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さいたま市 東日本の中枢へ
活発な再開発・沿線価値向上 立地・鉄道網に優れる政令市
さいたま市は「住みたい街」の調査で常に上位に位置し、新幹線を含む鉄道網の充実によりビジネス面でも優位性を誇る。駅を起点としたにぎわい創出や沿線価値の向上が、持続可能な都市形成を実現する上で鍵を握っている。さいたま市を含め埼玉県を地盤とする大栄不動産の小林義信社長と、埼玉県内などの路線や駅を管轄するJR東日本の石井剛史執行役員大宮支社長に、さいたま市の街づくりや鉄道を中心とした地域活性化などについて聞いた。
大栄不動産 社長 小林 義信 氏/潜在ニーズ見極めた開発計画が重要
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大栄不動産 社長 小林 義信 氏 -
22年に開業した「大宮門街」
―さいたま市内では大宮駅や浦和駅周辺で再開発事業が活発に進められています。
「大宮駅西口では2023年に二つの大きなオフィスビルがオープンした。『大宮ソラミチKOZ』は13階建ての中規模テナントオフィスビル。また『アドグレイス大宮』は22階建てでオフィスやホテル、店舗などの複合施設。いずれも満室稼働の状況と聞いている。東京都内のオフィスの空室率は『低位安定』の状況が続いており、埼玉県内も連動してオフィス需要は好調だ。他にも駅西口では、さいたま市の桜木駐車場用地活用事業で、商業棟やオフィス棟など5棟で構成する複合施設が2027年春に完成する予定という」
―一方で大宮駅東口の状況は。
「当社と三井不動産が参加組合員として参画し、22年に開業した複合施設『大宮門街(かどまち)』は、一部の店舗をリニューアルした。スープ春雨の『七宝麻辣湯(チーパオマーラータン)』、コメダ珈琲店の和の喫茶店『おかげ庵』、新業態のおむすび専門店『米屋の太郎』はいずれも埼玉初出店だ。メディアにも多く取り上げられて人気で、他テナントの来客数も伸びている」
―浦和駅周辺でも開発が進んでいます。
「『浦和ガーデンビル』が24年に完成して現在は満室稼働の状況と聞いている。同じ駅西口の高砂地区では27階建てで525戸のタワーマンションと商業施設、市民会館などで構成する『浦和カルエ』が27年に稼働予定という」
―今後の再開発や不動産事業の課題や将来像をどう捉えていますか。
「一番の懸念は建築費。統計では4割増から5割増と言われているが、感覚的には2倍近くになっているのではと感じる。都内などでは再開発事業の見直しや中断も起きている。建設資材は価格が落ち着く傾向も見られるものの、人手不足が深刻化する中で人件費はこれ以上下がらないのではないか。建設会社が受注できる工事のキャパシティーは限られてくる」
―そうなると民間だけでなく公共分野も含めたプロジェクトにも大きな影響が出てくるのでは。
「事業化のハードルが高くなる状況は続くだろう。一方でオフィスや住宅だけでなく、工場や物流施設などの潜在的な進出ニーズはあるので、どう調整して優先順位を付けていくかが重要になってくる。既存の建物や設備をリニューアルして長く使っていくという取り組みも進んでいくのではないか」
JR東日本大宮支社執行役員大宮支社長 石井 剛史 氏/中核拠点・大宮のプレゼンス向上
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JR東日本大宮支社執行役員大宮支社長 石井 剛史 氏 -
5方面の新幹線が結節する大宮駅は、東日本全体を支える交通の要衝だ
―JR東日本の中で、大宮エリアはどのような位置付けですか。
「5方面の新幹線が結節する大宮駅は、東日本全体を支える交通の要衝だ。広域アクセスの起点であると同時に、沿線人口が増加しており高いポテンシャルを持つ。この強みを生かし、単なる移動の通過点ではなくビジネスや商業が循環する中核拠点としての機能を最大化させたい。鉄道と街が共に発展してきた歴史を糧に、大宮のプレゼンスをさらに高めていく」
―訪日外国人(インバウンド)戦略は。
「大宮を『点』ではなく、東日本各地を線で結ぶ起点の『面』で提案する。台湾をはじめ海外に向けて、鉄道のまちとしての魅力を発信し、鉄道博物館や盆栽村など多くの地域資源への回遊を促す。大宮にステイし、ここをベースに新幹線で東北、上越、北陸方面へ足を延ばす。こうした大宮を起点とした旅行スタイルを確立することで、自治体や地域と共に新たな流動と滞在価値を創出したい」
―JR東の経営ビジョンや方針を、現場でどう実現しますか。
「組織のスローガンとして『移動を安全快適に、生活を豊かに、地域を元気に』を掲げ、全社員への浸透を図っている。重要なのは駅を単なる乗り降りの場ではなく、暮らしのプラットフォームと再定義すること。現場を第一線職場と位置づけ、そこから生まれる自発的な発意を最大限に尊重し、バックアップする体制を整えている。社員一人ひとりが地域経済への貢献を自律的に考え具体的なサービスへと昇華できる組織へと変革させたい」
―地域に根差した店舗との連携施策を積極化しています。駅を起点とした地域経済の循環をどう描きますか。
「駅は単なる通過点ではなく、地域の魅力を凝縮して発信する情報発信拠点だ。例えば駅から距離のある地元名店に駅構内へ出店していただくことで、利用者には利便性を、店舗には新たな認知を提供できる。重要なのは駅で買って終わりではなく、そこから実店舗や周辺の街へ足を運んでもらう回遊の流れを作ること。駅を起点ににぎわいを作り地域を元気にしていきたい」
―大宮支社でのデジタル変革(DX)の取り組みは。
「アバター(分身)による駅案内システムの一部導入など定型業務の自動化により、社員が創造的な企画業務に注力できる環境を作る。また設備の形状を点群データとして取得し、デジタルツイン上で再現することで設備設計に活用している。最新技術を積極的に現場へ展開し、鉄道の生産性向上とサービス向上を両立させたい」
