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中部の工作機械産業
反転攻勢をかける1年へ
2025年は工作機械業界にとって反転攻勢をかける年となりそうだ。日本工作機械工業会の調べによると、24年の工作機械の年間受注実績(確報値)は、前年比0・1%減の1兆4851億900万円と2年連続の減少だったが、25年の年間受注額は同7・7%増の1兆6000億円と増加に転じると見通している。工作機械メーカーの首脳らの間でも、25年に市況は上向くとの見方が目立つ。回復軌道に乗ろうとしている市況に対し、中部の大手メーカーは、製造現場で増す一方の自動化や省人化の要望に応える製品を提供して、いちはやく需要をつかもうとしている。
自動化・省人化で需要つかむ
24年の年間受注実績の内、外需は同3・4%増の1兆435億7100万円。2年ぶりに増加し、4年続けて1兆円を上回ったが、内需は同7・4%減の4415億3800万円と2年連続で減少。2年続けて5000億円を割り込んだ。
中国を中心にアジアで春ごろから23年と比べ増加傾向が続いたものの、24年後半から回復を見込んでいた自動車や半導体関連の設備投資が伸び悩んだ結果だ。
25年の工作機械の年間受注額については、同7・7%増の1兆6000億円、うち外需は同5・4%増の1兆1000億円、内需は同13・2%増の5000億円になると日工会は予想している。
稲葉善治日工会会長は「当面は底堅くも勢いを欠く展開が続くと思われるが、年後半には明るさを増してくる」と25年の見通しを語る。また、自動車や半導体関連の設備投資については「夏ぐらいから動き出す」との期待を示している。
人手不足に対応する技術の投入盛ん
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テーブルを垂直に配置した横型MC「MS―320H」の加工室
こうした中、今後伸びてくる需要を捉えようと、中部の大手メーカーは虎視眈々(たんたん)とチャンスをうかがっている。特にモノづくり現場で大きな課題となっている人手不足に対し、自動化や省力化に寄与する工作機械やソリューションの提供を強化。24年11月に都内で開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF)でも自動化・省力化に関連した提案に注目が集まった。
「自動化に大事なのは止まらないこと。止まらない機械構造を徹底追求した」―。
オークマの家城淳社長がこう強調する出展機が横型マシニングセンター(MC)「MS-320H」。加工対象物(ワーク)を250ミリメートル角以下の小物部品に絞ることで、ワークを載せるテーブルを垂直に配置するという類を見ない構造を実現した。これによりテーブル上面や治具に切りくずを堆積させないようにして、自動化のネックとなる切りくずトラブルを排除している。
また、多様な形態の自動化に対応するのも特徴だ。例えば、ローダーを機上に配置してコンパクトな自動化システムを作れる。ローダー走行部の機械高さは旋盤と同等にして、単一ローダーによる加工部品の搬送をできるようにし、旋盤との混成ラインの構築も容易にしている。
また、同社製の移動式協働ロボット「OMR」と接続すれば、多品種少量生産での自動化も可能になる。家城社長は「ほぼ無人に近いような運転ができる」と新製品の出来栄えに自信を示す。
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多用な自動化システムに対応する5軸加工機「ヴァリアクシスC―700」
ヤマザキマザックも多様な自動化システムを構築できる同時5軸加工機「ヴァリアクシスC-700」を展示した。拡張可能なパレットチェンジャーや多段パレットストッカーに加え、多関節ロボットを用いた自動化にも対応する。
ワークの搬出入用の自動ドアを後付け可能で、導入後も生産形態に合わせて自動化システムを作れる。大型ワークが積載できる両端支持タイプのチルト・ロータリーテーブルを採用。X軸とZ軸のストローク範囲を広げ、多面・5軸加工でも工具突き出し量を抑えてびびりのない加工ができるという。
また、コンピューター数値制御(CNC)装置「マザトロール」の機能で、稼働中の消費電力を可視化。加工プログラムの切削量に応じてクーラント吐出量を制御してムダなクーラント使用や消費電力を減らせる。
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「誰でもかんたん熟練加工」をコンセプトにした「G3P100L」
一方、ジェイテクトは主力製品の円筒研削盤で「誰でもかんたん熟練加工」をコンセプトにした「G3P100L」を紹介した。
労働力不足、熟練技能継承の課題に対し、ワークの剛性や加工寸法などの入力で最適な研削加工条件を自動決定し、プログラム作成時間が従来の半分程度になるという「らくらく自動決定」機能を提案する。
このほかに、ステアリングメーカーとしての技術を応用した「ステアバイワイヤハンドル」をオプションで追加できる。電気信号で切り込みやテーブルの位置を調整するが、砥石(といし)と工作物の接触を手動機のように伝える手感覚を再現。手動にこだわる熟練技能者に配慮する機能も用意している。
踊り場から脱却しようとしている工作機械市場に対し、中部の大手工作機械メーカーは追い風に乗るための手だてを着々と講じている。