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東北産業特集
新たな挑戦 次代をにらむ東北の企業群①
新たな成長に向けた東北企業の取り組みが各地で進む。次代を見据えた個々の動きを追った。
[馬渕工業所(仙台市)]
工場未利用熱で発電/廃熱エンジンの事業展開も検討
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廃熱エンジンとしてさらなる用途拡大を見込む発電システム
工場のボイラや炉などの未利用熱を活用した発電システムを開発中の馬渕工業所(仙台市太白区、小野寿光社長)。2025年はいよいよ商用化に乗り出す節目の年となる。産業廃棄物処理業のフロンティア・スピリット(長野県松本市)の焼却炉で実証を始めたのを皮切りに、バイオマス発電用ボイラや大型ディーゼルエンジンの廃熱など、25年度中に最大15台を設置する予定。7月頃には製品版の初納入を見込む。
また、発電システムの心臓部であるスクロール式膨張機の回転軸を駆動源に「廃熱エンジン」として事業化する検討も始めた。例えば「圧縮機と接続し、冷凍機に利用する話も進んでいる。コンプレッサーにも使える。農業との相性も良い」(小野社長)として、さらなる用途の拡大を模索している。
[工藤電機(仙台市)]
最先端の大型電源で存在感放つ/ノーベル賞受賞者の研究支える
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電源装置の各種試験や調整、データ取得などを行う研究開発センター
加速器や超電導コイル、半導体製造装置などに使われる特殊な大型電源で存在感を放つのが工藤電機(仙台市太白区、引地智恵社長)。納入先には大学や最先端の公的研究機関などが並び、中にはノーベル賞受賞者が活躍する施設も名を連ねる。最近では同じ仙台市内で稼働した大型放射光施設「ナノテラス」に100台超の電源設備を納入した。
その技術的な強みは電流を安定させる精度の高さ。電流安定度はppmレベル(1ppmは100万分の1)を誇る。背景には、機器の開発にあたり「常に日本の第一線の研究者と一緒に仕事をし、論文として学会発表されることもある」(引地社長)という環境が社員のモチベーションになっているよう。最近では核融合など新しい科学領域からの依頼も舞い込んでいる。
[梶原電気(仙台市)]
工場移転・集約 安定稼働/塗装工程全体の生産性2割向上
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総面積は旧工場よりやや狭くなったが、ワンフロアになり機能性も向上
本社工場の移転、集約で生産性を劇的に改善させた梶原電気(仙台市若林区、梶原功社長)。最後に残っていた塗装工場も昨年2月に移転を完了し、安定稼働に移行した。前処理を有機溶剤から無機溶剤に変更し、排水処理施設も「約7000万円を投資し、メッキメーカーと同じレベルにした」(梶原社長)と強調するように環境への配慮を徹底した。
また他工程と同様、フロアを見える化したことで、それまで隠れていた塗料などの材料が顕在化し「移転でドラム缶240本を処分した。今は3本しかない」(同)という効果を生んだ。塗料の総量も1割以上削減できたという。同じ扉を使っていた搬入・搬出口も別々になり、モノの流れも一気通貫でスムーズに。結果、塗装工程全体の生産性は約2割向上したと見ている。
[トラスト・メカ(宮城県加美町)]
自動袋詰め包装機「パケッチ」シリーズ/食品工場の省力化に貢献
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目下、問い合わせ急増中の自動袋詰め包装機「パケッチPro」
2024年1月に包装事業部を新設し、食品分野に参入したトラスト・メカ(宮城県加美町、越後浩社長)。自動袋詰め包装機「パケッチ」シリーズを展開し、特に人手不足に悩む食品工場の省力化・省人化に貢献したいと意気込んでいる。
まずは標準タイプの「パケッチ縦型」を投入。約1年で水産・食肉加工品や麺、菓子などの袋詰めに計14台を出荷した。中には特定の個人向けの介護食を袋詰めするという特異な用途もあったそう。今後も多様なニーズが顕在化しそうだ。
また目下、問い合わせが急増中なのが「パケッチPro」。1袋当たり12-13秒というスピードと、前後に自動搬送装置をつなぎ、一貫ラインにすることで省力化を一層推進できるのが強みだ。25年度には複数台の出荷を見込んでいる。
[アステム(宮城県蔵王町)]
排煙口の取り付け工事を大幅簡素化、作業時間を最大7割短縮
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ダクトに取付楽ちん枠をはめ込めば、後の作業は文字通り「楽ちん」に
空調・防災機器メーカーのアステム(宮城県蔵王町、野口敬志社長)が、排煙口の取り付け工事を大幅に簡素化できる「排煙口取付楽ちん枠」を発売した。作業時間を最大7割短縮でき、人手不足に悩む工事会社からの支持を集めそうだ。
この工事では排煙口とダクトの隙間から空気が漏れないよう、アルミニウムテープなどでシール加工を施す必要がある。しかし、上を向いての作業な上、開口部が狭く機構部品もあって手を入れにくく、作業負荷の重さが長年の課題だった。
取付楽ちん枠は、ダクトの形状に合わせた四角い枠を先にダクトへはめ込む方式。その隙間をシール加工すれば、あとは排煙口を取り付けるだけで作業が完了する。「熟練工でなくても施工できるよう開発した」(西山基広専務)としており、特許も出願中だ。
[白謙蒲鉾店(宮城県石巻市)]
健康経営優良法人「ブライト500」に認定/女性社員のサポートに注力
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工場見学通路にも認定証を掲示し来場者に訴求している…と白出副社長
コロナ禍を契機に「健康経営」への取り組みを強化してきた白謙蒲鉾店(宮城県石巻市、白出哲弥社長)。2021年に日本政策投資銀行の「DBJ健康経営格付」を取得し、24年には健康経営優良法人「ブライト500」に認定された。白出雄太副社長を責任者に20代の若手も加わった事務局が社内の健康経営を推進。社員の働きやすい環境づくりにも努める。
特に社員の6割以上を占める女性のサポートに注力。座談会やセミナー、個別の悩み相談などで細かく要望を吸い上げ、商品の箱詰め作業をロボット化したり、支給するマスクをより良いモノに何度も変えたり、きめ細かく対応。2年前には女性の産業医を招請し、女性特有の疾病も気軽に相談できる体制を整え、早期の治療につなげている。