産団体連合会(住団連)の活動にご支援を賜り、誠にありがとうございます。このたび、6月の理事会におきまして、当連合会の会長を拝命いたしました。よろしくお願い申し上げます。
国内経済に目を向けますと、やや持ち直しの兆しが見える一方で、依然として建築資材の価格や人件費の高騰による住宅価格の押し上げ、住宅ローン金利の上昇リスクなど、不透明な状況が続いています。こうした中、昨年度の補正予算で創設された「子育てグリーン住宅支援事業」は、子育て世帯の住宅取得を後押しし、住生活の質の向上につながる重要な政策であり、住宅産業界におきましても大きな期待が寄せられています。
今後、住宅産業界が担う大きな役割は、良質な住宅ストックの形成と循環型社会の実現に向けた取り組みです。わが国には省エネルギー基準、耐震基準を満たさないものがいまだに多数存在しています。今年4月から施行された新築住宅への省エネ基準適合の義務化、さらに建築基準法の改正により従来の「4号特例」の見直しが行われるなど、国も良質な住宅ストックに大きく舵を切っています。また良質な住宅ストックが多世代にわたり循環していくためには、それらが適切に維持管理され、また評価される住宅市場の整備に資する仕組みが必要です。これら課題への取り組みにつきましても、住団連は貢献していく所存です。
今年度末には「住生活基本計画」の改定が予定されています。今後10年間の住宅政策の方向性を定める重要な計画であり、国民の住生活の質の向上に向けた指針となるものです。当連合会におきましても、計画の取りまとめに向けた議論に継続して参画し、より実効性のある政策提案を行うべく努力を重ねてまいります。
引き続き会員団体・企業の皆さまと連携しながら、政策提言、制度改革、技術革新を通じて、持続可能な住宅産業の発展に尽力してまいります。皆さまのご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
