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化学産業(2024年4月)
環境省によると国内化学産業は、鉄鋼業界に次ぐ二酸化炭素(CO2)多排出産業と位置付けられており、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けて対応が急務となっている。現在、化学メーカーでは「燃料転換」や「CO2の貯留・回収・利用(CCUS)」「ケミカルリサイクル」「原料転換」などによってカーボンニュートラルの達成を目指している。
2024年04月26日 掲載
化学品商社&物流企業
化学産業の発展に貢献
化学産業の発展・維持に、化学品商社および物流企業は重要な役割を担っている。多様な化学品の安全性を担保しながら、安定供給を図るためには不可欠な存在となる。それぞれの強みを生かし、先端技術分野やライフサイエンス分野に特化した取り組みの拡充などもみられる。
販研一体、処方化サポート
パーソナルケア・医薬品・化成品の3事業を展開する日光ケミカルズは、商社機能と研究開発を連携した販研一体による顧客へのサービス体制を強化する。製品の販売だけでなく、ユーザーが使用する際の処方化サポートや、有効性・安全性評価、製品の効果や現象の解析など、ソリューションサービスを拡充し、顧客が抱える問題の解決につなげていく。
日光ケミカルズはこれまでも顧客とともに共同で実験を行う「開放研究室」を運営するなど顧客視点での研究開発を重視してきた。2022年、商社として販売機能を担う日光ケミカルズがグループ会社で研究開発を行ってきたコスモテクニカルセンターと合併し、販研一体の体制を推進するため一層強化した。
現在、同社が化粧品原料などを提供する顧客企業の多くが製品開発に重点を置いた取り組みを活発化している。こうしたなか、「当社は物理化学的な解析技術も得意としており、製品の効果・機能に関する解釈やエビデンスとなるデータを提供することで個客の開発をサポートする」と、山口俊介中央研究所所長は解説する。
加えて、「研究体制の根幹をなす基礎研究の充実にも力を注いでいる」と述べる。今後同社は国内にとどまらず、各国の規制に合わせたソリューションの提供をはじめ、環境負荷の少ない安全性の高い代替原料の提供などを推進していく。
NRSはグループ全体でブランドの統一を推進し、成長市場に焦点を合わせた事業を拡大する。同社は各種温度管理倉庫、国内・国際輸送、タンクヤード、国際標準化機構(ISO)規格の容器のリース・販売・運用・管理・危険物実入り保管、フォワーディング事業を手がける化学品物流の総合企業。
石油化学から精密化学品、医薬品まで幅広い領域を扱う。特に半導体、ガス、電池を成長に向けた3事業と位置づけ、これらの事業に注力していく。
23年8月には九州地区における新たな総合物流拠点として熊本支店を開設。需要拡大が見込まれる半導体原材料に関わる温度管理化学品や高圧ガスを中心に、NRSが誇る総合物流サービスを提供することで、顧客のサプライチェーン(供給網)最適化に貢献する。
海外では11の国に拠点があり、24年冬季を目標として米アリゾナ州に総合物流拠点を開設する予定。一般品、危険品、高圧ガスの保管、ISOタンクコンテナのメンテナンスなど幅広く対応する。デジタル変革(DX)も推進し、内外顧客に一段と高品質な物流サービスを提供していく。
先端複合材料に照準 設立20周年
新ケミカル商事は先端材料分野での展開を活発化している。その取り組みの一つとして、24年9月18日―20日にかけて東京ビッグサイトで開催する「SAMPE Japan 先端材料技術展2024」に独自開発した熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)を出展する。
同樹脂は資本関係にある日鉄ケミカル&マテリアルが提供するフェノキシ樹脂をベースにポリマーアロイ化技術を施し開発したもので、ユーザーの要求に応じて多様な材料設計が可能。
新ケミカル商事は樹脂販売のみならず、さまざまなプロセスに対応するために協力会社と連携して提供するパウダー、フィルム、繊維といった一次加工品や、それらを用いた中間材(プリプレグ)、およびプレス成形品など、複合材料工程の川上から川下に至る製品群を対象とした事業を志向している。
すでにプリプレグメーカーなどを通じて、スポーツ用品、モバイル機器筐体(きょうたい)、自動車関連部材などでの評価が進んでおり、将来的には航空・宇宙分野への展開も視野に入れている。
同社は、今年設立20周年を迎えるに当たり策定した中長期計画「NCT/ムーンショット計画」の中でも、この取り組みを注目事業の一つに位置づけ、積極的に展開する方針を固めている。
【執筆者】
化学産業企画 代表取締役
高橋 英晴氏