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中部の工作機械産業
中部の主要工作機械メーカートップが語る25年の戦略(1)オークマ/ヤマザキマザック
オークマ 社長 家城 淳 氏/多品種少量生産で汎用機に需要 自動化システムの生産効率化
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オークマ 社長 家城 淳 氏
-2024年の振り返りと25年の展望は。
「24年は全体の市況はゆるやかに回復したが、良い所と悪い所があるまだら模様なのが実態だ。好調な業種と不調な業種が入り混じり、キャッシュに余裕がある大手の大型商談が多い一方で、中小企業の案件は少なかった。また、不調な業種の顧客の中にも、発注者が求める短納期や高精度に対応することで仕事が来ている所もあった。そうした顧客が持つニーズをつかめる工作機械を提案できるかが、まだら模様の市場の中で勝負を分けるポイントだ。25年はまだら模様がより強まるとみている。そのような中、自動化やDX(デジタル変革)に関する最先端のシステムを提案することで、まだらの不調な所に入っている顧客も、好調な所に移れるようにするのが、25年のテーマになる」
-どのような製品を市場に投入していきますか。
「市場には専用機から汎用機へ流れが生まれている。生産形態が大量生産から多品種少量生産への移っており、さまざまな加工に対応しながら、専用機に負けない精度が出せる機械が重要になる。我々はもともと自社工場で超多品種少量のマス・カスタマイゼーション(個別品の大量生産)を手がけている。その経験をもとにマス・カスタマイゼーションに対応する機械の提供が可能だ。また、熟練作業者が減少する問題に直面している顧客に対する自動化も当然進める。その際に、ロボットのプログラムがわからない工作機械のオペレーターでも使いやすいシステムにするのが重要だ。工作機械のオペレーターが工作機械を扱うのと同じように使えるロボットシステムの市場を開拓していく」
-江南工場(愛知県江南市)の一部を再開発し、工作機械の自動化対応を担う「エンジニアリングセンター(仮称)」と未来のモノづくりのあり方を提案する「イノベーションセンター(同)」を12月に竣工させる予定です。
「これから自動化システムの案件が増えていくことに対し、エンジニアリングセンターで、その組みたてや顧客の立ち会いなどを集中的に行う。これにより、ほかの工場も含めた生産効率の向上が期待できる。また、イノベーションセンターは顧客にこれからの革新的なモノづくりをご覧いただく場所にする。例えば、エンジニアリングセンターで作ろうとするシステムをイノベーションセンターでシミュレーションして、あらかじめ生産効率化が実現するかを検証するといったことを通して、顧客にこれからの工場のあり方をイメージしてもらう」
-8月には可児工場(岐阜県可児市)内に物流拠点の「オークマPDC」を完成させる計画です。
「物流の機能をここに集中させるとともに、組みたて工程の一部も担わせて、全体の生産工程の効率化も進める。在庫管理や物流の動線の最適化で利益率を高める施設になると期待している」
ヤマザキマザック 社長 山崎 高嗣 氏/インドで大型加工の需要取り込む ミネラルキャスト機の量産も整備
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ヤマザキマザック 社長 山崎 高嗣 氏
-2024年はどのような経営環境でしたか。
「24年は総じて停滞感の強い1年だった。欧州の受注が24年半ばぐらいから落ち始めた。特に欧州最大の市場であるドイツが非常にシビアな状況だ。その影響は隣国のフランスやイタリアのみならず、ドイツから多くの仕事を請け負っている東欧諸国にも波及する。落ち込みの要因は、エネルギー高騰などのコスト高といったドイツの製造業がかかえる構造的な問題であって、すぐには回復しないと想定している。当社にとって世界市場で最も売り上げが高いのが欧州であり、その不調は大きなインパクトになる」
-他市場の25年の見通しは。
「中国の落ち込みはもう底を打っており、これからも、ゆっくりのペースだが調子は上がっていくと見ている。米国は予想が難しいが、トランプ政権が事前にアナウンスしている石油開発の積極化が進めば、工作機械業界にとってはプラス要因になる。そのため大型機の特需が生じる場合の備えをしている。日本国内は半導体業界の回復次第だろう」
-23年に新設したインド工場の現状と今後の取り組みは。
「24年のインド市場の受注額は過去最高だった。今後もこの市場は伸びると見ており、注力していく。インド工場で生産した機種のリピーターの顧客が出始めており、品質は評価されていると言える。インド工場では立型マシニングセンター(MC)を生産しているが、そのシリーズのより大きな機種を24年末に発売した。エネルギー関連など大物の部品加工の需要を取り込んでいく。また、インド工場の機種を東南アジアに輸出する取り組みも始めた」
-24年11月開催の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)に構造体を鋳物から内製したミネラルキャストに切り替えた初めての機種である立型MCを出展し、発売しました。今後、ミネラルキャスト機をどのように拡大しますか。
「JIMTOFでの評判は良かったので、まずは、これを量産できる体制を整えていく。また、2機種目の開発を既に始めている。振動減衰性や精度の高さに優れているミネラルキャストの特性を生かすため、それらの性能や特に必要とされる機種に導入する。26年以降の発売を見込んでる」
-7月開催の塑性加工技術の総合展示会「MF-TOKYO」に出展します。どのような新製品や新技術をアピールしますか。
「まったく新しいタイプのレーザー加工機を紹介する。レーザー加工だけでなく、ほかの加工の工程も集約できる機械だ。MF-TOKYOの展示に間に合うように開発を進めている。また、ロボットを用いて加工対象物(ワーク)の仕分けを自動化するシステムを開発したので、それも展示する。まずは自社工場で運用をし、それで完成度を高めたものをMF-TOKYOでお客さまにお見せして、自動化システムの需要に対する市場の反応を探る」