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化学産業(2024年4月)
環境省によると国内化学産業は、鉄鋼業界に次ぐ二酸化炭素(CO2)多排出産業と位置付けられており、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けて対応が急務となっている。現在、化学メーカーでは「燃料転換」や「CO2の貯留・回収・利用(CCUS)」「ケミカルリサイクル」「原料転換」などによってカーボンニュートラルの達成を目指している。
2024年04月26日 掲載
ライフサイエンス・農薬
化学各社は自社技術を生かしてライフサイエンス分野の開拓に力を注いでおり、中長期的な成長領域の一つに位置づける。医薬品、医療機器やバイオ素材など多様なソリューションを創出・展開することで、人びとの生活と健康を支えている。
ライフサイエンス/国内新工場―創薬研究向け
カネカは医療機器や医薬品の開発製造受託(CDMO)などライフサイエンス領域を中期的な成長のけん引役に位置づけ、関連事業への投資を強化している。さらに独自の生分解性バイオポリマー「グリーンプラネット」の供給を通じて、消費財メーカーなど幅広い企業と協業を推進。
足元では日揮ホールディングス(HD)、島津製作所、大学発ベンチャーと組み、二酸化炭素(CO2)を原料とし、自然分解するバイオポリマーの製造に取り組んでいる。国のグリーンイノベーション(GI)基金事業の採択を受け研究開発を進めており、2030年の実用化を目指す。
JSRは欧米でバイオ医薬品のCDMOを強化している。傘下のKBIは、二つの異なる抗原やエピトープを同時に結合する抗体分子二重特異性抗体など次世代バイオ医薬品の開発技術に強みを持つ。個別化医療など比較的小規模・高付加価値の領域に注力しており、独自の事業展開で中長期的な成長につなげる。
日油は医薬品を治療標的に届けるドラッグデリバリーシステム(DDS)向け材料事業を強化している。DDS用のポリエチレングリコール(PEG)誘導体などをグローバルに提供。国内にDDS素材の新工場を建設して供給体制の強化に取り組み、製薬会社からバイオベンチャーまで創薬研究に携わる幅広い企業のニーズに応えていく。
農薬・農業/化学の可能性で農業の課題解決
農業・農薬産業は食料の安定供給を支える役割を担う。化学メーカーは独自技術に基づくユニークな農薬製品を展開し、世界市場で存在感を高めている。一方、持続可能な食料生産に向けた農業の変革が求められており、農薬を取り巻く事業環境が変わりつつある。
日本は作付面積が減少傾向で農薬需要も減少が予想される。一方、人口増に伴う食料需要の高まりを背景に、世界市場は安定的な成長が見込まれる。英調査会社の予測によると年平均2%ペースで農薬市場は拡大し、27年には825億ドル(約12兆円)規模に達する見通し。各社は研究開発やグローバル展開に注力している。
住友化学はインドの農業資材企業を買収し、昆虫フェロモンを活用した害虫防除事業に参入。インド事業を拡充するほか、住友化学グループの技術を組み合わせてグローバルで環境負荷の低い持続可能な農業や住環境の実現に貢献する。
クミアイ化学工業は農薬・化学品分野の研究開発拠点「化学研究所ShIP」を新設した。三つの化学系研究センターを同社創業地の静岡市清水区に集約。研究員の交流活性化を狙うほか、最先端の実験機器や省エネルギー機材などを導入し、実験効率化と環境負荷低減などにつなげる
人手不足や高齢化など、農業を取り巻く環境は厳しい。世界的な環境意識の高まりを背景に、化学肥料や農薬による温室効果ガスや水質・土壌汚染も課題となっている。そういった課題を解決するため、三洋化成はペプチドを活用した持続可能な農業の実用化に向けて取り組んでいる。
ペプチドは植物の生育を促進し、健全な生育に貢献する。圃場(ほじょう)試験では、キュウリやトマトなどにペプチドを散布したところ、収穫量が増加する結果が得られた。また、根はりが改善などすることで、肥料使用量の低減も期待できるという。
21年、三洋化成はペプチド農業の実用化に向けて、宮崎県新富町と連携協定を締結した。同社がこれまで培った界面制御技術をはじめとする「化学のちから」によって、農業分野の課題を解決する。