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静岡県産業界(2024年1月)
コロナ禍を乗り越え平時を取り戻したものの、世界経済や国際政治の不透明感は収まらない。そうした中、2023年から静岡県内の各企業は新製品開発や海外展開、設備投資といった戦略に取り組む。24年もそれぞれの経営判断や戦略が静岡県産業界を、そして日本の産業界を前に進めている。
技術生かした新製品を投入(2)
フォークリフトの簡易走行向け電池
ティーアールシィー高田(TRC高田、浜松市中央区)は、電動フォークリフトを簡易的に動かすためのバッテリーを開発し、発売した。電池の不具合や充電切れで動かないフォークリフトにつなげて一時的な走行を可能にする。
発売した「TRC―SB」は重さ11キログラムで、電圧52・8ボルト、容量17アンペア時。コネクターケーブルの取り換えにより、48ボルトバッテリーを搭載する各メーカーのフォークリフトに対応する。
電池セルを含めて部材は長期的に調達できる国内メーカーなどの製品を採用し、修理が可能な仕様にした。一時的な走行のみに使う目的のため、通常の作業で使おうとしてバッテリーに負荷がかかると制御が働く仕組み。
中古機の一時走行や、動作不良機の試験運転などでの使用を想定。動作不良のフォークリフトにつなげて動かなかった場合はバッテリー以外に問題があると現場で判断できる。
21年に発売したリチウム鉄リン系複合化合物バッテリーに対する顧客の反応や市場調査結果を踏まえて開発した。
自動車部品技術活用し、テント型サウナ販売
エイケン工業(御前崎市)が得意とする自動車用フィルターのモノづくり技術を生かし、県内企業との連携で商品化したテント型サウナ「ガレージサウナ」の販売実績が徐々に増えている。キャンプ場への納品事例も出ている。
23年12月3日には浜松市内で開かれた「第8回全国軽トラ市inはままつ」にも参加し、遠州鉄道高架下の都市型公園「新川モール」でガレージサウナを展示。多くの来場者の関心を呼んだ。継続的なキャンプイベントなどへの参加を通じて認知度も上がっているため、今後は卸売りも行っていく方針だ。
エイケン工業は変化する自動車業界への対応として新規事業を担う開発部を19年に設け、掛川市内に拠点を置いて活動している。
中子搬送用の高耐熱ハンド開発
松下工業(磐田市)は、鋳造品の中空部を作る鋳型「中子」の製造とロボットの活用による自動化支援の2事業を展開している。同社は30年ほど前から中子のバリ取りをロボットで行っている。
ロボット事業部は、このバリ取りロボットシステムの同業他社への外販から始まった。22年には同事業部の自社商品である、エアで膨らませたゴム部品で中子をつかむロボットハンド「MKグリップ」を開発、発売した。
熱を持つ中子の形状を壊さずに搬送するためには、特殊なハンドを使用する必要がある。自社ラインでの実証を経て、200度Cの耐熱性能と高い耐摩耗性を持つハンドが完成した。ユーザーからは200度C以上の耐熱性を希望する声もあり、既に開発に着手している。MKグリップは中子製造時の搬送用だが、鋳造の作業時でも使用する可能性を模索する。中子以外のワークへの適用を希望するユーザーにも販売していく。ハンドを突破口にさらにロボットシステムの受注を重ねる方針だ。
企業がスポーツ支援
静岡県産業界はスポーツ活動を積極的に支援している。
キャタラー(掛川市)が所属アスリート契約を結んでいるウインドサーフィンフリースタイルの守屋拓海選手は、「JWAフリースタイル PROクラス」の2023シーズンをランキング1位で終えた。今シーズンは国内プロクラス4戦全てに優勝。また15歳から3年連続で日本ランキング1位という快挙も達成。この記録は史上最年少となる。
ブレス浜松(浜松市浜名区)は24年に新たに設立されるトップリーグ「SVリーグ」への参入を目指す。参入に必要なライセンス交付の条件を一部満たしているが、市民や行政、産業界と連携し機運を高める。新たな取り組みとしてバレーボールで浜松市を活性化していく「バレーボールシティ構想」を推進する。