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静岡県産業界(2024年1月)
コロナ禍を乗り越え平時を取り戻したものの、世界経済や国際政治の不透明感は収まらない。そうした中、2023年から静岡県内の各企業は新製品開発や海外展開、設備投資といった戦略に取り組む。24年もそれぞれの経営判断や戦略が静岡県産業界を、そして日本の産業界を前に進めている。
設備投資で事業拡大目指す
新工場稼働で生産能力15%増
成長に欠かせない事業拠点の拡張や整備、効率化に向けた投資も絶えず行われている。
コプレック(掛川市)は新工場棟「西6工場」を稼働した。加工機を既存棟から移設したほか、プレスブレーキを2台増設した。これにより、生産能力は従来比15%程度増える見通し。精密板金加工による産業機械向け大型フレームの受注増加に対応する。
建屋は平屋建てで、床面積は約1380平方メートル。建屋内の設備はタレットパンチプレス1台と、プレスブレーキが14台となる。
新棟と既存棟で余裕のできたスペースを活用し、受注量の変化に柔軟に対応する。
また新棟には現在同社が取り組んでいる「ブランディングプロジェクト」の考えを盛り込み、働きやすさや美観を重視した。同プロジェクトでは従業員が誇りを持てる会社や工場のあり方を検討し、掛川から製造業界全体の地位を上げていくことを目指す。外部からの工場見学も積極的に受け入れていく。
生産性向上に向け効率化
協立電機はグループ一体での効率化投資を拡大する。営業業務を管理する基幹システム(ERP)の刷新や、子会社の工場建て替えなどを実施。効率化、合理化に向けた投資として24年6月期は18億円を投じる。工場自動化(FA)・ロボットシステムや検査装置の好調な需要が続く基調をとらえ、グループの経営資源を活用し顧客ニーズの高まりと競争激化に対応する。ERPの刷新は1億8000万円を投じて6月末ごろに完了予定。営業業務の標準化、効率化を進める。営業手法の可視化による業務改善にも役立てる。
効率化投資には生産性向上の取り組みを含む。FA関連の搬送装置などを手がける子会社のアニシス(静岡市駿河区)では、約2億円を投資して工場を建て替える。夏ごろの完成予定で、生産性の向上と拡張を図る。
展示場併設の新営業所
フジ産業(静岡市駿河区)は、京都府長岡京市に京都営業所を移転した。これに伴って規模も拡張し、同社で初めて営業拠点に展示場を併設、開所した。自社の加工機の実演などを通じて提案力を強化し、西日本地区での受注拡大を図る。投資額は約1億円。
展示場は床面積約280平方メートルで、3階建ての事務棟の1階部分に設けた。数値制御(NC)長尺加工機とプラスマイナス180度のノコヘッド付長尺加工機の2台を設置。加工試作の受託も担う。ユーザーの声を製品開発に反映するほか、社員教育にも力を入れる。
同社はオーダーメードの長尺加工機が主力で累計約3000台の納入実績を持つ。
技術光る若手技能者たち 競技会の経験、現場で生かす
次代の静岡県産業界を担う若者たちがモノづくり技能を競う大会で活躍した。浜松職業能力開発短期大学校(浜松市中央区)電子情報技術科2年の小杉咲矢さんは、23年8月に静岡県で開催された「第18回若年者ものづくり競技大会」の「電子回路組立て」職種で敢闘賞を受賞した。同校として同職種で7年ぶりの受賞。小杉さんは地方大会にあたる「第11回静岡県ものづくり競技大会」の同職種総合の部で優勝した。自身の競技活動について小杉さんは「実践を通して、はんだ付けとプログラムのスキルアップにつながった」と振り返った。4月からは現場での技能活用を見据える。
同大会には同校の学生がそのほかの職種に出場し、機械製図CADとITネットワークシステム管理で上位成績を収めた。古内忍同校校長は学生の取り組みについて、「技能技術だけでなく、緊張感の中、判断力や平常心を保つ心の成長を感じられた」と話した
ホンダのトランスミッション製造部(浜松市中央区)は技能五輪全国大会の「旋盤」職種と「メカトロニクス」職種に選手を派遣している。23年に愛知県で開催された第61回大会では、大塚歩夢さんが旋盤職種で敢闘賞を受賞した。大塚さんは3回目の出場だった同大会を振り返り「過去出場時と比べ、競技課題に取り組んでいる間の視野が広がった」と自身の成長を語る。訓練と先輩からの教えを生かし、初めて入賞した。
大塚さんの技能五輪参加は社内規定の関係で一区切りとなる。今後は自身の学びを社内に広げるという大きな使命が待つ。3年間の技能競技との関わりでは「仕事の突き詰め方を学んだ」(大塚さん)。後輩たちに自身の経験を全て伝え、挑戦を見守っていく。