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群馬産業特集
「TUMO Gunma」来夏開設
JR高崎駅東口から徒歩約15分に位置するコンベンションセンター「Gメッセ群馬」で今、デジタルクリエーティブ人材育成施設「TUMO Gunma」の整備が急ピッチで進んでいる。2025年夏に開設の予定。アジア初のTUMOセンターになる。
アジア初 8分野のプログラム
TUMOセンターは、アルメニアの若者たちに、自分たちの才能を伸ばす機会を提供することを目的として設立された。中高生に対し、世界レベルのデジタル技術や芸術に関するプログラムを無料で提供している。アルメニアのほか、パリやベルリンなどの世界主要10都市で運営されており、ロサンゼルスなどの7都市にも今後設置される予定だ。
具体的には、3次元(3D)モデリングやアニメーションなどの14分野で、それぞれ3段階のプログラムを用意している。オンラインでのセルフ・ラーニング、受講者同士が集まるワークショップ、大手IT企業の技術者らが講師となるラーニング・ラボを受講できる。
TUMO Gunmaには、3Dモデリング、アニメのほか、ゲーム開発、グラフィックデザイン、プログラミング、2次元(2D)コンピューターグラフィックス、モーショングラフィック、映像制作の計8分野のプログラムを導入する。
Gメッセ群馬の4階にフリーアクセスエリア、ワークショップルーム、デジタルサイネージ(電子看板)などを整備する。展望ラウンジには、TUMOの象徴である「TUMOBILE」(机といすを一体化した家具)を設置する。開館時間は未定だが、平日午後ー夜間、土日祝日午前ー夕方の予定で、中高生が放課後や休日に自由に出入りできるようにする。利用無料で、初年度に約9400人の利用を見込む。
TUMOセンターのマリー・ルー・パパジアン最高経営責任者(CEO)、ペゴール・パパジアン最高デジタル責任者(CDO)らが6月に来県し、フランチャイズ契約締結調印式を実施した。マリーCEOは共通ビジョンについて「若者に力を与え、無限の可能性を開花させる」と説明した。また、ペゴールCDOは「デジタルの将来に向けて、若い人たちの将来を変えていく旅路をともに歩んでいけることを楽しみにしている」と笑顔を見せた。山本一太県知事は「心躍る未来がここから始まる」と期待を寄せた。
県は22年に全国初のデジタルクリエーティブ人材育成施設「tsukurun」を前橋市に開設した。〝習うより慣れよう、学ぶより遊ぼう〟をコンセプトに、小中高生がアニメやゲームなどを題材にして3DCGや仮想現実(VR)などを体験できる環境を整えた。開館時間は月・水ー金曜日15-20時、土日祝日10-18時(火曜日・年末年始定休)だ。
初級・中級者向けメインルームのほか、高機能固定パソコンとプロ仕様のソフトウエアを導入した上級者向けPCルーム、モーションキャプチャーなどに対応するスタジオを用意している。11月末時点で、累計登録者数1514人。サテライト展開しており、6月に桐生市にオープンしたのに続き、TUMO Gunmaにも併設する。
TUMO Gunmaで初級者を体系的に中級レベルに引き上げ、tsukurunで独創性を備えた飛び抜けた人材に育てる。〝クリエーティブの発信源〟を掲げる県にとって、人材輩出基盤の構築は欠かせない。子どものころからデジタルに慣れ親しむことは、県産業界のデジタル人材不足の解消にもつながる。県はデジタル人材のすそ野を広げ、日本一のデジタルクリエーティブ人材輩出県を目指す。
デジタル・クリエーティブ産業を創出/人材育成・企業誘致・魅力発信
県は28年3月末までの「群馬県産業振興基本計画」で、デジタル・クリエーティブ産業の創出を掲げている。基本計画は産業経済分野における最上位計画の位置づけで、基本理念を「産業構造の変革を好機と捉えて、群馬モデルによる未来産業を創造」とする。
デジタル・クリエーティブ産業は、デジタル産業とクリエーティブ産業を掛け合わせる新産業だ。デジタル技術とエンターテインメントを融合させて〝人を魅了するワクワクする付加価値〟を創出する。
TUMO Gunmaやtsukurunによる「人材育成」、映画・映像・アニメーション制作などのクリエーティブ関連の「企業誘致」、企業・人材・活動を惹きつける「魅力発信」が3本柱。デジタル・クリエーティブ産業を、新たな産業の柱に育てて県産業全体の活性化につなげる。
企業誘致では「群馬県クリエイティブ産業移転促進補助金」を設けている。県に進出するクリエーティブ関連企業を対象に初期費用やオフィス賃料、新規雇用に対する奨励金を最大200万円補助する。
同制度を利用してアニメ制作会社の「颱風グラフィックス」(東京都武蔵野市)が進出し、6月から新拠点で業務を開始している。子どもたちにアニメ制作の現場を感じられる環境をつくりたいとの思いから、前橋市内のtsukurunの隣に立地した。県内で実稼働する初のアニメ制作会社だ。
魅力発信では、Gメッセ群馬の撮影スタジオ機能を強化している。Gメッセ群馬の展示ホールは床面積1万平方メートルで、間仕切りで3分割できる。複数のセットを組んで、効率的に撮影できる。また、国内最大規模となる幅80×高さ20メートルのグリーンバックを整備している。加えて、屋外展示場(オープンセットスタジオ)は敷地面積2万平方メートルを有しており、国内では難しいカーアクションも撮影できる。
大型映像作品を誘致するため、24年度に新制度「ぐんまフィルムコミッション映像作品制作等支援補助金」も創設した。県内に支出する宿泊費・食事費・施設利用料などを補助する。ロケ弁まで対象とするのは珍しい。補助率2分の1で、上限は2000万円(Gメッセ群馬をスタジオ利用する場合はさらに補助額の10%を加算)と、国内自治体で最高となるインセンティブを提供する。
山本県知事をリーダーとする「ロケ支援スペシャルチーム」も発足した。大型映像作品の撮影を県庁一丸となって手厚く支援し、ロケ地調整などにおける制作会社の負担を軽減する。
デジタル・クリエーティブ産業を創出するには「人材育成ー企業誘致ー魅力発信」の好循環を生み出し、事業活動のエコシステムを構築することが欠かせない。この第一歩を力強く踏み出している。