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中部の工作機械産業(2024年1月)
2024年は工作機械業界にとって、来たるべく好況に備える転換点となりそうだ。日本工作機械工業会の調べによると、23年の工作機械の年間受注実績は3年ぶりの減少となった。一方、中部の大手工作機械メーカーのトップらは、25年頃から市況は上向くとの見方で一致しており、24年はそれまでの過渡期と捉える。いずれ上向きに転換するであろう市況に対し、中部の大手メーカーは反転攻勢の時機を虎視眈々と狙っている。
モノづくりの高度化 後押し
研削盤用クーラントタンク開発
白山機工(石川県白山市)が新開発した研削盤用クーラントタンクは、研削・研磨加工で排出されるスラッジを高精度に排除し、回収・清掃コストを削減できる。これまで同社が手がけていなかった分野での製品を投入することで、自社の提案力強化につなげる。
同製品は、油性クーラントにも対応。顧客の加工条件に合わせた1次濾過装置で前処理を行い、ダーティー槽へ送る。同槽は渦流式タンクでクーラントを循環させスラッジの体積を抑制するので、タンク清掃の手間を減少させた。そこから特殊なフィルターケースに送られ、クーラントの流れを利用しスラッジを固まりにして分離する。フィルターは目詰まりが起きにくい構造のため、清掃や交換時期を減らせる。分離したスラッジは下部に沈殿し、時間による自動制御でバルブが開きドレンボックスに排出される。ボックスは開閉式構造でバッグフィルターの回収作業を容易にした。
経験豊富な技術者 往年の名機を復活
スギヤマメカレトロ(岐阜県本巣市)は工作機械の修理(オーバーホール)や改造を主力とし、専業では国内最大規模の工場を持つ。長年の蓄積と経験豊富な技能者たちにより、図面なしでもメーカーや機種を問わず対応できるのが特徴だ。
オーバーホールでは構成部品をすべて分解・点検・整備することで性能を新品の状態に戻す。部品の再加工によりさらに高い性能を引き出すこともできる。また改造では、顧客先の生産現場に最適となるよう、性能を高め機能を追加する。「名機を蘇らせるのが当社の仕事」と浅野博幸社長は説く。
最新のコンピューター数値制御(CNC)装置を搭載して旧型機や汎用機を再生する「レトロフィット」も得意としている。CNC装置を別のメーカー製に載せ替える「リプレース」も手がける。航空機用などの自動リベットカシメ機(オートマチックリベッター)、鉄道の車輪を修正加工する旋盤などの専用機も生産している。
デジタルデータの一元管理ソフト
ゴードーソリューション(浜松市中央区)は加工現場に必要なデジタルデータを一元管理できるソフトウエア「ナスカ5 EDMライト」を発売した。数値制御(NC)プログラムやコンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)のデータなどを関連付けてシステムに登録し、簡単な検索で必要なデータが見つけやすくなるほか、更新履歴を把握できる。基本パッケージは10ユーザー分で、別途有償で最大40ユーザーに追加可能。
ファイル形式のデータであればシステム登録可能。登録時に「取引先」や「図番」など設定した属性を付与し、データが散逸しないようになる。CADやCAM、加工プログラムの関連性をつける「リンク設定」の機能での検索もできる。
また「版管理機能」で、各種データ変更後には常に最新版を表示し、過去データも確認できる。データを勝手に操作できないよう、更新や参照、削除などの権限を担当者ごとに与えるセキュリティー機能も搭載している。
切削液の計量から供給まで自動化
岩本工業(石川県白山市)の切削液自動供給装置「クーラントサーバー 楽~ラント」は、一連のクーラント作業を自動化し、切削液の計量、希釈、濃度確認から工作機械への運搬、供給とここまでを自動で行う。さらに濃度変更の調整や起動・停止のタイマーを設定できる。これらの充実した機能が現場の人手不足も重なり、自動車メーカーなどへの採用も決まった。さらに導入した企業の3割強がリピートで購入するなど、新たな収益源として実績を積み重ねている。
一方、建設機械などの部品加工を行う本社工場(同)は、「能登半島地震」による被害は少なく、同第二工場内にある自動倉庫のパレットに一部ずれが生じた程度だった。また同社では、震度4以上の揺れを確認した場合、機械の精度出しから加工、精度測定を必ず行う社内ルールが存在。それに沿って測定に合格したものから順次、加工を再開した。
協働ロボット専用一体式カバー開発
ナベル(三重県伊賀市)は、工作機械分野におけるロボット利用の増加や市場全体の成長性を見据え、同分野で協働ロボット用カバー「Robot―Flex」の販売に力を入れている。
最近では、マシンテンディング用ロボットカバー専用生地「NRF―7」を開発。労働力不足への対応や省人化による生産性向上を目的に、加工機へのワーク投入と取り出しなどを協働ロボットに担わせる「マシンテンディング」が増えていることから、同生地を使ったカバーを開発した。
各軸やビルトインのビジョンカメラを耐油・耐クーラント性のある素材で一体的に保護できる。ロボットの形状にフィットし、各軸の動作角度に追従する。さらに、着脱が容易でメンテナンス性も高い。防塵・防水性能はIP66相当。クーラントミストのかかる過酷な環境においても、協働ロボットの安定的な長時間稼働の実現に貢献する。
スラッジ残らない精密濾過装置
ユーベック(名古屋市千種区)は、小型マシニングセンター(MC)用に、クリーン液槽内でも循環濾過することでクーラント液(切削油)中に微細異物やスラッジが残らない精密濾過装置を発売した。
独自の精密フィルタリングシステムにより長期間、新液と同等の機能性を維持できる。フィルター交換を10年以上実施していないケースも多数あるという。また、MC30―50台程度の集中クーラント方式では、タンク清掃が5年以上不要となる。
ノズル径が1ミリー2ミリメートルの外部ノズルやホルダースルー、スピンドルスルーでも、濾過したクーラント液を2メガパスカル以上の高圧で吐出する。特にホルダースルーは刃先に直接クーラント液を吹き付け、加工対象物(ワーク)に角度や傾斜があっても死角がなくなり深穴や複雑形状での切粉を除去できる。また、摩擦熱が蓄積しにくく工具寿命が2倍以上に延びる。