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中部の工作機械産業
技術生かし社会のニーズに対応
中部の大手工作機械メーカーが反転攻勢へ向け、自動化や省人化など製造現場の需要に対応した製品を投入する一方、中堅・中小メーカーも蓄積した技術を応用し、新たな製品の開発を進める。
内燃機関向けとEV向け加工を両立
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豊和工業はJIMTOFでロボットでチャックの爪交換をするデモンストレーションを披露
豊和工業は内燃機関と電気自動車(EV)向け加工の両方に用いることができる新型工作機械の開発を進めている。昨年のJIMTOFでは30番主軸の横型MCを初出品した。X軸のストロークが標準仕様で800ミリメートル、オプションで1500ミリメートルにできる。また、主軸も30番では物足りないという顧客に対しては、オプションで40番に切り替え可能だ。モーターケース、バッテリーケース、足回り部品向けなどでの導入を狙う。従来の〝止まらないマシン〟の特徴に加え、省エネルギー、熱変位補正といった機能を搭載した。
また旋盤用周辺機器として、くさび型の3爪中空チャック「H037MAシリーズ」も提案する。くさび角の変更により従来品の把握力を保ちつつ爪ストロークと貫通穴を拡大して、より広範囲のワークに対応させた。高い把握力を持ち、高回転の重切削に対応。チャックの締め付け位置を変更し、ボディー歪みを最小化した。
自動化システムを後付け
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キタムラ機械の横形MC「HX250iG」の12面APC仕様。APCは後付けが可能
キタムラ機械(富山県高岡市)は自動工具交換装置(ATC)などの自動化システムを後付けできるサービス「All-In-One SMART FACTORY」の提案に力を入れている。コンセプトは「失敗しない自動化投資」。標準機を導入して機械に使い慣れてもらい、その後用途に応じてATCなどを追加できるようにした。横型MCでは全機種に対応できる。
また、簡単操作の独自CNC制御装置「Arumatik-Mi」をアップデート(リサイクル)することで長寿命化を実現し、顧客の投資負担軽減につながるほか、自動化のために機械本体を入れ替えずに済む。自動化と環境対応を両立するサービスへの理解を深めてもらい、MCの拡販につなげる構えだ。
一方で日本の工作機械の自動化が進まない構造的な課題がある。機械代金は納入品が要求通りか検収した後に支払われる商習慣があるが、自動化にはロボットメーカーなど多様な業者が加わるため、資金回収が複雑・長期化しメーカーとユーザーを取り次ぐ商社は自動化機械を売りたがらない。自動化が進まない理由だ。後付けサービスで投資負担を分散し、失敗しない自動化を支援する。
刃具の劣化抑制するMC用高圧ノズル
ユーベック(名古屋市千種区)は、小型MCでの加工時にノズル径1ミリメートルで、毎分40リットルのクーラント液を15メガパスカル(メガは100万)の高圧で吐出するクリーンジェットノズルを開発した。点検や清掃の負担軽減のほか、工具が従来比2倍以上に長寿命化するという。自社製の精密濾過装置と組み合わせたシステムとして販売する。
30番、40番主軸の小型MCが対象。小型MC30-50台が連結した集中クーラントの場合、配管工事別で精密濾過装置本体の消費税抜きの価格が5000万円程度。自動車部品メーカーなどに年間10システムの販売を目指す。
高流速、大流量のクーラント液を、刃具先がワークに接する「逃げ面」に当てることで摩擦熱が蓄積しにくくなり、刃具の長寿命化につながる。少量のエアで吹き流しながら刃具に当て、高効率切削加工と同時に洗浄機と同等レベルで切りくずを除去する。
微細なスラッジ除去するクーラントタンク
白山機工(石川県白山市)は、1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)相当のスラッジを濾過できる高精度フィルター搭載クーラントタンクを昨年11月に発売した。スラッジ回収やフィルター交換などにかかるメンテナンスコストを抑えた製品だ。
フィルターケース内に送られたクーラントは、ケース内で水位を上下させながらフィルターで濾過される。フィルターのメッシュサイズは0・3マイクロ-100マイクロメートルで使える。フィルター内に付着したスラッジは水流や水位変動により剥がされ、ケース下部に沈殿。タンク下部にたまったスラッジは自動でバルブが開いて排出されるため、面倒なタンク清掃の手間が省ける。EVや半導体製造装置などの需要増を念頭に、微細なスラッジを除去する需要も高まると見て開発したという。
また、昨年のJIMTOFではデザイン性と操作性を一新し、遠隔でプログラム変更や状態監視が可能なチップコンベヤー「スマートチップコンベヤ」も参考出品。顧客の意見を参考に製品化を検討する。
工場の油汚れを短時間で洗浄
日本メカケミカル(愛知県豊川市)の工業用クリーナー「メカEXクリーナー」は工場の機械類や工具部品に付着したグリース、潤滑油などの汚れを短時間で洗浄可能だ。アルカリ成分と柑橘系オイルを主成分とし、強力な脱脂洗浄力を備えた。
水溶性で用途に応じて水で希釈して使用可能。機械回りの汚れであれば状態に応じて3-10倍、部品やワークの脱脂洗浄では5-30倍、水溶性潤滑剤の脱脂洗浄の場合は10-50倍程度に希釈して使用する。用途ごとに洗浄剤を購入する必要がないためコストの削減にも貢献する。同社によると、コンクリートに付着したタイヤ痕などであれば、同クリーナーを吹き付けて数秒待ち、ふき取るだけで汚れが落ちるという。
同社は工業用化学製品メーカーで、このほかにもジェル状の錆取り剤や防錆材などをラインアップする。
濾過装置とマンドレルで事業拡大
ユニマグテック(名古屋市名東区)は、台湾ユニマグ社のクーラント濾過装置の販売開始に伴い、2019年に設立。特に超硬合金工具の研削加工時に発生する切りくずを、フィルター交換など消耗品を使わず高精度に濾過すると同時に、その切りくずを利益化するリサイクル支援活動を基に知名度を上げ実績を重ねている。23年11月には独ウィルヘルムケーニッヒ社の油圧マンドレルなどの国内市場独占販売権を取得。24年11月に出展したJIMTOFでは、振れ精度3マイクロメートル以下の高精度と、ヨーロッパ市場での高い知名度とともにこれまで積み上げた実績により注目を集め、引き合いが増加している。
来夏には現在の自宅兼事務所からほど近い場所に事務所を移転する予定。各種作業設備の拡充に加え、一人で持ち上げるのが困難な重量物製品の保管・運搬の利便性を向上させるなど業務の効率を上げる。今後は人材の獲得を行い、濾過装置と油圧マンドレルの2本柱でビジネス拡大を目指す考え。
操作性を大幅に改善
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ゴードーソリューションの「NAZCA5」
ゴードーソリューション(浜松市中央区)のソフトウエア製品「NAZCA(ナスカ)5シリーズ」は、1996年に販売を開始した「ナスカシリーズ」の第5世代目にあたる同社の主力製品。2021年の発売以来、コンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)や加工シミュレーション、図面・加工データの管理システム、数値制御(NC)プログラム通信ソフトなどでシリーズ展開している。
NAZCA5シリーズはユーザーの声を反映して、随時機能をアップデートしているのが大きな特徴だ。1月の刷新では操作性を大幅に向上。昨年のJIMTOFで先行公開し、来場者からも高評価を受けた。コマンドを使用する必要がなくなり、市販のオフィスソフトの感覚でデータを操作できる。またソフトのプラットフォーム(基盤)を刷新し、動作速度が従来バージョン比で最大2倍速くなる見通しだ。導入後の利用方法や不具合などの相談に応じる「保守サービス」の契約者であれば、無償アップデートを受けられる。
そのほかにもNAZCA5の機能のカスタマイズにも対応している。ワークや使用する専用機など自社の業務に合わせた機能の変更や、社内のシステムとの連携などが可能になる。
コンパクトで軽量な保護カバー
ナベル(三重県伊市)は、工作機械向け保護カバー「ダイアモンド・フレックス」を24年11月に発売した。テレスコカバーよりコンパクトで軽量、高速動作に耐えられるなどの優位性を持つ。顧客の機械に合わせたオーダーメードのため、価格は個別見積もり。価格帯の幅は広くなるが、蛇腹に金属の鎧(よろい)を組み合わせた同社従来のカバーに比べ、価格面でも優れる。初年度2億円の売り上げを目指す。
工作機械の動きと連動して伸縮し、加工時の切りくずや粉じん、切削油などの液体から機械を保護する。細長いステンレスの薄板を伸縮する特殊設計の樹脂部品で連結した鎧のような構造。テレスコカバーよりもコンパクトで取り付けスペースが小さくて済み、工作機械の小型化に貢献する。軽いため伸縮に必要な動力を抑えられ、モーターを小型化、省電力化できる。
技能重視し修理の質高める
スギヤマメカレトロ(岐阜県本巣市)は、1945年(昭20)に工作機械の修理業で創業し、今も祖業を主力とする。長年の知見から設計図なしであらゆるメーカーや機種に対応し、工場も同業で国内最大規模。機械修理のトップ企業だ。
修理は直って当たり前とされるため、不具合があれば2度と声がかからない。創業から現在まで技能重視の人材育成を続けている。例えば重要部品の表面を手作業で仕上げるキサゲを「原点」とし、工場配属の新人が最初に習い、生産部門の全員ができるという。伝統技能が生産現場から失われつつある昨今、大手工作機械メーカーからキサゲの依頼を受けている。また「信頼第一」を掲げ、用途に最適な新機構を提案し、修理前以上の性能となる提案もしている。