-
業種・地域から探す
続きの記事
エネルギー産業
再生エネ&水素エネ 導入加速
エネルギー安全保障の確立が急がれる中で、わが国の自然や資源を活用した再生可能エネルギーのさらなる普及が注目されている。景観を損なわずにさまざまな場所に設置できるペロブスカイト太陽電池や、日本の豊富な海域を生かした洋上風力発電の開発・導入が進む。また水素エネルギーの利用促進に向けた官民の動きも加速している。
太陽光発電/建材一体型普及に期待
再生エネの中で占める割合が1番高い太陽光発電は、短期間で設置できるが、大規模太陽光発電所(メガソーラー)による自然破壊や景観の損失などが指摘されている。25年12月、政府は「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を策定。不適切事案に対する法的規制を強化するほか、27年度以降は固定価格買い取り制度(FIT)と市場価格連動型(FIP)制度の対象外とする方針を示した。
一方で、建物の屋根に設置する太陽光発電は、既存の建物の屋根を活用するため新たな土地が不要で環境・景観への影響も比較的小さいため、地域と共生しながら導入しやすい再生エネとして注目されている。
年度のエネルギー使用量が原油換算1500キロリットル以上の事業者を対象に、26年度から「中長期計画書」において、屋根設置太陽光発電の設置に関する定性的な目標の提出が義務付けられた。27年度以降は「定期報告書」において、屋根設置太陽光発電を設置できる屋根の面積や、すでに設置済みの面積などの記載報告が求められる。
-
建材一体型太陽光発電(BIPV)の普及も期待されている(3月の「スマートエネルギーWeek春」内の特別企画「BIPV WORLD」、RX Japan提供)
また屋根材や外壁、ガラスと太陽電池が一体となった建材一体型太陽光発電(BIPV)の普及も期待されている。BIPVはスペースの確保や建物の耐久性などの問題で設置が難しい場合でも、太陽光発電システム導入の可能性を広げる。
屋根設置太陽光発電やBIPVには、シリコン系太陽電池と比べて軽くて薄く、柔軟性を持つペロブスカイト太陽電池の活用が適しており、同太陽電池の開発・生産も求められている。ペロブスカイト太陽電池は光の吸収力が強く、エネルギーの変換効率が高い。また主な原材料であるヨウ素は、日本がシェア30%と世界2位の産出国。資源に乏しい日本にとって、安全保障の観点からも注目されている。
洋上風力/国内最大級の設備稼働
-
3月、国内最大級の洋上風力設備「北九州響灘洋上ウインドファーム」が北九州市沖で稼働した
また日本の四方に広がる海域を利用する洋上風力発電の導入拡大が期待されている。政府は40年までに3000万キロ―4500万キロワットの案件を形成する目標を掲げている。
3月、国内最大級の洋上風力設備が稼働した。北九州市沖に建設された「北九州響灘洋上ウインドファーム」は、着床式風車25基によって22万キロワットの最大出力を誇る。年間発電量は約5億キロワット時を見込み、一般家庭約17万世帯分(北九州市の約4割)の電力を生み出せる見通しだ。
また日本の海は沖合に出てすぐに水深が深くなるため、洋上風力の中でも風車を海底に固定せずに海に浮かせる「浮体式洋上風力」の導入ポテンシャルが高い。1月、国内で初めて浮体式洋上風力のウインドファームが長崎県五島市で稼働した。浮体は「スパー」と呼ばれる細長い円筒形状で、上部には鋼を、下部にはコンクリートを併用した「ハイブリッドスパー型」を世界で初めて採用。コストダウンと安定性の向上を図った。8基の風車が設置され、発電した電気は九州電力の送電設備を通じて五島市の家庭や企業に供給される。
水素エネ/次世代クリーンエネとして注目
再生エネに加えて、水素エネルギーをはじめとする次世代エネルギーも注目されている。水素と酸素を反応させて得られる水素エネルギーは、使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギー。水素は再生エネ由来の電力や、化石燃料、下水汚泥、廃プラスチックなどの資源を使って製造できる。日本では24年に「水素社会推進法」が成立し、CO2排出量が少ない「低炭素水素」やその化合物の供給と利用が促進されてきた。
岩谷産業は福島第一原子力発電所構内の溶接型タンク解体工事向けに、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)で製造したグリーン水素を原料とする溶断ガス「ハイドロカット」の供給を3月に始めた。従来のアセチレンや液化石油ガス(LPG)と比べ、CO2排出量を大幅に削減。逆火や爆発リスクが低く、安全に扱える。
モビリティー中心に官民一体で推進
今月4日、経済産業省が主催する官民協議会「水素大動脈構想実現会議」は都内で初回の全体会議を開き、水素社会と国際競争力のある水素産業の実現に向けた行動方針を決めた。水素大動脈構想は福島県から福岡県まで太平洋側の幹線道路を軸に、水素の供給から輸送、利用までを一体的に進めるプロジェクト。モビリティー産業を皮切りに需要を創出し、あらゆる産業への普及を狙う。
-
-
水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)は「水素1%調達宣言」キャンペーンを行っている(JH2A提供)
また水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)は水素の調達を拡大するためのキャンペーン「水素1%調達宣言」を進めている。4日時点で、62社・団体が「輸送」「燃料」「原料」の3類型に準ずる調達のうち、1%に水素などを活用することを宣言している。
宣言の内容は①社用車・公用車の1%を燃料電池車(FCV)に切り替え②蒸気ボイラ向け燃料の1%を水素に切り替え③自社工場で使用する都市ガスの1%を水素に置き換える—など、さまざま。今後も官民一体となり、水素社会の実現に向けた取り組みが期待される。
現状、水素利用はモビリティー分野が先行している。日本自動車工業会は5月の記者会見で、水素を①つくる(水電解)②はこぶ/ためる(液化水素関連技術)③つかう(FCセル、水素モビリティー)—の三つの技術を生かし、業界で連携して水素需給を拡大、産業競争力を強化することが日本の勝ち筋であると説明。自工会として、今後10年で大型トラック1500台相当(年間水素消費量は7500トン)、水素ステーション30基、水素価格は1キログラム当たり1000円を基準に、水素普及を目指すとした。
-
豊田合成は家庭用電源としても活用できる「ポータブル水素カートリッジ」を展示した(5月の「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」)
また5月に開催されたモビリティー分野の展示会でも関連製品・技術の出品が複数見られた。豊田合成は将来技術を搭載し、水素で走ることを想定したコンセプトカー「FLESBY HY—CONCEPT(フレスビーハイコンセプト)」を披露。車両を動かす燃料源として、「ポータブル水素カートリッジ」も展示した。ポータブル水素カートリッジはクルマだけでなく、家庭用電源としての活用も想定。安全かつ手軽に持ちだせる燃料源として紹介した。
