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エネルギー産業
脱炭素化の取り組み進む ガス業界
カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の実現に向け、都市ガス業界と液化石油ガス(LPG)業界で具体的な取り組みが進む。水素と二酸化炭素(CO2)から作る合成メタン(e—メタン)は、認知度も高まり、実用化に向けた大規模な実証も始まっている。J—クレジット制度を活用したカーボンオフセットの動きも広がりつつある。
都市ガス/世界最大級メタネーション試験設備 INPEX・大ガス 実証
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世界最大級のメタネーション試験設備(新潟県長岡市、INPEX提供)
2026年2月にINPEXと大阪ガスは、新潟県長岡市で世界最大級のメタネーション試験設備の実証運転を開始した。天然ガスの生産に伴う随伴CO2を分離・回収し、外部調達した水素と反応させてe—メタンを製造している。実証は26年度末まで続ける予定だ。大ガスは30年度に、供給する都市ガスの1%をe—メタンやバイオガスにする目標を掲げている。
INPEXと大ガスは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として21年度から共同で、試験設備の設計、建設、反応プロセス技術の開発を進めてきた。
同事業ではサバティエ反応を用いている。サバティエ反応は100年以上前に発見されており、CO2と水素からメタンを合成できることは知られていた。ただ実用化に向けた、大規模な実証はほとんど例がなかった。大ガスのエンジニアリング部カーボンニュートラルメタン開発チームの横山晃太マネジャーは「世界最大級の設備」と話す。
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試験設備は家庭用約1万戸分のガス消費量に相当するe—メタンを製造可能
試験設備のe—メタンの製造能力は1時間当たり400ノルマル立方メートル。年間製造能力は家庭用約1万戸分のガス消費量に相当する。試運転ではメタン濃度96%のe—メタンが得られ、製造された一部は25年度中にINPEXの天然ガスパイプラインに注入されており、今後も注入される予定である。
大ガスが担当するのは大規模メタネーション反応プロセスの技術開発だ。メタネーション設備は水素とCO2からe—メタンを生み出す心臓部であり、高効率なe—メタン製造に向けて、大ガスは多段反応器を設計、採用した。
反応器は全部で3段あり、1段目、2段目を断熱型反応器とした一方、3段目はシェルアンドチューブ型の等温型反応器とした。メタネーション反応では、温度が低い方が理論上はメタン生成量が多くなるため、3段目では外(シェル)側を流れる高温高圧の水が反応時に発生する熱を回収して反応器の温度を一定に保つ仕組みとなっている。
メタネーション設備のもう一つの特徴は触媒だ。反応器内には触媒があり、反応器を通るうちにメタンの濃度が高まる。メタネーションの反応温度は通常は300―500度C程度とされる。一方、大阪ガスは低温でも高い反応性を示す触媒を開発しており、これにより約250度C程度の低温域でもe—メタンの製造が可能となった。実証では、他社に比べ効率的にe—メタンを作れるかを検証している。また、e—メタンの製造コスト低減につながる触媒の耐久性も確認する。
今後はさらなるスケールアップを目指す。26年度中に現在の実証で得られた成果をもとに、1万ノルマル立方メートル、家庭用約25万戸分を製造する設備の詳細設計に着手できる準備を整える予定。
今回の実証は26年度末で終了するが、大ガスは来年度以降も継続して研究開発が続けられるよう、INPEXなどと調整を進めている。
LPガス/カーボンオフセットカセットガス提案 岩谷、CFP算定・公表
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岩谷産業のカーボンオフセットカセットガス
岩谷産業はイワタニカセットガスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでの過程(ライフサイクル)で発生したCO2排出量を、「J—クレジット」で相殺(オフセット)した「カーボンオフセットカセットガス」を25年3月から販売している。
同社は工場などの事業者向けに、高効率ボイラの導入、石油燃料から環境負荷の低いLPGや液化天然ガス(LNG)への転換を推進している。この取り組みを通じて得られたCO2削減量を算定・集計し「Iwatani J—クレジットプロジェクト」として、「J—クレジット」を創出。このクレジットをオフセットに活用している。
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Iwatani J—クレジットプロジェクトの仕組み
イワタニグループでは、50年度までにCNの達成を目指している。その過程で30年度に国内の事業活動におけるCO2排出量を19年度比で50%削減する目標を掲げる。その一環としてカセットガスの製造・販売を行うカートリッジガス本部では22年度から、イワタニカセットガス(オレンジ)のライフサイクル全体のCO2排出量をカーボンフットプリント(CFP)として算定・公表している。
カセットガスを最初のCFP算定対象に選んだのは、1969年の発売以来、長い歴史があり普及率も高く、消費者にとって身近な商品であるからこそ、環境に対する同社の取り組みを効果的に伝えられると考えたためだ。カートリッジガス本部の多田剛お客様総合サービス部長は「自動車などの複雑な製品に比べると、カセットガスは部品数が23個と少ない。相対的にCFP算定がしやすい」と説明する。
同社はイワタニカートリッジガス(滋賀県近江八幡市)滋賀工場で製造したイワタニカセットガス(オレンジ)の原材料調達から廃棄までのCFPを、GHG排出量の算定・可視化サービスなどを提供するゼロボード(東京都港区)と連携して算定している。24年度のCFPはカセットガス1本当たり1・3184キログラムだった。原料となるLPG調達段階である産油国から日本まで輸送時や家庭でのカセットガス使用時のCO2排出割合が大きかった。同社が関わるカセットガスの製缶・充填工場や物流段階でのCO2排出割合は低かった。
同社はCFP算定の精度確保のため、第三者検証機関であるソコテック・サーティフィケーション・ジャパン(東京都千代田区)による検証を実施している。伝票資料を提出し、数値の正確性を確認してもらう作業は時間もコストがかかるが、信頼性確保に必要な投資として位置付けている。多田部長は「CFP算定の第三者検証を実施している企業はまだまだ少ない」という。
課題はカーボンオフセットカセットガスの小売価格が通常のカセットガスより約50円高くなることだ。今後は、一般消費者のみならず業務用途や教育現場など幅広く提案を行い、低環境負荷であるカーボンオフセットカセットガス(グリーン)の認知度を向上させ、低・脱炭素社会構築に貢献するために普及を図る。
