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兵庫県播磨地区産業界
兵庫県の播磨地域にはモノづくりやエネルギー関連、地場産業など多様な企業が集積し、独自の技術とアイデアを生かした取り組みで、変化の早い時代のニーズに対応する。人手不足が叫ばれる中、SDGsの活動を進めることで、あらゆる課題解決に挑んでいる。播磨地域の企業の取り組みを紹介する。
技磨き新たな時代を切り開く
姫路市長 清元秀泰 氏
本格的な「少子高齢化・人口減少時代」を迎え、市内中小企業においても人手不足や国内市場の縮小などの課題に直面していることから、生産性の向上や働き方改革、多様な人材の活用による人手不足への対応、国内外への販路拡大など、中小企業の経営力の強化を図る必要があると考えている。
本市においては、ITやデジタル変革(DX)の導入などによる生産性向上・業務効率化への取り組みを必要とする中小企業者を対象に、ITスキルの底上げやオンラインコンテンツの知識・技術習得を目的としたセミナーを開催するほか、企業の生産性の向上を図るため、業務の効率化につながるシステム導入に対する経費助成を実施している。
さらに、インターンシップなどのマッチング事業をはじめ、合同仕事体験事業や若年者雇用のための企業向けセミナーなどを実施しているほか、関係機関と連携し、高等学校の就職・進路指導担当者と企業の採用担当者との「高校と企業の懇談会」や大学などの卒業予定者や卒業者を対象とした「合同就職説明会」を開催している。
また県と連携し、従業員の奨学金返還負担軽減制度を設けている中小企業に対し支援するなど、労働力人口が減少していく中、多様な人材が活躍できるよう、地元企業の雇用支援に努めている。
市内の中小企業においては、こうした施策を活用し、DXなどの活用による生産性の向上や新産業創出への取り組みによる成長を期待したい。また中小企業経営者の高齢化が進む中で、優れた技術・技能の継承や、地域の雇用を確保するために、円滑な事業承継や後継者の育成のほか、地域経済に新たな活力をもたらす起業・創業の取り組みにも期待したい。
人口減少社会においても本市を含む播磨地域が生き残っていくためには、中小企業の経営力の強化や産業のイノベーションが不可欠である。本市は、引き続き企業の生産性の向上や新産業の創出を図る取り組みなどを支援していく。
姫路商工会議所会頭 齋木 俊治郎 氏
姫路市および周辺地域は重厚長大産業を軸とした約7兆5000億円の製造品出荷額を誇る「ものづくりのまち」であるとともに、世界文化遺産・姫路城の城下町として商業・観光のまちの顔を併せ持つ。現在はエネルギーや原材料価格等の高騰に加え、企業における人材不足は深刻で、建設業や運輸業は特に厳しい状況。人材確保においては、防衛的な賃上げを余儀なくされている中小企業も多く、経営環境は大変厳しい状況にある。
日本有数の「ものづくりのまち」である当地は、世界トップシェアを誇る企業や大手企業のサポーティングインダストリーとして成長してきた高い技術力を有する産業集積地である。鉄鋼や化学、電気、機械などの重工業が盛んで、近隣の播磨科学公園都市には世界最高性能の大型放射光施設などの研究施設も充実。「ものづくりのまち」としての魅力を国内外に広くアピールする必要がある。
ものづくり産業の発展に向けて「播磨圏域ものづくりプラットフォーム」の枠組みを活用し、地域・産業・技術の視点や産学官の幅広いリソースを取り入れ、新しい産業の創出や中小企業が活用できる技術の発掘などに取り組んでいく。エネルギー消費量が極めて大きい播磨臨海地域では今後、姫路港において海外からの水素等を受入れる環境の整備と臨海部での脱炭素化の計画が進む。瀬戸内・関西における水素等のサプライチェーン拠点として重要な役割が期待されている。
観光産業では2025年の大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭等の開催により、多くの外国人観光客等の訪問が期待される中で、宿泊施設等の受入環境を整えて確実に観光需要を獲得していく必要がある。万博後も神戸以西への誘客を図るべく、神戸・明石・加古川・高砂・姫路の計5商工会議所が連携した広域観光の取組みを推進する。また将来を担う若い世代の斬新な発想による魅力発信や新たな観光需要の創出等を目的に、姫路観光コンベンションビューローと連携して「ひめじ観光ビジネスコンテスト」に取り組んでいる。このコンテストを機に、当地へ目を向ける若者の数も増やしたい。
姫路信用金庫理事長 三宅 智章 氏
地域の事業者にとっては人手不足や物価高と次々とリスクが発生し、将来のさまざまな不安を感じながらも、培われた技術力や経営力により堅調さを維持されていると感じている。時代の変化は急速であり多様な局面を迎えていく中で、リスクを受け入れ前向きに行動し、チャンスを得ていくには、その変化に焦らずじっくりとした分析が重要だと感じる。今起こっている変化が一過性であるのか、恒常的なものであるのかを慎重に見極める事が大切だと感じている。
この分析や見極めは当金庫にとっても〝一丁目一番地〟の取り組みであり、当金庫では役職員に〝業務において根拠を探す習慣をつけよう〟と指示している。PDCA(Plan計画・Do実行・Check分析・Action改善)サイクルを徹底する事が持続可能性の向上につながると考える。
近年、担保・保証に依存しない融資ニーズが高まっているが、当地区での製造業を核とする地域の産業基盤を背景に、当金庫としては個々のお客さまの将来を見据えた一過性ではない〝事業性評価〟をビジネスモデルの中核に据える。この〝事業性評価〟とかつてのいわゆる〝信用貸し〟とをしっかりと峻別(しゅんべつ)しながら業務を進めていきたい。
当地区では地場産業も多様である。地域における良質な資産形成が金融機関と事業者、双方にとって欠かせない取り組みであり、その多様性を持つ中小企業においてはそれぞれに存在感・存在意義を高めていく事が持続可能性の向上につながると考えている。
当金庫としてもそういった多様性を持つ中小企業への〝事業性評価〟を生かした定性支援がSDGsのゴールへのロジックに合致すると考えている。本年度からの新たな経営計画にもSDGsとDXに向けた活動を盛り込んでおり、役職員一同強い信念を持ち、会員と一丸となって取り組んでいきたい。