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中部の工作機械産業(2024年1月)
2024年は工作機械業界にとって、来たるべく好況に備える転換点となりそうだ。日本工作機械工業会の調べによると、23年の工作機械の年間受注実績は3年ぶりの減少となった。一方、中部の大手工作機械メーカーのトップらは、25年頃から市況は上向くとの見方で一致しており、24年はそれまでの過渡期と捉える。いずれ上向きに転換するであろう市況に対し、中部の大手メーカーは反転攻勢の時機を虎視眈々と狙っている。
独自技術搭載の製品をアピール
中部の大手工作機械メーカーが反転攻勢への準備を進める中、中堅・中小メーカーも複合加工に対応した新モデルの開発や、モノづくり現場の人手不足に対応した自動化の提案など新機軸を打ち出している。中部の有力工作機械メーカーの動きを追った。
自動化、加工事例を紹介
エンシュウは2023年12月6―8日に、高塚工場(浜松市中央区)で6年ぶりに自社展示会「エンシュウ Saving Fair 2023」を開いた。省エネルギーや省スペースが特徴のマシニングセンター(MC)、「セービングセンタシリーズ」やレーザー加工機など計15台を展示。3日間で約700人が来場した。
同社独自の機内搬送装置「イーローダー」による自動化や、電気自動車(EV)部品の加工事例を紹介した。モーターハウジングの内径加工では、主軸40番台の同社製横型MCを使用して高剛性をアピールした。
これから本格的に協業を開始するドイツの工作機械メーカーのシュヴェービッシュ ヴェルクツォイクマシーネ(SW)の製品も動画とセミナーで紹介した。
高塚工場内ではMCの組み立て工程と、エンシュウが手がける部品加工事業のライン見学ツアーにも多くの来場者が参加した。
旋盤用油圧パワーチャック新発売
豊和工業は工作機械に自律移動ロボット(AMR)などを組み合わせた自動化の提案に注力している。レーザーセンサーにより高精度な位置決めが可能なAMRに、自動爪交換装置(AJC)との組み合わせで、熟練した技術が必要な旋盤のチャックの爪交換工程の自動化を実現するといったソリューションによって、顧客のスマートファクトリー化を支援する。
一方、工作機械の周辺機器では、新製品を展開している。旋盤用油圧パワーチャックの新製品「H037MAシリーズ」を開発し、23年11月から順次、市場に投入している。
くさび型の3爪中空チャックで、くさび角の変更により従来品の把握力を保ちつつ爪ストロークと貫通穴を拡大して、より広範囲の加工対象物(ワーク)に対応させた。
高い把握力を持ち、高回転の重切削に対応。チャックの締め付け位置を変更し、ボディー歪みを最小化した。把握精度は0・01ミリメートル以下で、爪の浮き上がりは従来品比20%低減した。高剛性化と摺動効率改善により、回転数と耐久性も向上した。
ビルトイン型ミストコレクター
中村留精密工業(石川県白山市)は、複合加工機などの本体に搭載するビルトイン型ミストコレクター「FogFree(フォグフリー)」を発売した。機械本体に搭載する省スペースという利点と、搭載位置の工夫でメンテナンス性を高めた。加工能力の向上に伴って発生するミストが増加する中、製造現場の環境を改善したい顧客のニーズに応える。遠心分離機構とHEPAクラスのフィルターの二つを採用することで、0・3マイクロメートル以上の微細粒子を99・93%捕集できるという高い回収能力を持つ。
本体への搭載により、外付け別置きのミストコレクターに必要な配置場所やダクトホースが不要になるので、省スペースで回収効率とデザイン性の向上を実現した。
チップコンベヤーの上にあるデッドスペースを搭載位置に活用することで、メンテナンス時にアクセスしやすい。また、維持管理がしやすい設計と工夫を凝らした。
最新機能に更新可能なCNC装置
キタムラ機械(富山県高岡市)は「Machining Challenges―Simplified」のスローガンを掲げ、08年に開発した業界初、アイコン表示簡単操作の独自コンピューター数値制御(CNC)装置「Arumatik-Mi」を中心に、工作機械の知能化、自動化を飛躍的に推進し、顧客満足度を追求してきた。
昨年、特許庁長官奨励賞を受賞した「クラウドサーバー対応工作機械の自動運転装置」は、加工データ等の機密情報を外部に 持ち出す必要がなく、安心安全に世界中に生産現場のグローバル展開が図れる。
サーキュラーエコノミー(循環経済)の概念に基づき開発されたMCは、納入後でも拡張仕様や自動化システムへの展開や、陳腐化しない最新機能にアップグレードできるCNC装置の更新が行え、直線型経済(大量生産→大量消費→大量廃棄)と一線を画す。
従来サイズ超えるワーク加工実現
ブラザー工業は同時5軸制御機能を搭載した主軸30番テーパの小型MC「U500Xd1―5AX」を発売した。大型の傾斜ロータリーテーブルを搭載して多面加工を可能にした従来機種「U500Xd1」に、同時5軸機能を付けた追加モデルだ。
ポンプや発電機、自動車のターボチャージャーなどで使用するインペラ、人工骨などの加工での利用を想定。立体的で複雑な形状の部品加工ができ、滑らかな曲線形状が必要な部品にも適する。
主軸30番の小型MCながら、治具エリアを最大限に広くなるように設計した傾斜ロータリーテーブルを標準で搭載。小さい本体サイズを維持しつつ、従来モデルや小型複合加工機より大きなワークを扱えるようにした。
営業拠点の拡充も進めている。中国の江蘇省南京市に工作機械のショールームを併設するサービス拠点「ブラザーテクノロジーセンター南京」を新設した。延べ床面積は745平方メートルで、このうちショールームは350平方メートル。工作機械の展示に加え、各種セミナーの開催などを行う拠点としても活用する。
施設内には小型MC「スピーディオシリーズ」の「W1000Xd2」「M300Xd1―5AX」など計6機種を展示。顧客が部品を持ち込み、デモ加工することも可能だ。
プログラミングも容易な機種開発
FUJIは新型の複合旋盤「アキュフレックス400S」「同400D」の2機種を開発中。「ジョブショップ(中小製造業)が使うような汎用機の市場に入り込んでいきたい」(岡田健人執行役員マシンツール事業本部長)との狙いから、多様な部品加工をこなす汎用性の高い複合機を目指している。
400Sが1タレット、400Dが2タレットで、同等サイズの他製品に比べ、加工室内の空間を広くし、より大きなワークの加工や、プログラムの作成をしやすくしたのが特徴だ。
同社は2機種を23年9月にドイツ・ハノーバーで開催された欧州国際工作機械見本市「EMOハノーバー2023」に参考出展しており、顧客のニーズや声を拾い集めて完成度をさらに高め、24年春に発売する予定だ。