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福島県産業界、新たな産業基盤構築へ加速
福島産業人クラブ 経済講演会
福島産業人クラブ(加藤利夫会長代行=加藤鉄工会長)は4月28日、福島市内で経済講演会を開いた。福島国際研究教育機構(F—REI、エフレイ、福島県浪江町)理事長の山崎光悦氏が「浜通りから始めるF—REIの挑戦 未来を拓く科学技術力・産業競争力の拠点を目指して」をテーマに、約50人の参加者に語りかけた。ここではその模様を紹介する。
創造的復興の核に 最先端の研究を浜通りから発信
福島国際研究教育機構理事長 山崎 光悦 氏
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福島国際研究教育機構 理事長 山崎 光悦 氏
F—REI理事長の山崎です。本日はこうした貴重な機会を頂戴しまして感謝申し上げます。4年前まで金沢大学の学長を8年間務めた後、2023年4月にF—REIの初代理事長として着任し、丸3年が経過しました。本日はこれまでの進捗(しんちょく)や最新の情報についてお話できればと思っております。
まず、東京電力福島第一原子力発電所から80キロメートル圏内における空間線量率の推移についてですが、航空機モニタリングによる地表面から1メートルの高さの空間線量率の平均は、発災当時の11年11月時点と比べ、21年10月時点で約80%減少しています。
避難指示等区域の変化については、11年4月22日時点で福島県の面積の約12%に避難指示などが発出されていましたが、24年12月27日時点で約2・2%まで縮小しています。避難地域12市町村の居住状況に関しては、F—REIが立地している浪江町で居住率は15・3%、原発に近い大熊町は8・7%、双葉町が3・3%となっております。避難指示等の解除が進んでいるものの、まだまだ手を挙げてみんなが戻ってくるような状況にはなっていないのが現状です。
そこで登場したのが我々F—REIです。新産業創出等研究開発基本計画では、創造的復興に向け、移住・定住の促進とF—REIの設立が掲げられています。F—REIは、研究開発、産業化、人材育成、司令塔という四つの機能を有しています。また、研究開発活動の推進と成果を基に、まずは浜通り、福島県の産業を興し寄り添うとともに、ひいては東北全体の復興に資するように取り組んでまいります。
23年4月に当時の岸田文雄首相や渡辺博道復興大臣らにご出席いただき、浪江町ふれあい福祉センターにて開所式を行いました。現在は、「ふれあいセンターなみえ」内に本部を設置しておりますが、今後、JR浪江駅の西側の約16・9ヘクタールのエリアに本部施設や研究実験施設などを設置する予定です。本部施設は28年度、それ以外の施設は30年度の完成を見込んでいます。最終的には、F—REIを訪れる人々や研究者同士の交流の機会を創出する空間とすることを目指しており、地域と一体となった研究拠点を創っていきたいと考えております。
研究開発・産業化・人材育成・司令塔の4機能体制
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参加者は山崎理事長の講演に熱心に耳を傾けた
さて、F—REIの4機能の一つ目は、研究開発です。この後ご説明する「ロボット」「農林水産業」「エネルギー」「放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の五つの分野を中心に研究活動を進めております。その研究成果をもって産業化し、地域に産業を取り戻すとともに新たな産業の創出を図っていきます。さらに、人材育成では長いスパンで地域の若い人や若い産業人をどう育てていくかが重要になります。浜通りの既存の施設等の取り組みに横串を刺す司令塔としての機能も果たしていきます。
続いて、F—REIの五つの研究テーマについてご説明します。まずはロボット分野ですが、浜通り地域に位置する我々としては、福島第一原発の廃炉が課題となる中で、耐放射線性や耐水性などを備え、過酷環境でも活躍するロボット・ドローンを開発していこうと取り組んでいます。このほかにも災害対応や森林作業といった領域への応用が期待されています。ロボット分野の4ユニットのうち、遠隔操作研究ユニットでは、実際に触る感覚(力触覚)を伝送する技術を活用し、高温・高湿・高線量・真空など人が立ち入れない過酷環境において、より高精細で自立的に動作する遠隔操作ロボットを開発しています。こうしたロボットを廃炉作業にも生かすことが目標です。また、25年には福島ロボットテストフィールドなどを会場として「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2025過酷環境F—REIチャレンジ」を開催しました。3日間の日程で日本を含む8カ国・地域から34チームが参加し、「過酷環境ドローンチャレンジ(HEDC)」「プラント災害チャレンジ」「シミュレーション災害チャレンジ」「標準性能評価ドローンチャレンジ(STM)」の4種目でロボット・ドローンを用いた災害対応や調査・点検などを競いました。世界最先端の技術が集まってくるこうした機会を生かし、我々としてもロボット・ドローン技術を磨いていきたいと考えています。
次に農林水産業ですが、農業については農業機械の完全自動化やロボット化、スマート化を通じた効率化に力を入れていきます。また、農地の土壌に注目し、土壌環境と食物栄養の相互の影響を多面的に探究することで、作物の収量拡大などを目指していきます。浜通り地域における除染後の農地の土壌環境の回復に向けても取り組んでいます。
エネルギーについては、ネガティブエミッションの実現や水素などのエネルギーの活用に関する研究を推進しています。地域の再生可能エネルギーを有効活用し、水素の製造・貯蔵・利用を可能とする一体型小型システムの開発を進めています。このほか、浜通り地域のバイオマス資源を活用したネガティブエミッション技術の実証研究や、大型藻類を大量育成して食用利用のほか二酸化炭素(CO2)を吸収し海底に蓄積するブルーカーボンに関する研究開発を行っています。
放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用については、医療分野では放射性同位元素を用いたがんなどの診断薬・治療薬の研究開発を行っています。医療だけでなく、農業分野における農作物の高付加価値化や生産性向上にもつながるよう技術開発を進めているところです。
原子力災害に関するデータや知見の集積・発信では、実際の現場での放射線量のデータを蓄積するとともに、地域の活性化やコミュニティーの合意形成を推進することで、災害に強く人々が共生できるまちづくりに貢献していきます。
ご紹介した五つの研究分野は、それぞれ単独ではなく、例えばロボット技術は農業にも活用できるように、互いに関連性を持っており、こうした連携を行えることも強みです。
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F―REIの本施設の整備イメージ(イメージパースであり今後の設計で変更となる可能性がある)
F—REIの4機能の二つ目である産業化に向けた取り組みとしましては、福島県内外の企業などを巻き込んだ連携体制の構築に向けた産学官ネットワーク・セミナーを24年度に東邦銀行様と共同で開催したほか、市町村や住民、企業・団体などとの対話の場として座談会を開催しています。座談会については、23年度は浜通り地域などの15市町村で、24年度は研究テーマ別に浜通り地域で2回、中通り・会津地方で4回実施しました。
人材育成では、福島県内外の大学や高等専門学校の学生を対象に、F—REIの幹部が研究者としてのやりがいなどを伝えるトップセミナーを23年度に16回、24年度は7回開催しました。県内の高校向けにF—REIの研究者による出前授業も実施しています。小中学生が科学技術に触れる機会を提供するため、科学実験教室も開催しています。このほか、将来の研究者を目指す高校・大学生を対象に、F—REIの研究ユニットで研究体験を行う機会を提供するサマースクールを25年度に実施しました。24年度には東北大学と連携協力に関する基本合意書(MOU)を締結し、この基本合意書に沿って、東北大学大学院医学系研究科と「放射線環境生体医学連携講座」の設置に関する協定を締結するなど連携大学院制度を活用した人材育成にも取り組んでいます。こうした取り組みを通じ、F—REIは教育の部分にも力を入れていきます。
司令塔としての取り組みについては、7府省庁、福島県、浜通り地域等15市町村、大学、研究機関などの35の構成員が参画する協議会の組織・運営を行っています。また、自治体や関係機関との、研究開発・人材育成等における連携や双方の資源を有効活用した協働活動などの連携協力に関する基本合意書等は、23年度に9件、24年度は国内外で10件締結しました。
最終目標として、私は浜通り地域が“常磐カリフォルニア”と呼ばれるような地域になればと思っています。浜通り地域は温暖で雪が少ない気候です。人々が住みたいと憧れる地域になっていくことを期待しています。ご清聴ありがとうございました。
講演に続く質疑応答では、会場から質問が寄せられ、山崎理事長が丁寧に答えた。ここではその内容を紹介する。
Q.研究開発にあたって福島県内の製造業と連携していく際、企業側からどのようなアプローチを期待していますか。また、F—REIとして今後、県内企業とどのように連携を図っていくお考えですか。
A.設立から4年目で少しずつ成果が見え始めてきました。中でも農林水産業は早いと感じます。研究成果は、まずは浜通り、福島県で使っていただくというのが基本になります。実証は県内で行い、企業の皆さんに対しても実証や研究の募集を行っていきます。我々はモノづくりが基本です。地域企業の加工力や組み立て力に期待しており、研究開発や検証の段階から企業と一緒に技術を磨いていきたいと思っています。研究して終わりではなく、皆さんの現実の課題の解決につながるよう社会実装を目指していくのがF—REIの責務であると考えています。
