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埼玉県西部地区 ビジネス交流セミナー
埼玉産業人クラブ西部支部は川越商工会議所、日刊工業新聞社と「埼玉県西部地区ビジネス交流セミナー」を7月16日に川越市内で開いた。テーマは「経営環境の変化に対応する事業承継のポイント」。埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター統括責任者の石川峰生氏が基調講演したほか、県内企業3社の社長が企業プレゼンテーションを実施した。会場には企業経営者や支援機関の担当者ら約90人が参加。企業の事業承継について熱心に耳を傾けていた。
県内企業3社の事業承継への取り組み
二ノ宮製作所/「多文化多言語共生」 ベクトル合わせ成長
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二ノ宮製作所 代表取締役社長 二ノ宮 紀子 氏
二ノ宮製作所は板金加工業を主体とした金属筐体(きょうたい)の製造を担っている。1947年設立で、精密板金加工技術と周辺技術との複合スキルを得意とする。半導体製造装置向けでは、3メートルを超える筐体を納めている。父が2代目、2011年に私が3代目社長に就任した。当時は4期連続で赤字を計上していた。
就任後は、当社が大切にする価値観「NINOMIYA Basics」を周知。「しなやかさ」「行動継続力」「情熱・チャレンジ」「チームワーク」「品格」の五つの意味を社員たちに繰り返し説明した。進むべき方向を示し、道に迷ったとき見上げるポーラスターとして機能している。
一方この頃、赤字の原因を分析した。すると低い利益率のほか、納期などで顧客にイニシアチブをもたれており、当社で管理できていないことが明らかになった。当社が顧客を選ぶことが必要と痛感。そのために、まずは自らを変えることから始めた。社内の技術力を高めると、顧客への交渉方法も変化。その結果、10社中9社が入れ替わった。現在の顧客は信頼できるパートナー。高付加価値の仕事を受注し、業績も向上した。
新たな取り組みも相次ぎ開始。一つが14年から始めた2カ国6大学との国際インターンシップ(就業体験)提携。累計40人超の国際インターン生を迎えた。17年には念願の半導体製造装置の大型主筐体を受注。さらに22年に塗装工場を設立し、新分野に打って出た。
今後の成長戦略として策定したのが「NINOMIYA VISION2030」。まずは「多文化多言語共生」。外国籍社員たちの持つ多様な文化や背景を尊重し、彼らとベクトルを合わせてともに成長していく。次に「人材開発室の創設」。人材難の時代だからこそ、今いる社員の強みを見つけ、どのような計画で育てるかに力を注ぐ。最後が「事業承継」。血筋の繋(つな)がりがなくても魂の繋がりがつむぐ事業承継があっても良いのではないかと感じる。それが会社にとっても後継者にとっても成長の機会になり得るだろう。
サンテックス/製造業の求人・転職マッチング事業に参入
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サンテックス 代表取締役社長 齊藤 英一郎 氏
サンテックスは、製造業の自動化設備に関する製品を中心に販売する工場自動化(FA)機器の商社だ。1967年に設立し、埼玉県川越市に本社を置く。2024年3月期の売上高は38億8900万円。本社のほか、熊谷市と川口市に営業所を持つ。
オムロンやSMC、THKをはじめ、国内の大手メーカーなどの多様な商材を取り扱っており、自動車や半導体、食品などさまざまな業界に提供している。日本を支える製造業のお客さまの生産を合理化・最適化する、最新の自動化機器やメカトロ機器、制御機器、制御システムなどを提案できるのが強みだ。
近年はデジタルを活用した営業活動に力を入れている。これまでは担当営業が訪問営業をして、顧客企業から課題やニーズを確認した上で業者を選定、打ち合わせして見積もりをするのが一連の流れだった。これをデジタル活用により効率化するため、装置メーカーと顧客をつなぐマッチングサービス「装置ネット」を自社ホームページ上に立ち上げた。装置メーカーやエンジニアは、装置ネット上に新商品や技術力などをPRする。
一方、利用者は要望や条件を登録すると、それに適したパートナー企業と無料でマッチングできる仕組みだ。時間短縮による業務効率化を図ることができるため、お客さまから好評を集めている。また、装置ネットでは自動化の事例を複数紹介している。生産性向上するためのサーボモーター交換工事のほか、化学業界向けではモーターと接着剤温度の状態管理などを紹介しており、多様な業界で参考にできるだろう。
新たな取り組みとしては、人材紹介業を開始した。製造業の求人・転職マッチングサイト「emulsion(エマルジョン)」を立ち上げた。モノづくりに関わる企業や求職者に寄り添うことで、製造業を盛り上げることが目的だ。
事業承継する際にも、新規事業に継続的に取り組む姿勢を次世代に示していくことが、会社の持続成長のためにも必要と感じる。
野火止製作所/下請け依存脱却へ「水」関連の新規事業 創出
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野火止製作所 代表取締役社長 川上 広晃 氏
野火止製作所は1960年創業で、埼玉県南部の新座市に位置する。精密板金加工と、看板・サインの製作、施工を手がける。小惑星探査機「はやぶさ」カプセルにおける回収ボックスの製造で協力したほか、足踏み式アルコール消毒液の噴射機を埼玉県新座市に寄贈した実績を持つ。
この10年間の主要実施事項としては、サブコンなど有力顧客とのパイプを太くしたほか、大型物件を受注、さらには第二工場を増設するなど既存事業の強化を図った。また、女子社員の役職への登用やベトナム技能実習生の受け入れ、さらに社員1人当たりの年間給与を10年間で34・2%増加させるなど、人事の刷新と処遇の改善を行った。
私が社長を引き継いだのは、コロナ融資の返済などの課題が浮き彫りになった時期だ。事業承継後、経営トップとして力を入れて取り組んでいることは全部で6項目ある。まずは最重点取引先との関係強化。二つ目が有力見込み客の新規開拓。三つ目が従来の営業部長としての職務を引き継ぐこと。四つ目は、1on1(ワンオンワン)ミーティングを実施し、オープンな職場環境作りに努めることで、五つ目が目標管理システムの運用により目標達成などを実現すること。そして最後が、下請け依存体質からの脱却に向けた新規事業開発だ。
新規事業開発に向けて、本年から銀イオン水製造装置などの製造・販売に向けて取り組んでいる。同事業を手がける子会社も設立した。井戸水を急速に殺菌し、安心・安全な生活用水を提供できる。小型で災害時にも手軽に持ち運べるのも特徴だ。
配管向けの超磁場活水器「コスモス」は現在展開中で、多くの商業施設や鉄道駅などで利用されている。ビルの老朽化に伴い配管メンテナンスの需要が増加することに着目し開発した。配管につなげるだけで赤さびや水あかが通常よりも発生しにくくなり、配管を延命できる。
このように「水」に特化した新規事業を創出し今後も成長を遂げていきたい。