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中部の工作機械産業
中部の主要工作機械メーカートップが語る25年の戦略(2)ジェイテクト/中村留精密工業
ジェイテクト 経営役員 工作機械・システム事業本部長 宮藤 賢士 氏/エンジン向け設備に再投資の動き グループ各社の技術融合進める
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ジェイテクト 経営役員 工作機械・システム事業本部長 宮藤 賢士 氏
-ジェイテクトマシンシステム(JMS、大阪府八尾市)の社長を継続しながら、1月1日付でジェイテクトの工作機械・システム事業本部長に就任しました。これまでの経歴を教えてください。
「もともとはトヨタ自動車にいて田原工場(愛知県田原市)や上郷工場(同豊田市)でエンジン生産ラインの技術員をしていた。また、米国の現地法人に3回出向しており、新工場の立ち上げにも携わった。22年1月にジェイテクトに転籍して、同年6月に光洋機械工業(現JMS)の社長になり、今年1月にジェイテクトの工作機械・システム事業本部長に就いた。トヨタ時代には、使用者として工作機械に非常にお世話になった。これから、その恩返しができると思っている。ユーザー目線を持ち合わせているので、それをうまく活用しながら工作機械事業を発展させていきたい」
-工作機械市場の現況と今後の見通しは。
「自動車向けが少し伸びてきている。電気自動車(EV)の拡大で、これまでエンジン系の設備への新規投資は抑えられ、機械のオーバーホールなどで間に合わせていた面がある。だが、欧州などでEVに対する見直しの動きが出始めたことで、エンジン向けの設備にも投資をしようという意欲が生まれ始めた。半導体向けの回復はまだ先になると思うが、25年の全体の市況は24年よりやや上向くとみている。不安要素は米国の政権交代で、その影響を注視して、うまく対応していく必要がある」
-工作機械の新機種の開発状況は。
「円筒研削盤『Gシリーズ』の大型機で最長5000㍉㍍の加工物に対応する『G5』の開発を進めている。電池製造で大型ローラーを作る需要が伸びており、それを加工できるようにする。26年開催の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)で紹介したい。また、JMSでは8インチの炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の生産に使う平面研削盤を開発中で、近く市場に投入する」
-ジェイテクトは24-26年度を期間とする中期経営計画で「ソリューションプロバイダーへの変革」を掲げました。これを工作機械事業でどのように具現化しますか。
「ジェイテクトにはグループ会社が多数あり、それぞれがコアコンピテンシー(核となる独自の能力)を持っている。それらを融合していけば、さらに世の中のお役に立つソリューションを提供できると思っている。JMSとジェイテクトグラインディングシステム(JGS、愛知県幸田町)はそれぞれ別の種類の研削盤を生産していたが、JMSとJGSを交流させて、JMSでもJGSが生産している研削盤を作る取り組みをしている。こうすることで新たな学びが生まれ、新しいソリューションを生み出すきっかけにもなる。また、顧客からの困りごとをWeb上でサポートする会員制サービス『マイ・ジェイテクト・マシナリー』の本格展開も始めた」
中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏/複合加工のニーズ高まる 開発力の向上目指す
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中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏
-2024年11月の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)では多くの新製品を発表しました。
「複合精密コンピューター数値制御(CNC)旋盤の『NT-Flex』や『WY-150V』、新ロボットシステム『RoboSync』を新製品として発表した。今回のJIMTOFでは過去最多の来場者が自社ブースに訪れたという印象だ。小型機種のNT-Flexは1台で旋削、ミーリング、歯車などの複合加工に対応できる。こうした新しい価値を提案することによって受注につながった。お客さまに段取り替えの短縮、難削材への対応など具体的な要望を聞くこともできた。複合加工機の需要は大きく、当社の製品は自動車や半導体など、あらゆる産業に対応できる点が大きい」
-新工場「MAGI(マギ)」の稼働から1年以上経過しました。現在の生産状況は。
「品質と生産効率の向上につながっている。良い機械を作って、より多くのお客さまに届けるという意味でプラスになった。一部の機種はユニットを在庫していることで短納期につながっている。JIMTOFで受注したお客さまは期末に向けて短納期を求めているため、できる限り要望に応えていきたい。24年度の発表機種は5機種だが、MAGIのユニット対応機種の生産ラインを生かして、25年度は24年度の実績以上に多くの新製品の発表を予定している」
-25年の工作機械業界をどのようにみていますか。
「アジアを含め、どの国でも労務費が上がり人材が採用しにくくなっている。そのためお客さまが複合化と自動化をより求めてくるとみている。その中で期待している市場としては半導体部品がある。まばらと言われながら電気自動車(EV)も設備投資がある。宇宙・航空機関連も伸びしろがある。ただ、同じ業界でも企業ごとに好不調がある。それでも間違いなく複合化と自動化という流れは来ている」
-工作機械以外の新事業にも力を入れています。
「25年は製造ソリューション事業『Bridg3事業部』で工具の破損を検知する『Dr.Tool』以外の新たな提案に取り組んでいく。大事なのは自社製品以外の工作機械にも装着できるといった提案をしていくことだ。お客さまの要望の中から共通項を調べて一致するような部分が見つかれば、社内一丸となって開発していきたい」
-今後取り組んでいきたい内容は。
「お客さまが複合加工機を導入した際に、まったく不安のない状態にすればもっと機械が普及するはずだ。そのためには段取りやプログラムといったベーシックな部分を固めていかないと間口が広がらない。そういう部分の開発力をさらにレベルアップしていく。当社が複合加工機を普及させる存在であるという自負がある一方で、業界全体で市場を広げていきたい」