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不動産
価値を未来へつなぐ 不動産
100年に一度と言われる再開発ラッシュが続く首都・東京。2025年以降もその流れが止まることはない。街の新たなシンボルとなる建物やオフィス、住宅、商業施設などの整備が相次ぎ、これらの施設を活用したサービスの提供などソフト面の充実も進んでいる。新規事業の創出やオープンイノベーションといったビジネスの好循環創出に向けた動きも加速しており、各エリアの活性化や魅力度向上への期待が一段と高まっている。
三井不動産/「食」開発―ワンストップ支援
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「&mog Food Lab」のフードラボ(三井不動産)
三井不動産は、食の事業開発の一連のプロセスをワンストップで支援し、イノベーション創出を推進するプラットフォーム「&mog by Mitsui Fudosan(&mog)」を東京・日本橋で構築している。キーワードは「街で育む、未来の食」。日本の食産業や食文化の維持・発展に貢献するのが狙い。担い手不足やフードロスなど食産業が抱える多くの社会課題の解決への貢献も目指している。
&mogは同社が運営する街の「ハード」と、地元飲食店や商社など20以上のパートナーと連携した「ソフト」を活用。事業コンセプトの設計から都市実装まで五つの事業開発フェーズに応じたソリューションを提供するのが特徴だ。
事業開発の支援では、日本橋・八重洲エリアにある同社の施設を活用。マルシェへの出店など生活者との直接的な接点をつくれるマーケティング機会を提供する。また展示会の開催などを通じた商談機会を創出することで、事業開発や規模拡大を後押しする。
情報発信や事業者同士の交流機会の創出を目的とするイベント開催にも力を注ぐ。フードテックに関わる国内外のキープレーヤーの招聘(しょうへい)によって最先端の取り組みの共有や参加・体験型のプログラムを実施する国際カンファレンス、食品メーカーや流通、飲食店といった幅広い食関係者が交流する小規模なミートアップまで、さまざまな機会を設定。食産業の活性化に貢献していく考えだ。
さらに2月には、食の研究開発拠点「&mog Food Lab」を開業した。「自前の研究開発施設を整備する投資余力がない」「新規事業開発用の活動拠点がない」といった関連企業の課題に対応。スタートアップや大手食品メーカーの新規事業部門などに厨房(ちゅうぼう)設備を備えた活動場所を提供し、「食の事業開発」をワンストップで支援する。
その一つが「キッチン・フードラボ」。スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、製氷機など飲食店で使用するレベルの厨房設備を完備しており、入居してすぐに研究開発に取りかかれる。施設内には試食会のスペースや商品の撮影スタジオも完備している。
入居企業に対しては、場の提供以外のサポートも行う。同社運営の商業施設などを活用したマーケティング支援や、日本橋の飲食店との連携、&mogのパートナー30社以上とのマッチング機会の提供など、ハードとソフトの両面から食の事業開発を総合的に後押ししている。
三菱地所/企業集積・交流―新たな「価値」
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VR技術の観光への影響を探る実証実験など共創プロジェクトでも実績がある(三菱地所)
三菱地所は「新たな価値の創造と循環」の実現に向け、大企業の新規事業創出支援や産学官・スタートアップとのオープンイノベーションを促進するプラットフォーム「Tokyo Marunouchi Innovation Platform(TMIP)」を運営している。2019年の発足から5年余り。300超の団体が参画する国内最大級のオープンイノベーションプラットフォームへと成長している。
すでに業界の枠を超えた共創プロジェクトで、数々の実績がある。その一つが、空間型仮想現実(VR)技術の観光への影響を探る実証実験だ。フォレストデジタル(北海道浦幌町)、JTB、北海道浦幌町と連携。24年には同町の魅力を知ってもらおうと、大型マルチスクリーンの映像で同町の自然空間に没入体験できるイベントを東京・丸の内で開催した。
こうした取り組みは、三菱地所が100年以上にわたって取り組んできた丸の内の街づくりのDNAと言える。時代や社会の変化に対応しながら、今もなお街の姿や形、機能の進化を後押ししている。00年頃からは、他社・他分野との交流を促す仕組みづくりとして、海外成長企業や国内先端スタートアップ企業の誘致を目的としたインキュベーション施設の拡充、交流活性化に取り組んできた。
20年代以降の丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)の街づくりでは、「丸の内NEXTステージ」と位置づけ、“企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台づくり”を推進。国内外の成長企業を主な対象としたビジネス開発支援付きサービスオフィス「EGG」「Global Business Hub Tokyo」などのイノベーション拠点を運営している。
アカデミアとの連携にも積極的だ。東京大学の起業家支援プログラム「FoundX」の施設のほか、東京科学大学と医療イノベーションハブ「tip」、一橋大学とソーシャル・データサイエンス領域のインキュベーション・交流拠点なども手がけている。
さらに、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の「BRICKS FUND TOKYO」による投資を通じて、国内外のスタートアップをサポート。エリアの付加価値向上や、新たな価値の創出を後押ししている。業種や企業の規模を問わずオープンイノベーションの重要性が一段と高まる中、これらの施設が担う役割は今後さらに大きくなりそうだ。